蝦蟇の油 自伝のようなもの (岩波現代文庫 文芸37)

  • 岩波書店 (2001年8月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (380ページ) / ISBN・EAN: 9784006020378

みんなの感想まとめ

黒澤明の幼少期から『羅生門』での成功までを描いた自伝は、彼の成長過程や映画への情熱が豊かに表現されています。厳格な父や風変わりな兄との関わり、映画に対する早熟な興味を持つ姿が印象的で、特に10代の頃に...

感想・レビュー・書評

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  • ウェブ上でバラバラに読んだ記述の、おおもと。
    いいボイス。
    兄の自殺……中上健次。



    日本を代表する映画監督黒澤明が自らの半生を回想した自伝.少年時の思い出に始まり,映画との出会い,美術・文学・音楽の経験,助監督時代を経て,鮮烈なデビュー作「姿三四郎」から「羅生門」でヴェニス映画祭グランプリを受賞するまでが,大正・昭和の世相を背景に感動的に語られる.巨匠の創造の秘密に迫る貴重な証言.(解説 淀川長治)

    1978年3月から9月まで『週刊読売』に連載。加筆・訂正の再構成のうえ、1985年の映画『乱』公開前の1984年に岩波書店より単行本にて刊行された。以降1991年に同時代ライブラリー版が、2001年に岩波現代文庫版が刊行された[1]。

    目次
     1 旧友交歓 ……幼時の頃 幼年の頃 森村小学校 黒田小学校 旧友交歓 少年のいる風景 つむじ風 剣道 棘と毒 書道 紫式部と清少納言
     2 赤く長い煉瓦屏 ……明治の香り 大正の音 神楽坂 天狗の鼻 蛍の光 お茶の水 赤く長い煉瓦屏 大正十二年九月一日 闇と人間 恐ろしい遠足
     3 迷路 ……仰げば尊し 私の反抗期 遥かなる村 系図 富樫の伯母 苗 迷路 私の兵役 弱虫小虫 浮世小路 書きたくない話 ネガとポジ
     4 長い話 ……危い曲り角 峠 P・C・L 長い話(一) 長い話(二) 疳の虫 好人 悪戦 私の山
     5 用意、スタート ……用意、スタート 「姿三四郎」 一番美しく 「続姿三四郎」 結婚 虎の尾を踏む男達 日本人
     6  「羅生門」まで ……「わが青春に悔なし」 「素晴らしき日曜日」 どぶ沼のある街 「酔いどれ天使」 賽の河原 「静かなる決闘」 鮭の繰言 「野良犬」 「醜聞」 「羅生門」 
     ◇黒澤明監督作品
     ◇解説 黒澤明の命の本 淀川長治

  • 読んだのは単行本。角背の箱入りという、昔はよくある体裁だが今ではたいへん贅沢なつくり。
    それはさておき。
    映画、邦画が好きなら一度は読んでおかんといかんと思っていた本書、ちょっと期待外れ。
    というのは、私は黒澤監督の子供時代などどうでもよく、彼の映画論やエピソードを期待していたのであって、たしかにそれらにも触れられているが、それも『羅生門』まで。
    それ以降の『生きる』『七人の侍』『蜘蛛巣城』『隠し砦の三悪人』『天国と地獄』etc.etcに関する話が読みたかったのである。
    本書は黒澤監督の生の声が聴けるという利点はあるが、黒澤映画についてなら佐藤忠男氏の『黒澤明解題』のほうが充実して面白かった。
    そちらを読み直そう……。

  • 黒澤明の、幼少期から「羅生門」で世界的巨匠になるまでの自伝。

    小学生から旧制中学時代までのことは比較的細かく書いていて、よく覚えているものだと感心する。厳格な父、風変わりな兄、後に映画で協働することになる同級生。
    刮目すべきは、10代の頃に見た映画のリストが記されていることだ。「散りゆく花」(グリフィス)ををわずか九歳で、「グリード」(シュトロハイム)を十五歳で!!サイレント期の傑作にリアルタイムで接した経験は、やはりこの人の血肉となっているのだろうと思わせる。

    画家を志したものの美術学校に落ち、やがてPCL(のちの東宝)で天職に巡り合う。助監督についた山本嘉次郎からいかに多くを教わったか、そしてそれがデビュー作「姿三四郎」の成功に繋がっていったかが丁寧に書き込まれている。
    すでに戦時下、内務省の検閲官の愚かさには口さがない。

    戦後は「我が青春に悔いなし」から出発するが、すでにこの作品から今度は労働組合の横槍が入り始める。そして東宝争議。黒澤も映画が撮れなくなり、大映、松竹でメガホンを取る。その成果が「羅生門」なのだが、一方で東宝争議のさなか多数の助監督を馘首し、結果的に人材育成に失敗して10年にわたる停滞を招いた東宝経営陣への批判は容赦がない。設立当初のPCLの社風の中で育ったが故に、極度に資本の論理に傾斜した経営陣にはいくつも言うことがあったのだろう。

