鏡のなかの鏡―迷宮 (岩波現代文庫 文芸 31)

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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006020316

感想・レビュー・書評

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  • 昔デパートのトイレの洗面台の鏡とか、あるいは祖母の家の古い三面鏡とかを、飽きずにずっと覗き込んでいた。
    二つの鏡を平行におくと、ずっとずっと向こうまで像が連なって見えるという、アレ。 いくら頑張って覗き込んでも、自分の顔だけは見えない。
    この本を初めて読んだとき…もう何年も前になるけれど、
    向かい合わせの鏡の中を覗き込んだときのあの不思議な感覚を、思い出した。

    いくつもの短編が、あたかも鏡の中で無限に続くあの像のように、繋がっている。
    一見全く関係のない話、でもどこかで繋がっている。
    その僅かな繋がりを辿りながら、心の深淵へと迫っていく感覚。

    ありきたりな展開を望む人は、絶対に読んではいけない本。
    でも何故だろう、わからないけど
    読み終えたとき、何か不思議な感覚をおぼえた。
    きっと、この感覚は、いわゆる普通のハッピーエンドじゃあ味わえない。

    謎めいた文章を紐解きながら、心の深淵へ迫りたいあなたにおすすめ。

  • 理解しようと思わず読むファンタジー。

  • 「モモ」、「はてしない物語」、「自由の牢獄」など、エンデの世界観は大好きなので本書も手に取りました。なるほど、ほかの代表作に見られるような、ファンタジー性の比率は減り、現代社会の抱える病巣が記述されているなど、もはや児童文学ではまったくありませんが、それにしてもエンデ・ワールドは本書も全開だと思います。本書は30の説話が盛り込まれていますが、ほかのレビュワーの方も書かれているように、最初は頭の中にクエスチョンマークが並びます。それぞれの説話のつながりが全く見えないからです。いったいこの本は何?という感覚ですが、それぞれの短編の世界に単純に身をゆだねてみることがよいでしょう。

    そして後半になると徐々につながりが見えてきます。最後の5話くらいがまさにクライマックス、謎解きとなりますが、30話読んだあとも、完全には腑に落ちませんでした。そして本書の最後に精神分析の専門家の方が書かれている解説を読んで、やっと本書の全体像がわかり驚愕・畏怖の念を抱いた、という感じでした。そこでふと思ったのが、(最後の解説は読まずに)、30話目から逆に1話目に向かって読むのも面白そうだな、ということです。自分の内の内のさらに最奥部にいきつくという疑似体験ができるのではないでしょうか。

    最後に自分の体験を紹介したいと思います。これは単なる偶然あるいは勘違いかもしれませんが、本書を読み始めてから、やたらと睡眠中に夢を見るようになりました。そして毎晩の夢はつながりがありそうで、なさそうでもあり、あたかも自分自身も夢の中で「鏡の中の鏡」を疑似体験しているかのようでした。そう思うと、「はてしない物語」のバスティアンのような、何か自分自身が物語の中に入り込んだという、ある種空恐ろしい感覚も抱いた次第です。

    (2022年9月1日の追記)久しぶりに、ディカプリオ主演で渡辺謙も出演している映画「インセプション」を見ました。見れば見るほど、エンデの「鏡の中の鏡」とオーバーラップします。極めつけはディカプリオの奥さんの名前がモル、ということで、本書の第1話に登場するホルとの関連性を感じずにはいられませんでした。

  • 30の小さな物語から構成された一冊。一つのお話が言葉とイメージによって次のお話へとゆるやかに繫がり、やがて円環の中へと閉じていきます。イメージに遊ぶうち、合わせ鏡のように読み手と物語の境界がぼやけてゆき、どこまでも迷宮に彷徨うような読書体験でした。

  • 読んでいるうちに、自分の現実と物語が混じるような、すり替わるような、奇妙な感覚です。

  • 何かのメタファーなんだろうがさっぱり理解できない。ギブアップ。

  • 物語の意味は分からなかったけれど、なぜかふとした瞬間に思い出すストーリーがいくつかあります。何でだろう?

  • 全編それぞれ何を意味するのか、何を暗喩しているのか、誰かに解説してほしい

  • 鏡像のメタモルフォーゼであり、重なっても触れ合うことなく、交差しても縺れることのない永遠のパターンの反復が生み出す無限の宇宙である。

    夢の眼のなかで燃え燻った煤煙が幾筋も流れ出し、あなたの視界を閉ざそうとする。円環する時の膜による遮蔽。そのときから覚醒はあなたを見失ったので、あなたは非人称のあなたへ、非在のあなたへと還っていくしかない。
    いつかあなたは夢の眼の奥にあなたがいることをどこかで眠っている誰かに夢を通して注ぎこむだろう。そして出会わないわたしたちの起こらない物語が未生のわたしの現実へと反転するのだ。

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