赤い高粱 (岩波現代文庫)

著者 : 莫言
制作 : 井口 晃 
  • 岩波書店 (2003年12月17日発売)
3.68
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006020798

赤い高粱 (岩波現代文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 下劣か崇高か 快作か怪作か 迸るエネルギーがあることは間違いない

    2012年ノーベル賞を受賞した莫言の作品。映画「紅いコーリャン」の原作である。
    本作は「赤い高粱一族(紅高粱家族)」として全五編で構成される。本書にはそのうち、前半二部(「赤い高粱」「高粱の酒」)が含まれる。1989年徳間書店刊の「現代中国文学選集・第6巻」の復刊として2003年に出ている(訳文には多少手を入れたそうである)。
    その後、ノーベル賞受賞を受けて、ということだと思うが、2013年3月に、「赤い高粱一族」後半三部(「犬の道」「高粱の葬礼」「犬の皮」)が「続・赤い高粱」として、本書と同じ岩波現代文庫から出版されている。こちらはおそらく、徳間「現代中国文学選集・第12巻」が下敷きになっているものと思われる。
    先日、『変』を読んだのもあって、読んでみた。

    映画も見ていなかったので、纏足の少女が嫁入りをすることに端を発する一族の物語、という程度にしか予備知識がなかった。色が鮮烈だという印象も抱いていた。
    だが読み進めて行くと、鮮烈というよりは、むしろ「どぎつい」と言った方がよいような物語である。色だけではない。暴力的な描写、激しいうねりを孕む筋立て、気性の荒い登場人物たち。多くの人物が命を落とし、大地を血に染める。体液や汚物がアジアの大気に満ちる臭気となり、激烈な物語が展開する。

    特に第一部は抗日が主軸に据えられた話である。この中の日本兵によるエピソードが掛け値なしに現実の姿であるならば、許し難い蛮行と言うしかない。暴力的な描写を読む苦痛とともに、それが自国民であることの断罪を絶えず感じながら読み進めるのはなかなかに苦行である。著者は

    『赤い高粱一族』は抗日戦争を語っているようですが、その本当の中身はわが村人たちが語っていた民間の伝奇(=荒唐無稽な物語)なのです

    と述べている。
    が、この部分、冷静に読むのは難しい。

    物語は時空を往き来する。第一部の最後で主要な登場人物が死んでしまうのだが、第二部でも在りし日の姿が現れる。
    行きつ戻りつしつつ、類い稀な高粱酒を作り上げた一族の愛憎の物語が紡がれていく。
    抗日描写がそれほどないこともあって、二部の方が読みやすい。名高い盗賊との顛末、役人に巧みに取り入る大胆な女主人など、「何だそれ」と思うような意外な展開も多いが、読み応えがある。

    本書中にはいくつか、数の誤りや人物の取り違えなど単純ミスであると思われる箇所がある。それもあってか、いささか荒削りな印象も受ける。

    著者はマルケスに影響を受け、また解説等でもよく引き合いに出されるようだ。『百年の孤独』も『エレンディラ』も読んだのはずいぶん前なので、無責任な印象になるが、少なくとも、物語の流れにもっと気持ちよく流されていたように思うのだ。
    本作には、もっと荒々しい、もっとプリミティブな何かが流れているように思われる。迸るエネルギーがある作品であることは間違いない。

    だが、さて、「続」を読むかな・・・?というと、いささか躊躇われる。読むとしても少々時間を置こうかなというのが正直なところだ。

  • 流れる真っ赤な血が放つ鈍い鉄の香りと、汗のすえた臭い、そして土の湿ったほこり臭さが雄弁に語る。軍隊の侵攻を受けるなかで生きる庶民の苛烈さを。

    1939年8月、中国山東省を進む日本軍を抗日ゲリラが奇襲して、双方に甚大な被害があった。その襲撃に関わった現地住民が物語の軸となる。タイトルの赤い高梁とは穀物のモロコシのこと。キビの一種で、食べるだけでなく焼酎の原料でもある。それは実る時、一面の畑を赤く染める。

    描写がひたすら生々しくて遠慮ない。貧しい原住民にとって、生きるとは命のエネルギーを燃やすことそのものであり、理由すら問わず、ひたすら命の限り振る舞うよう求められる。正義や理想、想像を許す余地がない。生きてゆくために食って飲んで寝て、その延長線上に日本軍との戦闘があるさまは、厳かですらある。

    2012年のノーベル文学賞・莫言氏の代表的な作品で、1989年に刊行された日本語訳の復刊だ。

    これだけでノーベル賞作家が分かったとはもちろんいえないけれど、なぜ受賞したかの一端は感じることができる。

  • 村上春樹のノーベル賞受賞に期待が高まる中、見事に持っていかれたことでその名を知り、一度はその著作に触れてみたいと思っていた莫言。「百年の誤読」を参考に、本作をチョイス。で、そもそも”高粱”って何ぞや、ってところから。でもそれを知ったところで、かの植物を身近に感じられた訳でもなく、結局ぼんやりしたイメージしか思い描けなかったけど。でも物語としては十分に楽しめました。続編があるみたいだから、まだ作品の全貌が姿を現した訳ではないけど、本作収録の2章分だけでもかなりの熱量。中国史は好きでよく読むけど、中国文学には初めて接した今回。面白いんだけど、やっぱり日本軍の愚行は題材になりやすいんか…って、結構複雑な気持ちも。恨み辛みって感じじゃなく、物語の有効なスパイスって感じではありますが。

