遺産相続ゲーム 地獄の喜劇 (岩波現代文庫 文芸 139)

  • 岩波書店 (2008年10月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784006021399

感想・レビュー・書評

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  • 謎めいた館に集められた10人の遺産相続人。10の紙片に分けられた遺言状を手にした彼らは、それらを協力し繋ぎ合わせ「大いなる遺産」を手に入れることはできるか。

    エンデの代表作に挙がる『モモ』や『はてしない物語』の印象を残しながらこの本を手に取ったところ痛い目にあいました。
    育った環境・思想・立場が異なる10人は次第にエゴがぶつかり合い、互いを疑り、恐怖に怯え、やがて想像しえない結末へと突き進んでいきます。人間のシニカルさが全面に出たこの作品に嫌悪を感じる読者も多いようですが、『モモ』や『はてしない物語』よりずっと前にエンデがこの作品を生み出したと思うと色々と考えるものがあります。

    登場人物たちの黒々とした内面が存分に引き出され、彼らにも読者にも容赦のない結末は、個人的に一周回って笑ってしまう愉快さがありました。副題の「地獄の喜劇」は言い得て妙だと思います。

  • 謎の富豪ヨハネス・フィラデルフィアの遺産相続人に指定され、11人の男女が宮殿に集められた。彼らはお互いに面識がなく、誰一人故人のことを知らない。公証人が現れ、遺言が明らかになるが、遺言状は11人に等しく分割されて渡された。どの部分も他の部分と同じだけ重要であり、どれか一つ欠けても全体を理解することはできないという。
    単純に考えれば、全員が「せーの」で自分の分を差し出すだけで、遺言状の内容はすべて明らかになり、全員が相続にありつける。だが、劇中ではよくある推理小説と同じようなことが起こる。つまり、ある者は他の人を騙して遺産を横取りしようと企み、またある者は自分が騙されるのではないかと疑心暗鬼になる。結果として舞台は殺し合いの様相を呈してくる。
    いま世界には、全地球の住人が生きていくのに十分な富と食料がある。したがって、もし人類が互いに助け合うならば、貧困も飢餓も間違いなく解決することができる。じつにシンプルな結論で、論理的には実現可能である。だが、現実には貧困も飢餓もずっとなくならない。
    この作品は、こうした現実をわれわれに突きつける鏡にほかならない。だが、エンデの目的は人々を糾弾することではなかった。この劇を通してわれわれの目を覚まさせ、劇とは異なる結末に導こうとしている。この岩波現代文庫版には同時代ライブラリー版にはなかったもうひとつのエピローグが収録されており、それを読むことでエンデの意図はいっそうはっきりしてくるように思われる。

  • なぜ、遺言状を出しあわなかったのか。
    遺言状を、お金で買って独り占めしようとする人、暴力によってみんなに出させようとした人、出し合って総額をみんなで分け合おうとした人、ねつ造して金もうけをしようとした人、遺言状自体を信用していない人、その他、誠実な人、うそつきな人、人に頼り切りな人、よくわからない人…。いろんな人がいて、いろんな考えがあって。
    遺産は「彼らがお互いに不安を抱かず信頼しあって助け合う心。」それが大きな遺産。
    魔法の館も粋なことをするなとは思うけど、彼らには通じなかった。悲惨な最期となった。

  • 待望の単行本化。
    『はてしない物語』の著者、エンデ氏の寓意戯曲。
    見知らぬ互いへの不信、己の利益追求の結果、破滅してゆく10人の相続人達の物語。
    エンデ氏は自身でこの物語の不完全性・完成度の低さを語っているが、私は読みやすく、楽しめるものでした。
    これといった中心人物――主人公がおらず、誰もが中心人物で、誰もが主人公ではない。投網のように暗示されている数々の隠喩・暗喩。『アガメムノーン』や黙示録的風景が示唆する破滅の兆候に、読んでいて戦慄する。そして気付かない・気付いても見ない/言わない人々の姿は悲劇的でもあり、喜劇的でもある。
    個人的にはアレクサンドラ男爵夫人がお気に入り。自身の破滅に気付き、“それゆえに”自身の悲劇を演じようとし、悲劇になれない。しかし、芸術性を愛する、凛とした姿勢が魅力的。

  • 遺産をもらうために集まってきた人々、よりたくさんもらうために足を引っ張りあう。
    会話劇なので読みづらいが、おもしろかった。

  • エンデ初期の戯曲。悲劇的結末に向かって加速しつつ滑り堕ちていく描写はやはり絶品。作者本人よる詳細な解説もつけてあり、エンデの作品の中ではわかりやすい部類では。
    のちの作品に出てくるキャラクターや場面を彷彿とさせる場面もあり、このあたりは初期作品ならではというところか。

  • 展開にわくわく。
    台詞にわくわく。
    ト書きにわくわく。
    まさに「地獄の喜劇」。

  • 戯曲だからかさくさく読める。
    各キャラクターがいっそ潔いほど典型的。傲慢強欲な保険会社社長だったり、悪知恵働く嘘つきだけれど愚直さには弱い娘だったり、夫に従順で娘を自分の価値観で縛り付ける母/妻であったり。生真面目な女教師は一度自身の価値を認められると、途端に自尊心の高さを露呈して冷静な判断ができなくなる。盲目のアンナは弱い人の心を掴み操るのがうまい。将軍はやはり猪突猛進で、前科者さんが社長と教師の自尊心を突いて彼らをだまくらかす様などは胸がすく。
    反面教師がよりどりみどりという点で、とても良い作品だと思う。

    アレクサンドラの電波とゼバスティアンの愚直さ、召使いのアントーンの爺加減は中々よい。

    付録の「演出上の注意点」「作者ノート」まででひとつの作品。ここまで読まないと中途半端な気分で終わる。

  • エンデの中でも『地獄の喜劇』とよばれる戯曲。
    戯曲だからこそのおもしろさ、読めば読むほど登場人物の性格とか姿が見えてくる、一つの戯曲からたくさんいろんな人に出会える作品。
    最後に、エンデ自身の作品に対する思いや解説、実際の演出効果などの解説もあるのも、魅力の一つ。

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