定本 酒呑童子の誕生――もうひとつの日本文化 (岩波現代文庫)

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  • 岩波書店
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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006004248

作品紹介・あらすじ

絵巻や御伽草子で名高い酒呑童子とはいったい何者なのか——緻密な考証に裏付けられた大胆な推論によって、童子の原像は都に疫病をはやらすケガレた疫鬼だったことを鮮やかに解き明かすとともに、日本人に内在する、天皇や国家などが形成する秩序を攪乱する存在への脅威や排除の心理に鋭く迫る。解説=永井路子。

感想・レビュー・書評

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  • 鬼全般ではなく、酒呑童子の伝承について掘り下げた内容。ベースになっているのは最も古い稿本とされる逸翁美術館所蔵『大江山絵詞』と、サントリー美術館蔵『酒伝童子絵巻』の二種。一般的な、日本むかし話的子供むけ童話では、源頼光とその四天王が活躍する印象だけれど、もともとの形では源頼光と藤原保昌という二人に鬼退治の命令が下っており、こういった二人の将、四天王などの人数にも意味があったことが本書を読むとわかる。

    第一章では、疫病神・疱瘡神としての鬼について。これは京都の四角四堺祭についてなど勉強になる反面、難しい専門用語も多く、ちょっと強引な論説がめだった気がする。平たく言うと、大江山(二カ所説がある)の方角に京都に疫病を運んでくる主要路があり、鬼=疫病を、境界でを阻む=退治する、みたいなことらしい。

    第二章では中国の「白猿伝説」との類似からルーツを辿る内容で、これはとても興味深かったし、説得力があった。白猿伝説=魔力を持つ猿が人間の女性をさらってきて山奥にハーレムを作り、娘をさらわれた身内が退治にいくパターンの説話。

    第三章では、大江山=竜宮説。つまり鬼の住処は一種の異界、異境であり、冥界あるいは仙境である。洞窟をくぐっていくというのもその典型。奪衣婆ぽい老婆の登場なども象徴的。さらに鬼=雷神=水神への繋がりなど。

    第四章、第五章は、ローカル伝説との結びつきやその変遷、時代によって微妙に変化していく設定の理由など。仏教とも切り離せない。

    第六章は、登場人物からみたアプローチ。頼光四天王(渡辺綱、坂田公時、碓井貞光、卜部季武)でもっとも有名な、渡辺綱の渡辺党について詳しい。

    付録の「鬼と天狗」が本文よりわかりやすくて良かった。

    余談ながら、鬼の所業が結構残忍で、原文で読むとなかなか怖そうだった。部分的にしか触れられてないけど、鬼なので当然さらってきた女性たちの、血を絞って飲み、殺して肉を食べる。鬼退治に来た一行は、最初は目的を隠しているので鬼たちにもてなされ、人肉を饗されるが、怪しまれないためにあえてそれを食べる。うえー。

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC02544802

  • 大江山こえていく野の末遠み道ある世にもあひにけるかな
     刑部卿範兼

     絵巻などに描かれた酒呑童子【しゅてんどうじ】の正体は、丹後に漂着したシュタイン・ドッチというドイツ人。そして、彼が飲んだ生き血とは、赤ワインだった―。

     一読、説得力のありそうなこの「紅毛人」説を、「定本 酒呑童子の誕生」は否定し、鮮やかに論破する。酒呑童子の原像は、都に疫病をはやらせる疫鬼であるとし、名探偵のように証拠を挙げて解き明かしていくのだ。

     人々から恐れられた酒呑童子の原像は、疫鬼、なるほど。コロナ禍の2020年、漫画「鬼滅の刃」が大流行している現象にも合致しているようで興味深い。

     鬼という漢字は、「万葉集」では「モノ」と読まれており、平安時代に入ってから「オニ」という和名が現れたという。劣位の超自然的存在を総称するモノ・オニは、都市化とともに疫病とセットになっていったのだろう。

     人の接触が多い都市では、疫病が定期的に猛威を振るう。疫病から王権と都を守るために祭祀が行われ、見えない存在のモノノケ(鬼気)が形象化された。それが「鬼」として人々の記憶に定着したことがうかがえる。

     鬼は境界に姿を現すとされ、敬出歌の、山城と丹波の国境「大江山(老ノ坂)」は特に有名な地だ。その大江山で酒呑童子を退治した人物として知られるのが、渡辺綱。実は架空の人物らしく、本書後半ではその経緯が明かされ、スリリングな筆致を味わえる。
    (2020年12月13日掲載)

  • 東2法経図・6F開架:B1/8-1/424/K

  • 源頼光と四天王が退治した大江山の酒呑童子とは何者か | WEB歴史街道
    https://shuchi.php.co.jp/rekishikaido/detail/4115

    酒呑童子の誕生 / 高橋 昌明【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア
    https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784122046313

    定本 酒呑童子の誕生 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b527910.html

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