私の大阪八景 (岩波現代文庫 文芸24)

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  • 岩波書店 (2000年12月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (250ページ) / ISBN・EAN: 9784006020248

みんなの感想まとめ

戦争の時代を生き抜く少女の姿をユーモアを交えて描いた作品で、著者自身をモデルにしたトキコは、愛国心を胸に日々を過ごします。彼女の周囲には、彼女の熱意をやや持て余しつつも優しく見守る家族や友人たちがいま...

感想・レビュー・書評

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  • 著者自身をモデルとする武田トキコという少女が、戦争の時代をたくましく歩み通したすがたを、ユーモアを織り交ぜながらえがいた作品です。

    著者より二歳年下の妹尾河童が執筆した『少年H』は、国民を戦争に動員するプロパガンダに対する批判的なまなざしをそなえた主人公が登場する作品として知られています。これに対して本書に登場するトキコは、生来のおっちょこちょいの性格のまま、前のめりに愛国心を堅く心にいだき、日々を送ります。そんな彼女に対して、両親をはじめ周囲の人びとはやや持て余し気味に対応しつつ、やさしく彼女のことを受け入れてくれます。

    やがて戦争が終わり、天皇の声をラジオで聞いたトキコは、自分のなかが「がらんどう」になったかのように感じます。一方で、戦地へと赴いたトキコの従兄の新太郎も、彼女が初めて恋をした清川アキラも、帰ってくることはありませんでした。

    戦争の恐ろしさを声高に語り、ファシズムの危険性を厳しく告発する作品は多くありますが、本書はそれらとは一線を画しています。むしろ戦争が日常と地続きであり、愛国心の高揚はシニカルなまなざしに取り巻かれつつ存在していたことが、ユーモアにくるんでえがかれているように感じました。

  •  初版は1965年、文藝春秋新社刊行。
     タイトルは太宰治の『私の東京八景』にあやかったもの。小学校時代(『民のカマド』)、高等女学校時代(『陛下と豆の木』『神々のしっぽ』)、女子専門学校時代(『われら御楯』『文明開化』)と、アジア太平洋戦争と日本敗戦を女学生として生きた時間が鮮やかに定着されている。視点人物のトキコは感激気質の熱心な皇国臣民で、お国のためにと歯を喰いしばって奮闘するのだが、周囲の友人や家族がその様子を冷ややかに眺めている様子がおもしろい。時折トキコが夢見る妄想も、山中峯太郎と吉川英治、戦時美談と『風と共に去りぬ』や『制服の乙女』が入りまじったもので、当時の人々の物語的想像力の情報源を想像させる。『民のカマド』や『われら御楯』には朝鮮人たちに対する差別がしっかりと書き込まれた点も重要。『文明開化』は、敗戦直後の昭和天皇の「巡幸」の様子を描いた問題作である。

  • 戦前から戦後の大阪を一人の女を通して描く。

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著者プロフィール

田辺 聖子(たなべ・せいこ):1928(昭和3)年、大阪生れ。樟蔭女専国文科卒業。1964年『感傷旅行(センチメンタル・ジャーニィ)』で芥川賞、1987年『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』で女流文学賞、1993(平成5)年『ひねくれ一茶』で吉川英治文学賞を、1994年菊池寛賞を受賞。また1995年紫綬褒章、2008年文化勲章を受章。昨今では『ジョゼと虎と魚たち』の映画化アニメ化が話題に。小説、エッセイの他に、古典の現代語訳ならびに古典案内の作品も多い。2019没。

「2026年 『田辺聖子傑作短編集 難儀な恋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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