戦艦武蔵ノート (岩波現代文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006021726

作品紹介・あらすじ

「嘘ついてやがら。」自分がみた、本当の戦争を伝えるためにこそ、「武蔵」を書くのだ-。厖大な物資と人命をかけて造られた史上最大の戦艦「武蔵」。その建造から沈没に至るまでを支えた人々の巨大なエネルギーとは、一体なんだったのか。作家を突き動かした『戦艦武蔵』執筆の経緯を綿密にたどる取材日記。

感想・レビュー・書評

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  • この本は、吉村昭が「戦艦武蔵」を執筆する際にその建造に携わった人や乗組員、建造された造船所のあった長崎の市民などから聞き取り調査をした記録である。

    取材は昭和40年頃に行われた。終戦から20年という時期なので、現在とは違い戦争中既に大人でそれなりの年齢や地位に就いていた人がまだ健在だった。
    そのため、戦艦武蔵の建造や沈没時の様子はもちろんのこと、戦争中10代の少年だった作者自身の当時の記憶や戦争に対する思いが記されている。

    私は、戦艦武蔵の建造の過程や進水、沈没時の様子も然ることながら、戦争中における庶民の中に漂っていた空気や、戦中戦後の新聞やラジオ等の報道のギャップ、そしてなぜ戦争に突入したのか、なぜ敗色濃厚なのにすぐ終わらせなかったのか、などを作者自身が分析しているところが興味深かった。

  • 本当におもしろいなと思うのは、執筆当時のメインストリームの思想に対する懐疑が著作の動機となるところだ。吉村昭が少年期から青年期にかけて体感した時代の空気、誰も彼もが戦争に積極的に参加し、憲兵と同じくらい隣組が怖かった時代の空気。それらが戦後に「本心は戦争に反対だった」と否定されていることへの懐疑から始まることだ。その回答は戦艦武蔵の建造を通して徐々に見えてくる。人々が武蔵の建造と運用を通じて真剣に戦争に参加したこと、また没入したことを見据えることで、はじめて反戦を語ることができる。正直に戦前戦中の国民のエネルギーを描写するだけで、軍国主義者だの戦前回帰だのとレッテルが貼られかねない昭和40年代。戦争の悲惨さを真に伝えるために誠実に事実と向き合おうとした軌跡が、また吉村昭の記録文学たる所以が、戦艦武蔵ノートとしてまとめられている。

  • 吉村昭の、史実への向き合い方、小説を書くことへの姿勢、人とのつながりに対する信念が、とてもよく分かる。戦艦武蔵を読み、次いでこの本を読んだのだが、そのあと武蔵を再読するのもいいかもしれない。
    でも、戦争に引っ張られるから怖い。
    すさまじいエネルギーが行間からこちらを覗き込んでいる。武蔵が沈んでもなお、それはじっとこちらを見ている。
    もう少し、戦争の視線から離れてみて、落ち着いたらまた読んでみた方がいいかもなぁ。

  • 名著「戦艦武蔵」執筆時の取材ノート。当時まだ無名だった著者の立ち位置や心境、また戦争と戦後への思いが綴られる。軍艦武蔵の輪郭が明らかになってゆく興味深い取材日記と合わせて、名作の裏側はこうなっていたのかと読み飽きなかった。造船という膨大な知識を要する分野に門外漢として立ち向かった姿勢は、大きな殻を破って新境地を開いた成功譚として結実し、それ自体が小説的な内容。出版後、著者が取材した関係者たちが20数年ぶりに一堂に集う場面は、小説の副産物としてはあまりに有意義な出会い(再会)で印象的だった。

  • 小説が出来ていくまで、小説家・吉村昭という人に迫れたような気がして、何だか幸せ!

  • [ 内容 ]
    「嘘ついてやがら。」
    自分がみた、本当の戦争を伝えるためにこそ、「武蔵」を書くのだ―。
    厖大な物資と人命をかけて造られた史上最大の戦艦「武蔵」。
    その建造から沈没に至るまでを支えた人々の巨大なエネルギーとは、一体なんだったのか。
    作家を突き動かした『戦艦武蔵』執筆の経緯を綿密にたどる取材日記。

    [ 目次 ]
    戦艦武蔵ノート
    城下町の夜
    下士官の手記
    消えた「武蔵」

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 「戦艦武蔵」執筆の取材ノート。小説の方と間違えて借りてしまったので、原作を未読だったりするが、十分面白かった。
    一本の小説を書くための勉強量と取材量に敬服。ルポルタージュは儲からないというけどホントそうだ。

  • ブログに掲載しました。
    「戦争は男という種族が生み出した巨大なエネルギー」という戦争観
    http://boketen.seesaa.net/

  • (チラ見!/文庫)

  • 小説『戦艦武蔵』執筆の経緯をたどる取材日記。
    小説よりも武蔵の生存者の証言、手記がところどころ紹介してあって興味深い。著者自身が描いた図版も貴重。取材に対する執念が凄い。

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著者プロフィール

吉村 昭(よしむら あきら)
1927年5月1日 - 2006年7月31日
東京日暮里生まれ。学習院大学中退。在学中、大学の文芸部で知り合った津村節子と結婚。
1966年『星への旅』で太宰治賞、1972年『深海の使者』で文藝春秋読者賞、1973年『戦艦武蔵』『関東大震災』など一連のドキュメント作品で第21回菊池寛賞、1979年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、1985年『冷い夏、熱い夏』で毎日芸術賞、同年『破獄』で讀賣文学賞および芸術選奨文部大臣賞、1987年日本芸術院賞、1994年『天狗争乱』で大佛次郎賞をそれぞれ受賞。吉川英治文学賞、オール読物新人賞、大宅壮一ノンフィクション賞、新田次郎文学賞、太宰治賞、大佛次郎賞などの選考委員も務めた。
徹底した資料調査・関係者インタビューを背景にした戦史小説・ノンフィクションで、極めて高い評価を得ている。上記受賞作のほか、三毛別羆事件を題材にした『羆嵐』が熊害が起こるたび注目され、代表作の一つとみなされる。『三陸海岸大津波』は2011年の東日本大震災によって注目を集め再評価を受け、ベストセラーとなった。

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