貴族の階段 (岩波現代文庫 文芸 19)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006020194

作品紹介・あらすじ

二・二六事件を背景に、貴族と軍人との暗闘を女性の視点から鮮やかに描いた作品。公爵西の丸秀彦の娘氷見子は、父と来訪者の会話の秘密の記録係であり、青年将校の水面下の動きを知る。その決起に加わる兄義人、義人に思いを寄せる陸軍大臣の娘節子、節子と人知れぬ関係をもつ父秀彦…。時代の白熱点に見る人間の本性とは。

感想・レビュー・書評

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  • 感想を書くのが難しい。
    熟れきって腐りかけた貴族の世界と熟れきって腐りかける前に自ら命を絶った少女(女?)を、飄々としつつも健全な主人公の少女が"記録"したお話。片岡義男の少女時代に近い読後感。めちゃめちゃ百合だけど、萌える百合ではない、と思う。

  • 若い頃、武田泰淳氏の講演を聴きに行った事を思い出す。226事件を題材にした小説かと思ったけれどどうも違う。印象に残ったのが大山巡査が殺されて、そのおかみさんの食ってっかかる剣幕と、奥様が予測して生命保険を沢山かけてあげているから…とのくだりかな。

  • 「今日は、陸軍大臣が、おとうさまのお部屋を出てから階段をころげおちた。あの階段はゆるやかで幅もひろいのに、よく人の落ちる階段である。」の書き出しでもうワクワクする。悉く暗くなりがちな二・二六事件を題材にしながら、お転婆貴族のお嬢様を主人公に据え、破天荒でライトな小説に仕上げた泰淳さんのセンス。ステキだ。頭の回転が速くて観察力バツグンでしかもアンモラルな性格は奥方の百合子さんの影響? 一流の言葉遊びで血腥い事件も、深刻な死生観も、大きなユーモアに含み込んだスケールのでかい飛び切り上等な少女小説。面白かった!

  • 華族令嬢の目を通して二・二六事件を描いた、武田泰淳の長篇小説。
    テンポのいい文章とストレートな構成で描かれるのは……一言で言うとメロドラマw 恋愛模様と二・二六事件が迫る不穏な政情とが縦横に合わさって殆ど一気読みした。華族階級の煌びやかな恋愛模様というと矢張り三島の『春の雪』が思い浮かぶが、それとはまた違った面白さがある。
    映画化もされたことがあったらしい(相変わらず観てはいない)。

    余談だがブクログのタグに『乙女チック』があって爆笑した。確かにww

  • 執筆当時すでにそこそこおっさんだった武田泰淳の内なる乙女爆発!どこか浮世離れしつつ妙に鋭い感性を持った公家出身のお嬢様が語る226事件。血なまぐさい話なのにどこかふわふわした感じとか、凄いいいわー

    純文学というよりは、「お姉さま」モノジャンルの少女小説なのね。一昔前のコバルト文庫に入ってても違和感ないよ、これ。

  • 226事件が関わってくる話なんだけど、イマイチ入り込めなかった。
    純文学と言うやつなんですが……見開き全部台詞で、誰が喋ってるかわからない部分がちょっちゅう。つらい。
    美男美女しか出てこないんですけどねww

    個人的には「絶世の美丈夫とか、この世ならぬ美女とかいう奴は、いずれも悪逆非道と関係があると睨んでいる」って陸軍大臣のセリフが好き。

  • 予想と違いすごい通俗メロエロドラマだった。映画化・TVドラマ化済みだが、東海テレビによる昼メロ化を希望。
    登場人物はみんなキャラが立っていて、特に大山巡査夫妻がいい。
    澤地久枝の解説はネタバレしすぎでは。

  • 貴族院議長西の丸公爵の娘、17歳の氷見子は父の会見を筆記する役目をしている。陸軍大臣の娘節子は氷見子と同い年で氷見子をお姉様と慕う。政情は不安定で貴族と軍部の一部が暗躍し、氷見子は父の命を守ろうと節子をスパイ役に命じる。節子を愛する氷見子の兄は見習士官で、クーデターを起こそうと考えている軍人側についているが「孝」と「忠」の狭間で苦悩している。日々迫ってくる氷見子の父を脅かす危険、兄を巻き込んでいる黒い渦。そして西の丸家も襲撃される昭和11年2月26日。本当に怖い人物、袞竜の袖に隠れていたのは西の丸公爵だったのか。

  • 二・二六事件をベースに、公爵家の娘視点から描いた作品。

    ……ですが、
    百合風味あり近親相姦風味あり不義密通ありな、
    心躍るドラマです。
    昭和文学侮りがたし。
    ブクログの関連商品に百合まんがが入ってるよ。。。


    それにしても、新しい「ちくま日本文学」全40巻に
    武田泰淳が入っていないのは、何かの間違いですよね?
    全50巻に増えてラインナップされるんですよね??
    信じてたのに!ちくま!

  • かなり面白かった。賢く気高い貴族の娘・氷見子、彼女を慕う陸軍大臣の娘・節子、氷見子の兄で優男の軍人・義人と父の秀彦。彼らが織り成す人間模様のドラマとしても、政治の生臭さと戦争の狂いっぷりと崩れていく貴族社会のドラマとしても読めます。

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著者プロフィール

武田泰淳
一九一二(明治四十五)年、東京・本郷の潮泉寺住職大島泰信の息子として生まれる。旧制浦和高校を経て東大支那文学科を中退。僧侶としての体験、左翼運動、戦時下における中国体験が、思想的重量感を持つ作品群の起動点となった。四三(昭和十八)年『司馬遷』を刊行、四六年以後、戦後文学の代表的旗手としてかずかずの創作を発表し、不滅の足跡を残した。七六(昭和五十一)年十月没。七三年『快楽』により日本文学大賞、七六年『目まいのする散歩』により野間文芸賞を受賞。『武田泰淳全集』全十八巻、別巻三巻の他、絶筆『上海の蛍』がある。

「2022年 『貴族の階段』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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