増補 日本美術を見る眼 東と西の出会い (岩波現代文庫 文芸 158)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006021580

作品紹介・あらすじ

西洋とは違う日本独特の美学とは何か?西洋美術史の第一人者で日本美術にも確かな知見を持つ著者が、広い視野から西洋と日本の美術を比較し、日本人の美意識の特質を浮び上がらせる、卓越した比較文化論。近代における西洋と日本の文化交流がそれぞれの美術にもたらした影響にも言及。美術から日本人の精神文化の神髄にせまる最新のエッセイ二本を増補。

感想・レビュー・書評

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  • 西洋美術と日本美術を対比させる中で、日本人のものの感じ方にも迫っている本。
    筆者によれば、日本美術はには西洋と比較し以下のような特徴がある。
    ・視点が一点ではない、複眼的。
    ・対象を切り取り、他を捨象している。樹木の一部分だけを描いたり、背景を金にするなど。
    ・日本では「美」は対象に備わっている特殊な性質ではなくて、対象に触発された心の世界の問題、感じ方の問題。
    ・四季や絵巻など、うつろうものを枠にはめずに表現。西洋では一コマ一コマ切り取っている。
    ・文字も美術として絵画の中に散らされている。
    日本美術が西洋に与えた影響についての論考も面白い。

  • 小さな島国の日本と、ざっくりとした西洋という大きな地域を、単純比較することはできないけれど。

    日本文化の移ろいによせる美学。
    枝垂れのモチーフ。
    ジャポニズムの与えた影響。
    風神雷神図屏風裏に描かれた酒井抱一の夏秋草図。

    日本の美術がますます好きになる。
    日本人で良かったと思う。

  • こういう本は大事だと思う。

  • 2024.01.26 日本美術と西洋美術の違いがとてもわかりやすく書かれていてよく理解できた。

  • 西洋美術史の大家である高階秀爾による秀逸な日本美術論である。西洋美術との対比において日本美術の特質を鮮やかに浮き彫りにしており、この点は他のレビュワーが詳しく紹介している通りだ。統一的な空間構成の不在、余計なものを切り捨てる「否定の美学」、美術作品と生活空間の連続性、式年遷宮に代表される「かた」の継承などなど、豊富かつ適切な題材をもとにシャープな議論を展開している。外国人に分かり易く日本美術を説明するにはどうすればいいかという著者年来の課題意識が結実した名著である。

    だが本書の意義はそれにとどまらない。むしろ評者が感銘を受けたのは、「東と西の出会い」というサブタイトルに示された東西の美術様式の相互影響というテーマだ。画面構成の新しさ、デッザンの妙、色彩の輝きなど、浮世絵の斬新な造形的表現が印象派の画家達を熱狂させたのは周知のことだが、それは単に外から与えられた「範例」としてよりも、むしろ彼ら自身の内部にあったものを表現するための「触媒」としてであったと著者は言う。従ってそれは「影響」というより「出会い」であり、しかも「必然的」な出会いであったと。

    「受け手の方にその準備がなければ、いかに新しいものがもたらされたとしても、それだけでは実を結ばない・・・遠近法や明暗法などによって支えられた現実再現の美学がなお確固たる権威を保っていたあいだは日本は所詮単なる異国であった。その西欧の美学そのものが大きく揺らぎ始めた時、はじめて日本美術は強い「影響力」を持つようになった。」

    著者の主張は「ジャポニズム」が現代美術に与えた「影響」のみを過大視することの一面性をつくものだが、逆に言えば、単なるエキゾチズムではない、その普遍的価値を正当に位置づけたものとして高く評価できる。異文化の「影響」とは何か、その真の意味について考えさせられるとともに、海外から次々と新たな美術様式が流入し、それらを自己の内なる欲求に照らし、深い次元で消化し、血肉化することのないまま「様々なる意匠」が並存する日本の文化受容のあり方を反省させられる。

  • 記録

  • 内容的に発見が多かったです。それに、このひとの文章は、主張が明確で、文章構成が論理的で、読んでて気持ちいい。自分の思考回路もすっきりした気がしました。【2020年12月15日読了】

  • 西洋絵画・美術の勉強はするけれど,日本人でありながら,日本伸びについて無頓着すぎた。これは海外生活をするとどうしても「日本人としての自分」に向き合わざるを得ないことが多く,避けて通れない命題になっていた。本書はそのためのいいガイドになった。

  • 確かに妙な絵である。のっぺりとしていて奥行きがない。私の印象はそこで止まってしまう。ところが高階秀爾の眼は画家の手法を解析し、西洋美術との視座の異なりにまで及ぶ。専門家とは「見る世界」を広げてくれる人物であることがよくわかる。
    https://sessendo.blogspot.jp/2018/04/blog-post_77.html

  • セザンヌ、モネ、ゴッホなどの西洋美術と、
    日本の美術との対比させたり、ジャポニズムを考察したり、
    日本美術に対する立体的な論説を建てようとしている。
    ジャポニズムでは、ゴッホの広重の梅の写真がある。
    多色刷りでないのが残念です。

    絵の中に、文字を埋め込む手法の例をしることができた。
    日本に限らず、世界の芸術を考える出発点になればよい。

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著者プロフィール

高階 秀爾(たかしな・しゅうじ):1932年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。1954ー59年、フランス政府招聘留学生として渡仏。国立西洋美術館館長、日本芸術院院長、大原美術館館長を歴任。現在、東京大学名誉教授、日本芸術院院長。専門はルネサンス以降の西洋美術史であるが、日本美術、西洋の文学・精神史についての造詣も深い。長年にわたり、広く日本のさまざまな美術史のシーンを牽引してきた。主著に『ルネッサンスの光と闇』(中公文庫、芸術選奨)、『名画を見る眼』(岩波新書)、『日本人にとって美しさとは何か』『ヨーロッパ近代芸術論』(以上、筑摩書房)、『近代絵画史』(中公新書)など。エドガー・ウィント『芸術の狂気』、ケネス・クラーク『ザ・ヌード』など翻訳も数多く手がける。

「2024年 『エラスムス 闘う人文主義者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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