  • 私は大学時代、中国映画に心酔していた時期があった。
    「紅いコーリャン」は鞏俐主演の有名な映画である。
    原作はあるとは知っていたが、読んだことは無かった。
    図書館に立ち寄った際、目に入ってきたのが本書であった。
    中国映画に対しての懐かしさから手に取った。

    余華の『兄弟』を読んだときにも感じたことだが、とにかく内容が下品である。
    また、日中戦争最中であることからか、人間の行動はすぐ人殺し・暴力に結びつく。
    祖父は何人人を殺しているんだろう。
    人殺しをすることに全く躊躇がないことに驚いてしまった。

    内容としては面白いが、万人に勧められる小説ではない。
    中国の風俗・文化に興味がある人には勧めたい。

  • 世界の小説を読む第4冊目中国
    「赤い高梁」莫言
    日本兵による暴虐が横行していた1930年代の中国山東省。「私」の祖父母が出会ったその日から、脈々と受け継がれる反骨の物語が始まる。実の祖父の様に可愛がってくれた使用人の生皮が日本兵によって剥がされる様、真っ赤な実がたわわに実る高梁の茂みの中で交わる祖父母、芳醇な酒の香りを嗅ぎながら育った父の幼少期、反乱分子同士の諍いー数々の鮮烈な情景が、順不同に描かれる。終始加虐者として描写される日本人として読むのは辛いものがあったが、どこか荒唐無稽な内容は、重い心で読むのではなく、もう少し違った心持ちと視点で読むべきなのではないかと思わせる何かがあった。ガルシア・マルケスのマジカルレアリズムに多大な影響を受けたと読んだが、そこまでファンタジー的な要素はない。

  • 読み終わった後、他の本を手に取ることが難しい、困ったな…と思った。エネルギッシュで、圧倒的。
    素材の扱われ方は(日本から見ると)中国ならではだが、時代的なことを考えれば、さもありなん。この「物語」には必須なことなのだ。ということは、麻風病の夫を殺したというくだりも祖父母が男と女であり、父が宿されたという物語に必要なことなのか?
    それにしても「赤い」とは語り手の祖母と祖父の愛の赤なのか、コーリャンが熟していく色なのか。大地に染みわたる人々の血潮の赤なのか。

  • [ 内容 ]
    <正>
    婚礼の輿が一つ、赤に染まる高粱畑の道を往く。
    美しい纏足をもった少女。
    汗に濡れ輿を担ぐ逞しい青年。
    血と土、酒に彩られた一族の数奇な物語が始まる。
    その名「言う莫れ」を一躍世界に知らしめた、中国現代作家の代表作。

    <続>
    ノーベル賞作家莫言の代表作で、五つの連作中篇からなる長篇小説『赤い高粱』の後半三篇を収録。
    日中戦争下の中国山東省高密県東北郷。
    日本軍を奇襲した祖父らだったが、その報復により村は壊滅する―。
    共産党軍、国民党軍、傀儡軍、秘密結社がからむ生と死、性と愛、血と土、暴力と欲望の凄烈な物語。

    [ 目次 ]
    <正>


    <続>


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  •  燃えるような赤いコーリャン畑を背景に繰り広げられる、「わたし」の祖父と祖母と父の物語。作中人物の記憶をなかだちに時間が自在に行き来する構成はどこかで見覚えがあると思っていたら、「解説」にガルシア=マルケスの名前が出てきて得心がいった。世界の文学は、こうして互いに刺激を与え合っているのだ。
     莫言が語った抗日戦争の物語は、まるで『水滸伝』のような豪傑譚になっている。こうした物語の語り方も、あるいは公的な戦争の記憶の語りに対する意識が生み出したものだろう。公的な歴史、体験の語りを軸とした物語とは別に、ファンタジーとして抗日戦争を語る語りがある。日本語の文脈では、いったいどんなテクストがこれと対応することになるのだろうか? やはり目取真俊の名前を挙げるべきだろうか?

  •  マジックリアリズムとかいうものを勉強するために、読書会用で買った本。まあ抗日とか村人とかその歴史とか、縦軸横軸入り交じりたいへん結構なことだが、中国の書く日本が、本当に日本のことを書こうとしているかは、わからない。あえて日本の鬼達を書くことにして、いつのまにかその鬼が中国人のアイデンティティになっている。それを書いているのではと思った。
     つまり、鬼の国ときけば、日本がそうであるように思えるが、本当はそれぞれが鬼の国であり、中国のなかにある、中国人の心の中に飼っている鬼を描いている。
     もうひとつ、この作家は銃というものが好きなのだなと思う。銃は、農民を最強の戦士に変える。撃ち方さえマスターすれば、どんな達人や剣豪も、あっというまに倒せたり、参らせて命乞いさせることができる。この拳銃という存在、銃という機能や平等さに、民俗的なものを込めて、世界観をつくりあげていっているのが、この作家のマジックリアリズムの肝であるように思われる。誰にでも使えて、引き金一つで殺せる、その平等性、合理性にプラスして、封建的だったり肉体的な暴力さをもったような村の世界の「都会のやつらは良い思いをしているのだから、田舎のおれたちが少し悪いことをしたって、とがめられることはあるまい」的なノリとあわさり、グロテスクな、かつてない世界を生み出しているように思う。

  • 昔見た映画も良かったですが、この原作もまたいいです!

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