増補 軍隊と地域 郷土部隊と民衆意識のゆくえ (岩波現代文庫 学術436)
- 岩波書店 (2021年4月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (446ページ) / ISBN・EAN: 9784006004361
作品紹介・あらすじ
師団誘致、軍事演習、用地の強制接収、そして動員……近代日本の地域社会は軍隊・戦争をいかに受容したのか。一八八〇年代から敗戦までの静岡を舞台に、矛盾を孕みながらも地域に根づいていった軍が、やがては民衆生活を寸断・破壊していく過程を克明に描き出す。戦争研究・軍事研究に画期をなした名著、待望の文庫化。
みんなの感想まとめ
地域社会と軍隊の関係を深く掘り下げた本書は、1880年代から敗戦までの静岡を舞台に、軍隊がどのように地域に根付いていったのかを描き出します。著者は、静岡県の具体的な事例を通じて、郷土部隊の活動や民衆の...
感想・レビュー・書評
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戦前日本の軍隊をその所在した地域社会との関係という観点から論じた本。静岡県という一地域に注目したものだが、郷土部隊(地元出身兵で構成された部隊)の活動が新聞を通じて報じられる中で、人びとの対外感情が作られていったこと、軍隊の進出が経済効果につながることへの期待、一方で軍隊の用地買収に対する反対運動など、幅広い話題が史料に基づいて検証されている。
著者によると、「軍隊と地域」という視点は、沖縄に長期滞在した際に、育まれたようだ。歴史研究も、現実への関心と深く結びついていることが、窺える。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本書は「はじめに」にあるとおり、近代日本の地域社会と軍隊が、どのような関係を結んできたのか、1880年代から敗戦まで約60年間を対象に跡づけることを課題とする。
具体的には、兵事行政、在郷軍人会など軍関係団体の育成、軍施設の誘致活動や民衆の対軍感情、戦争協力態勢、軍隊がある地域に新設されることの意味、演習場設置とその後の演習場運営を含む軍と地域民衆の関係など、軍隊と社会の接点が、時間軸に沿って、広く探られる。そしてこれらを実証的に分析するために、定点観測的な対象地域として、静岡県が主たるフィールドとして取り上げられる。
著者が静岡県で自治体史編纂に携わったという機縁もあるが、静岡県という地域は、明治期に静岡市及び浜松町に2つの連隊が設置され、大正末に宇垣軍縮で浜松の歩兵連隊は廃止される、代わって浜松には陸軍爆撃専門部隊である飛行第七連隊が設置、また高射砲第一連隊も置かれる、さらに県東部では、日露戦争後に富士裾野演習場が設置され、それが重歩兵旅団(三島)の設置につながるといったように、軍の新しい部隊と地域、地域民衆との関わりを多角的に比較できる現場であった。こうしたフィールドに焦点を当てることで、本書の分析は具体的かつ非常に厚みのあるものになっていると思われる。
・1889年の徴兵令改正による本籍地徴集原則の確立、日清戦争以後の度重なる出征、凱旋等の歓送迎や公葬、出征者家族の生活支援等を通して、兵士と地域住民とのつながりによる「郷土部隊」意識が形成されたが、日中全面戦争以降、その関係が弱体化していく。
・宇垣軍縮が、軍縮世論が盛り上がる中、旧来の軍備の縮小と新鋭部隊の設置を実現し、軍事技術革新に対応しつつ、軍部への国民的支持を図ろうとした、野心的な試みであったと考えられること。
・演習場利用に関して、例えば富士裾野の演習場に関して、地元の陸軍に対する粘り強い交渉により使用協定が締結され、軍の使用地に関する所有権確認・使用料の支払い確認がなされるなど、相当のプロセスを経て一定の妥協点に達していたこと。
といったこと等については、まとまった形としては初めて知ったことが多く、とても得るものがあった。 -
軍隊という社会を構成する機構が日常生活とどのように関わっていたか、静岡の一地域を定点観測する形で、明治の建軍から敗戦までを俯瞰する。建軍から初期の頃は、経済効果を見込んだ連隊誘致や、地元の兵士(部隊)へのシンパシーなどの特徴が見受けられ、どこかスポーツに似た雰囲気を感じた。やがて世代が進み、度々の対外戦争を経ると、軍隊経験のある在郷軍人が社会に根付き、メディアと教育を巻き込んだ軍国調が幅を利かせ、暮らしもものの考え方も圧迫されていく。それに従い、地域と軍隊との関わりも希薄になったという変遷は、地域生活が非支配者の立場に組敷かれたことの証左だろう。敵国への蔑視(自国の正当化)や、戦地での残虐行為(兵士の自慢話)の掲載を躊躇わなくなった新聞など、世相の移り変わりも紹介され、全体的に綿密な考証に裏付けられた本という印象。
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東2法経図・6F開架:B1/8-1/436/K
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