    ただ監督として自立してからの作品群にはあまり細かく触れていないのがもったいない気がする。

  • 黒澤明監督が67歳くらいの時に「週刊読売」に連載していたものに、加筆・修正したもの。監督が産まれてから『羅生門』で受賞するまでについて書かれている。

    幼少期の家族との関わりや学校での事なので、興味深いエピソードが満載。ひ弱で苛められていたのが、剣道やって強くなるところなど黒澤映画と同じように爽快だった。

    兄妹の多くが端役に亡くなられていたり、お兄さんからの影響が強かったりと、ルーツ的な部分にも触れられています。

    助監督時代や監督になってから撮影した作品についての話も、作品を観てるとさらに楽しめると思います。

    一時期はプレミアが付いていたようですが、再発されたからか今は普通の価格で販売されています。

    黒澤ファン、映画ファンには是非読んで頂きたい本です。

  • 生い立ちから「羅生門」までの黒澤明の自伝。執筆当時すでに世界的巨匠だったが、大成後の回想はほぼ無く、そのバックボーンがメインとなっている。幼少の頃の牧歌的な大正期、映画界に身を投じた頃の暗く狂信的な戦中期の体験からは、対照的な世相が伝わってきて、時代の証言のよう。戦前の田舎や下町などには、江戸時代の有様が遺っており、殊に長屋に住む人達の江戸っ子風の快活さと陰惨極まる行為の人間の業の対極は忘れ難い。著者自身、元士族の家で軍人を父に持つ身分を享受する一方、非合法活動に参加し低劣な生活環境に身を置くなど、様々"役柄"を変えて世間に接しており、その後作品に投影される世界観は、複眼的な目を養った青年期あってこそと思わされる。戦後仕事が軌道に乗った頃の筆致には、仕事が楽しくて仕方ない様が表れ、それが名作を生む活力となり、同時に、戦中の制限や異常な検閲官と対峙し苦しんだ経験からの解放も、バネの如く原動力となった事が窺えた。黒澤明の成功は、戦後日本の成功と被る要素があるのかもしれない。

  • 「兄」の傑物ぶりが強烈。被災地巡りの件は自分が連れ回されているような気分になり、その日はもうページを繰る気にはなれなくなってしまった。
    「今の音はデジタルだらけ、昔は生の音で溢れていた」という言葉を全肯定は出来ないけれども、我々平成育ちは彼ら大正育ちの半分くらいしかものごとを経験しないまま成人を迎えているのではないか。あの時代を生きた人々の自伝は、どれを読んでも身につまされる。

  • 昔は全力でいろんなこと楽しんでた。
    今は全力でつまらない振りをしてる。

  • 日本映画界の巨星の自伝のようなもの。
    『羅生門』辺りで終わらずにもう少し語って欲しかったと思うのは欲張りか。
    どの時代・世界でも小人が虚勢を張りたがる様は滑稽だが、そう見えるのは第三者ないしは時間が経過した後振り返る当事者のみ。真っ只中の当事者にとっては、腸煮えて仕方ないんでしょう。
    また良き師匠・友・家族等、巨人の巨人たる所以は、周りに恵まれるというか、周りを吸い寄せるところでしょうな。この人もご多分に漏れず。
    しかし『用心棒』の衝撃的オープニングなどは偉大なる師の山さんの影響あってのことかな?人間にとっての縁とは何かを考えさせてくれる味わい深い本でもあります。

  •  良くできる兄の自死。才能豊かな三船敏郎。子細で印象的な過去描写が多出。記憶力のよさなのか、演出なのか。黒沢自身は、高エネルギーで基本的に陽性で運に恵まれた人物のようだ。
     当時、映画という新メディアが、金の匂いをかぎつけた人物や芸術至上主義の利己的人間が大勢流れ込んできた混沌、狂乱な世界だったことがうかがわれる。
     畢竟、表現とはそれまでの積み重ね、素養の発露であり、どのような過去も無駄にならないと感じさせられた。

  • 世界のクロサワさんの自伝。明治から昭和の「激動の時代」をがむしゃらに生きてきたおじいちゃんが、表現豊かにその半生を綴っている本。

  • 黒澤明監督に関する書籍では必ず参考文献とされる自伝だが、長く増刷されなかったせいかなかなか読む機会がなかった。幼年期から綴られた本著は、著者が遺してくれた数多の名作を抜きにしても興味深く、その流麗な文章と豊かな記憶力、そして観察力の鋭さに圧倒される。もちろん後半生の40年分には触れずに筆を置いてしまったのは悔やまれるが、映画監督はその作品で語るべきだという著者の意見はもっともであり、妥協を許せなかった潔さでもある。

  • (欲しい!)/文庫

  • 伝説も多い人だけれど、普通の偏屈じいさんっぽさも持ち合わせていて。何より、自分にとっての映画は、「どですかでん」のロクの電車と同じだ、と。
    ロクの電車を持つ人生の、なんと幸福なことか。

  • 黒澤明監督の自伝、ようやく再刷されて読むことが出来ました。
    明治生まれで大正、昭和と激動の時代を生きる黒澤少年(青年)のが見た情景と、その思い出。映画とは関わりのない時期のエピソードも面白い。
    なぜこの本を原作に映画やドラマが製作されないのだろうと思いました。
    巻末の淀川長治氏の解説からにも熱量を感じます。

  • 黒澤明の自伝、三船敏郎をより知りたい人は必ず読もう。

  • 黒澤明監督を知る上ではぜひ読んでおきたい本です。また、分野関係なく作品作りの勉強になります。

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著者プロフィール

(くろさわ あきら 1910−1998年)
日本を代表する映画監督。1943年『姿三四郎』で監督デビュー。生涯30本におよぶ名作を監督した。『七人の侍』(1954年ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞)など海外の映画祭での受賞が多く、映画監督として初めて文化勲章、国民栄誉賞を受賞し、1990年には米アカデミー名誉賞が贈られた。

「2012年 『黒澤明脚本集『七人の侍』』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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