鏡のなかの鏡―迷宮 (岩波現代文庫 文芸 31)

  • 岩波書店
3.83
  • (194)
  • (93)
  • (232)
  • (16)
  • (8)
本棚登録 : 1690
感想 : 146
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006020316

作品紹介・あらすじ

鮮烈なイメージと豊かなストーリーで織りなされる30の連作短編集。一つずつ順番に、前話をゆがんだ鏡像のように映しだし、最後の話が最初の話へとつながって、読者をめくるめく意識の迷宮へと導く。人間存在の神秘と不可思議さを映し出す鏡の世界の物語は、『モモ』『はてしない物語』とならぶ、エンデの代表作である。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読後、足元がくらくらしてしまいます。
    …というか、「読み終えた」という実感がないというのが本音。
    夢から夢へ、次々と足を踏み入れているような。
    巡り巡って最初に戻るかと思いきや、実はどんどん奥へと迷い込んでいるような。
    気付けば本の最後のページになっていて、「ああ、終わっていたのか」とはっとしたのでした。

    本書には30篇のゆるやかにつながる連作短篇作品が収められています。
    今回、初めて読んだので1つ1つの物語を味わった感じでした。
    どちらかと言えば灰色や黒といった暗いイメージの物語なのに、それぞれが鮮烈な印象を残しているのに驚きます。

    本書は2度、3度読むことで、より一層深く深く味わえる本だと思うので、ぜひまた読みたいと思います。

  • 『ものがたりの余白』によると、著者は東洋から着想を得て本作を書いたそうです。

    ①それ自体多義的な漢字
    →本書では「宙に漂い、どこにも固定できない、どこまでも多義的な」絵を書き出そうと試みたそうです。

    ②「無」の価値(老子の「挺埴以為器。當其無有器之用。(粘土が包む虚無の空間が器の有用性だ)」など)
    →描いた絵の間で起きる、「語られないもの」に注目させる、そのために語ったのが本書とのこと。

    それで興味をもって読んでみたんだけど、難しい。
    「どこにも固定できない、どこまでも多義的な」絵を書き出そうとしているからそりゃ難しい(慣れている読み物ではない)のは当然なんだけど、つい絵を味わうことより「え、どういうこと??」と考えてしまう癖が顔を出す。

    ただなんとなく、「世の中の暗黙の了解となってるルール、それって本当に正しいの?疑わなくていいの?盲目に従ったまま生きるの?」っていうのが、描き出されたいのかなと思った。

    グロテスクな描写もあり、寝る前に読んだら怖い夢を見てしまった日も。かなり個性的な一冊です。

  • 長い夢を見ていた気分。
    目が覚めた後、なにか重要なメッセージを受け取ったような気がするが忘れてしまった。それが悪夢だったかどうかも思い出せない。

    すごいのはほとんど全ての情景がタイトルを見るだけで目に浮かぶこと。
    ストーリーがあるようで無い素晴らしい世界観。幻想的であり、同時に不安な気持ちにもさせる。

    人には簡単におすすめ出来ないけれど、自分の中では他の本と比べて別格の魅力があります。強く引き込まれる本です。

  • まさに「鏡に映った鏡」のような連作短編集。前作のラストと同じ表現で始まりながら全く新たな視点で立ち現れてくる、幻想的で美しい30篇の物語が楽しめる。

  • 途中睡魔と戦わねばならぬところもあったが全体的に冷たく硬質な幻想に満ちていてよかった。何故かなんとなく山尾悠子が彷彿とさせられた。
    P177 吐き気をもよおすような外観の、この三匹の生き物が、いっしょになって音楽を奏でるなどということが、いったいありえるのか? あの暗く汚れた隅でいっしょにうずくまっている三匹が、あらゆる和音のなかでもっとも純粋なこの和音を生みだすなどということが、ありえるのか?

  • 一度目をようやく読了。全体的に難しく感じた。作中「この人って前にいた人?」と思いながらも混乱のまま。2回目、3回目と読んでいくと理解が深まるかもしれないけれど、読むには結構気合いがいる。

  • 全30話の短編集。モモや果てしない物語のような児童文学を想像していたら、暗く難解な大人向けの物語ばかりでびっくり。
    印象に残ったのは、舞台の上でひたすら幕が上がるのを待つダンサーの話と、展覧会を見て回る夫婦の話。どの話も総じて不気味な雰囲気があり、世にも奇妙な物語を彷彿とさせた。タイトルの通り、出口のない迷宮に迷い込んだような錯覚に陥った。

  • 書籍では初めましての作家さん。
    原作者としての映画は観ています。
    延々と続く不条理な夢の中。
    一番最後の話が最初の話に繋がっているからたまらない。
    出口ないじゃん!ループですか??
    これは怖いですよ。
    出口のないミラーハウスを連想しました。
    この閉塞感というか、焦燥感に駆られるというか
    湧き上がる不安は、まさにコロナ禍の状況みたいですよ。
    タイムリー過ぎて怖いわ!

    なんか本当に疲れました。
    あのステキなファンタジーを描いた作家とは思えない
    別の意味でやられました…(o_ _)o

  • 訳者のあとがきにエンデが『「鏡のなかの鏡」が日本でどのように読まれるのか、大きな期待をよせている。』と書いてあったけど、ごめんなさいって感じ。
    全体を通して全然意味がわからなかった。
    でもアマゾンの評価など見るととてもいいのでわかる人にはわかっているということで、エンデさんも喜んでいるのではないかと思う。
    「モモ」も奥が深い作品だったけど、これはさらに奥が深い。

  • 敬愛するミヒャエル・エンデの本で、「はてしない物語」の次に好きな作品。

    許して、ぼくはこれより大きな声ではしゃべれない。

    この書き出しからして、惹かれずにはいられない。
    なんと果敢なく、優しく、鋭い言葉たちだろう。


    と、絶賛しておいて実は読了していなかったりするのですがw
    今度は図書館ではなく、購入して読みたい。
    いや、読む!!

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「「はてしない物語」の次に好きな作品。」
      私も!(一番好きなのは「モモ」ですけど)
      エンデの理屈っぽさ?が凝縮された感じ。イメージを楽しむた...
      「「はてしない物語」の次に好きな作品。」
      私も!(一番好きなのは「モモ」ですけど)
      エンデの理屈っぽさ?が凝縮された感じ。イメージを楽しむための一冊ですね!
      2013/08/05
全146件中 1 - 10件を表示

ミヒャエル・エンデの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×