〈共生〉から考える 倫理学集中講義 (岩波現代文庫 学術459)

  • 岩波書店 (2022年12月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (190ページ) / ISBN・EAN: 9784006004590

作品紹介・あらすじ

「共生」という言葉に込められた様々なモチーフを、孤独、ケア、教育、臨床、エコロジーなど様々な場面における問題群から考える。現代社会の抱える諸問題を、主に倫理学の観点から、これまでの議論を紹介しつつ、集中講義形式のやわらかな口調で解説する。巻末に詳細な文献案内を付し、倫理学の教科書としても最適な一冊。

みんなの感想まとめ

「共生」というテーマを通じて、孤独やケア、教育、臨床、エコロジーといった多様な問題を倫理学の観点から考察する内容が魅力的です。集中講義形式で展開されるため、読みやすく、特に専門職の視点からも共感を呼ぶ...

感想・レビュー・書評

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  • 神保町で背表紙に目が止まり、すぐに購入した1冊。読み易かった。『共生』についてこれまで語られてきたことについて、倫理を支柱としながら概観できるような本だった。

    『孤独』『ケア』『教育』『臨床』『エコロジー』と『共生』をテーマに、7日間に渡る集中講義形式で展開された。
    相談支援の専門職という仕事柄ピンとくることもあれば、ハッとさせられることも、息を呑むようなこともあった。

    この本を読んでいたら、先日仕事で一緒になった市役所の福祉担当が言ってたことが蘇った。
    『部署内では自己責任論が渦巻いているんです』

    誤解を含んだ大掴みの『平等』や『公平』の帰結として、自己責任論に至る構図は、これまでも何度も出会ってきた。
    そこを解きほぐす、編み直す言葉使いを体得しなければ…と思っている自分を捉えることができた読書だった。
    巻末についているブックガイドが、今後読み考える指標になってくれそうだとも思っている。

  • 東2法経図・6F開架:B1/8-1/459/K

  • <共生>から考える 倫理学集中講義
    川本隆史

    7日間の集中講義を収録したもの。講義らしく、本の紹介をメインとしており、読書案内的な位置づけで読むのも良い。
    共生について「調和や一体性の幻想が崩壊し隠ぺい抑圧されていた対立が噴出する状況のもとで、新たな共存の枠組みを模索する問題意識が根底にあり」「現代的意味での共生は自他が融合する共同体への回帰願望ではなく、他者たる存在との対立緊張を引き受けつつ、そこから豊かな関係性を創出しようとする営為」である、という引用文からスタートする本書では、まさにこちらの文章の通り、共生という言葉、概念を、所与や馴れ合い的な、もっと言えば通念的な仲よくしようという枠組みではなく、「お互いがお互いの生命の直接の侵犯者であることを確認し合った上での連帯」として、掘り下げていく取り組みである。本書でも引用されるが、私が昨年読んだレヴィナスの本でも、他者の他者性と損なわずに、如何にして関係を結ぶのかという点について、展開していく。
    共生とエコロジーや、共生と教育など、様々なテーマで集中講義を行っていくが、やはり個人的には、自律という言葉を考える上で、「自律の気構えをもった個人がむしろ大量消費社会という大海にのまれ孤立したアトムになってしまう」落とし穴というキーワードが出てきた部分が興味深かった。こちらは、私の好きなトクヴィル的な社会観でもあり、ゲマインシャフトへの回帰ができない中で、コンヴィヴィアルな社会を発想し、そしてその基礎を自律性に求めてしまうと、大量消費社会との食い合わせの悪さから、トクヴィルが指摘しているアトム化に対抗できないという流れと理解した。その中で、共生というものをおぼつかないながらも受け入れる受動的な姿勢というものが重要と言う部分もまさにその通りであろう。
    また、隣人愛という言葉のシモーネ・ヴェイユ的な定義として「不幸な人がなんらかの集合体を構成する一単位としてではなく、(中略)私たち自身と全く同じ人間であるにもかかわらず、ある日、不幸に見舞われ、模倣をゆるさぬ不幸の烙印を押されたひとりの具体的な人間として存在することを知る」という一文も印象的であった。その人々に、「あなたを苦しめているものは何ですか」という問いかけを内発的義務として声掛けられる人が、共生をスタートできるという部分は私の価値観とも共鳴する。私は保険業に携わっているが、原初の保険とはそのようなものであったのではないかと思う。多様な人間がいて、同じ人間でありながらもある日突然にも不幸の烙印を押されたひとりの具体的人間に対して、そうではない人が集まって、苦しめているものに対して取り除くための努力をするとう営為に、保険の本質があると思う。
    保険は損かもしれないが、純保険的に、支給額と保険料の総和が一致するということの基礎には、誰しもがランダムに保険金を支給される可能性のある、自身の変様態として感じられる人の存在が必要であるとも思う。ある意味、他者の他者性と毀損せず、経済的なつながりのみでリスクシェアの共同体をつくる保険の仕組みは、コンヴィヴィアルな共生の一つの形なのかもしれない。
    本書に通底するのは、常に本や論文集を引用しつつ、このような見方もあり、一方でこのような見方もあると、しきりに前言撤回し続ける知性の使い方であった。
    人権の部分でも、人権の概念を一度、問い直す。それが発生した時代まで想像力を働かせ、編み直すという姿勢は、極めて重要であると感じた。
    また、本ブックレビューでは、できなかったが、読んだ本から3つの分を引用し、なぜ気になったかを書くというレビュー方法も、今後使用してみたいと思う。

  • 7日の講義として多くの領域について共生というテーマで説明をしている。推薦本を見ると他書でも紹介された本が多い。サクッとよめるので学部学生にもおすすめである。

  • 【本学OPACへのリンク☟】

    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/723037

  • ギリガンの訳書から著者にたどり着き一読した。「共生」という言葉の両義性(多義性)から、その意味について考察し、そして「共生」の軸となり、発生を促す「孤独」に着目し、「ケアの倫理」に議論は移る。その後は「教育」「倫理」「エコロジー」における「共生」について述べる。最後に著者の読み方を読んで、著者の書き方について理解が出来たが、「キー・センテンス」を上げて、それについての論考を深める手法であるが、並行して文章を並べていくので、難解な部分も多い。章末と巻末には読むべきブックガイドがつく。勉強を続けるにはガイドブック的な働きを持ち、役に立つ。

  • 【蔵書検索詳細へのリンク】*所在・請求記号はこちらから確認できます
     https://opac.hama-med.ac.jp/opac/volume/467603

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著者プロフィール

1951年生まれ。東京大学・東北大学名誉教授。専攻は社会倫理学。
著書に『現代倫理学の冒険』(創文社),『ロールズ─正義の原理』(講談社),『忘却の記憶 広島』(共編,月曜社)ほか。訳書にロールズ『正義論』(共訳,紀伊國屋書店),ギリガン『もうひとつの声で』(共訳,風行社)ほか多数。

「2025年 『ひろひと天皇年代記 一九四五年八月ヒロシマ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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