- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006020552
感想・レビュー・書評
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読んでいて気分の良くなる話ではないが、やり場のないどうしようもなさや、それでも底からわきあがってくる生の力のようなものを実感させてくれる作品である。連作といっていい2篇が集録されているが、どちらもラストが見事で、特に「遠来の客」の物語の閉じ方は印象的だった。
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1985年下期:第94回芥川賞受賞作品。
「遠来の客」「過越しの祭」の二篇が収録されています。どちらも同じ主人公。
自由を求めて渡ったアメリカで、脳障害の息子を産み、ユダヤ教の親族、癇癪持ちの夫と相容れない主人公の、生生とした生き様。
抜けられない地獄のような、でも取り組むしかない日々がリアルに描かれています。
過越しの祭は、ユダヤ教の祭りのひとつ。出エジプトを阻むファラオに対し、神が十の災厄をもたらした内、エジプトの人間・家畜にいたるまで「初子を撃つ」という災厄を、ユダヤ人は家の戸に印をすることで回避した由来だそうです。 -
ユダヤ系アメリカ人の夫、脳障害をもつ息子との日々を綴る連作2篇。
前篇の「遠来の客」が好きだった。子供をめぐる夫婦の口論に次ぐ口論、その嵐のような不協和音の末、ふとした瞬間に至った少しの間と静かな一言に、「惨めさ」だけでない情感が確信されて極上の余韻。 -
1985年下半期芥川賞受賞作。55歳での受賞。著者はアメリカで、作家のグリーンフェルドと知り合い結婚。次男の子育てとの両立の困難から自身も画家から作家に転身した結果である。本書はロスに暮らす、わたし(ほぼ作家自身であると思われる)が夫と長男と共に休暇(のはずであった)で出かけたニューヨークでの、わずか2日間を綴っている。自由を求めてアメリカに渡ったはずが、夫の出自のユダヤ社会は三千年昔からの因習を守り続けていたのだった。大阪弁での1人称語りはうまく完成度も高いのだが、このあたりで完結しているような印象だ。
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起伏に乏しい。
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新潮新人賞、芥川賞授賞作品。
ヘビーな話やけどスラッと書いてはります。
家族愛のお話。 -
読書中、知らず知らずの間に本を「ぎゅっ」と握っていた。