- 本 ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006021061
感想・レビュー・書評
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折口信夫が創作活動を行うとき、「釋迢空」という不思議な筆名を使う。
「釋迢空」とは死者の名前だ。
折口信夫が、何故「釋迢空」という死者の名前を名乗るようになったのか、を本書は探っていく。
その由来は折口の少年時代に遡る。
彼のエロティックで、謎めいた短歌を、作られた当時の彼の人生に当てはめることで、短歌から彼の切ない息遣いまで伝わってくるように読み込んでいく。
短歌を読むということはこういうことなのだ、と生々しく教えてくれる。
著者は、釋迢空名で発表された小説「死者の書」を、かつての同性の恋人、藤無染に対する鎮魂の書と捉える。
滋賀津彦=死者=藤無染に対して、鎮魂の衣を織る中将姫=釋迢空と捉えるのだ。
釋迢空の名の由来を追い、「死者の書」は折口信夫ではなく、釋迢空という出家者の名前でなければならなかったことを明らかにする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
何度チャレンジすれどその度に挫折し且つ諦めきれない本が幾つかある。折口信夫『死者の書』もそのうちの一つで、再チャレンジにあたりまずは人となりに馴染み愛着を持つことから始めようと手にした富岡多恵子の釋超空(折口信夫)論。謎多き超空の生い立ちとその時々に認めた短歌とを照合し解き明かしゆく手管はスリリングに興奮を仰ぐ。キーワードは家族、宗教、同性愛、大阪など。読み終えて朧に攫めた人間像は正に中野重治のいう「うすきび悪さ」で「それが私を誘惑する」のである。増して富岡の超空への執着凄まじく、負けじとうすきび悪い。
この重さを持ち堪え『死者の書』いきます。
著者プロフィール
富岡多惠子の作品





