骨餓身峠死人葛―野坂昭如ルネサンス〈6〉 (岩波現代文庫)

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レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006021177

作品紹介・あらすじ

九州の入海をながめる丘陵の、最も峻嶮な峠「骨餓身」。昭和初期、その奥にある葛炭坑を舞台に繰り広げられる近親相姦の地獄絵、妖しく光る異常な美の世界。磨き上げられた濃密な文体で綴られる野坂文学の極致。衝撃の表題作の他、「人情ふいなーれ」「同行二人」「マイ・ミックスチュア」「当世ますらお団」「ああ奇怪大綬章」「紀元は二千六百年」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 賽の河原。のような。
    炭鉱の町での出来事。どん底の生活、餓えている。
    死人に寄生する葛には、花が咲き、実がなる。
    食欲と性欲は、ヒトのサガである。
    むさぼり喰らうためにだけ子を産み死んでいく。

    街との交流を絶たれた山の、約50年の時の流れが、淡々と書かれている。


    私の意識を超えてしまった。
    正視できない言葉。静止できない文字。
    たぶん、忘れられない。

  • 表題作、はじめは日野日出志の漫画(女を殺してそこに種をまくと美しい花が咲く、という)みたいだな、と思っていたら、兄妹の近親相姦の話になって、そうきたか、と思っているうち、サドの小説みたいな大団円となって、しかも日本の戦前、戦中、戦後史となっていて、独特の詩情があり、まさに傑作。
    他の作品も、この混乱の時代を描いており、作者の精神的ベースはここにあるのだなと、つくづく思う。世の中の価値観が逆転した時代に15歳だったのだから。偽善を憎み、体制を信じない。人の生き抜く姿は醜くても否定しない。
    庶民が時代に翻弄されながらも逞しく生きる姿が、突き放した視点で書かれている。
    文章は、学校の先生だったら確実に赤字で訂正するほどのオリジナリティがあるが、リズムがあって、的確で、上手い。
    選挙に出たり、テレビで歌ったり、討論したり、酔っ払って暴れたりと作品以外のことでさんざん話題になった人だが、それを全てなかったことにしても、小説家として残る人だと思う。
    「同行二人」「マイ・ミックスチュア」「紀元は二千六百年」も良かった。

  • ■表題作 
    「骨餓身峠」という地名のインパクトに負けない、死人葛。白秋の「曼珠沙華」と張る、凄絶な美しさ。野坂文学につきものの兄妹もばっちり(文字通り)絡みます。

    ■人情ふいなーれ
    子どもに駆け落ちされた母親は同級生同士。
    悲惨な状況のはずなのに、なぜか可笑しみを誘う。

    ■マイ・ミックスチュア
    えーと、ネクロフィリアっていうんですか、
    こういう人って古今東西問わず、いるんですね><

    ■当世ますらお団
    結婚詐欺の行く末は? あらら ^^ 
    まあ、こういう一遍もないとね。

    ■ああ奇怪大綬章
    第二の人生もいろいろあるようで。
    リタイアしたら再読したいです。共感誘うものがあるかも。

    ■紀元は二千六百年
    万博間近の釜ヶ崎に身を沈めた男。
    「えらいさんの音頭とるもの」ってフレーズが印象的。

  • まずは「骨餓身峠死人葛」というタイトルだけで脳天ぶち抜かれる。淫靡で艶やかに美しくしかも逞しく。資源生み出す炭坑の閉鎖的でむさくるしい活気の中、屍を糧に妖しく花咲く死人葛。その貪欲な生命力は戦後日本のアナーキーな復興力をも匂わせる。収録作の全部がえげつないほどの図太さに貫かれている。逞しく剥き出しに生きることの美しさと醜さの両極を剥き出しに描ききる。エログロなぞの括りに収まりきる代物ではない。血と肉と本能と純情の迸り。濃密に絡みつく文章に潔く毒されよう。それにしてもあのキャラでこの文体、かっこええな野坂。

  • 蛍の墓で有名な野坂昭如の短編集。

    「骨餓身峠死人葛」
    「人情ふいなーれ」
    「同行二人」
    「マイ・ミックスチュア」
    「当世ますらお団」
    「ああ奇怪大綬章」
    「紀元は二千六百年」


    表題作「骨餓身峠死人葛」の世界はまさに生き地獄。壮絶。
    人間の本能的なところにびんびんくる。

    全体を通して独特の文体で、リズムがあって面白い。

  • 表題作「骨餓身峠死人葛」に母娘百合シーンがありました。というのはさておき、いたるところで絶賛されている表題作は確かに凄まじいものがあるけれど(近親相姦と文字通り死者を喰って生きる生者の修羅場が描かれている)、この凄まじい作品と同時に青春時代を戦争および敗戦直後の混乱期に過ごした中年女性二人による物悲しくもどこかユーモラスな青春回想が綴られる「同行二人」や結婚詐欺をしようと奮闘する非モテ男三人の可笑しく悲しい姿が描かれる「当世ますらお団」のような柔らかい作品の方がなんとなく心に残った。

  • 死人葛は文字通り死人のエネルギーを吸い取る。力のないものから搾取する現象は人間と同じだが、人間は常に弱者であり自然という革命事項から吸い取られるだけの存在なのだ。それを人間はグロテスクと呼び、武器を開発し戦ったのは言うまでもない。

  • 表題作のために購入。夜に布団の中で読んだら、生々しい映像が浮かんで眠れなくなった。でも、それがたまらない。

  • 表題作はバイブル。

  • 嘘みたいだろ、この人火垂るの墓書いた人なんだぜ…ほねがみとうげほとけかずら…読めない…。中々文体に癖があって、久しぶりの読書に選ぶ本としては不適切だったかも。

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プロフィール

1930年、神奈川県鎌倉市生まれ、「アメリカひじき」「火垂るの墓」で直木賞、『同心円』で吉川英治文学賞、『文壇』およびそれに至る文業により泉鏡花文学賞を受賞。2015年、没。

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