日記をつける (岩波現代文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006021795

作品紹介・あらすじ

日記は長く難しく書くものではない。ちょこっと気軽につけるもの。小さな積み重ねから、つける人の人生がみえてくる。つけたくないときにも、そばにある。忘れてしまうものも、記憶してくれる。様々な文学作品から日記をめぐる情景をひきつつ、日記のつけかた、広がりかた、その楽しみかたをやさしく説く。

感想・レビュー・書評

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  • 日記が必ずつけたくなります。
    日記をつけることが、どれだけ楽しいことなのか、日記に対する愛が溢れています。
    日記をつけることは、ひとりになり、自分に向き合い、自分があることを感じとりながら、最小の文字に思いをのせること。感じたことも、思ったことも、自分のなかにとどめる、内側のひとときをもつことを大切にすること。
    まるで、自分の内側には宇宙が広がっていて、そこに散らばる星々を繋げるような感覚だな、なんて思いました。

    新しい年が始まると日記がつけたくなるわたし。
    形から入っちゃうので、3年日記やら5年日記に手を出すわたし。
    最初は張り切っていっぱい書くわたし。
    そして、三日坊主で今年が始まったばかりなのに日記を終えてしまうわたし……
    そんな世の中の、日記三日坊主さんたちのやりがちな過ちをちゃんと見透かしてる著者さん。

    日記はちょこっとつけるものなんです。

  • 現代詩人であり随筆家である荒川洋治氏がやさしく説く『日記学』。

    小学校時代からずっと日記をつけている著者だからこそ書ける日記をめぐる情景をすくい取り、あれこれを綴る。日記のつけかた、日記のことば、日記のつける順序等シャープな視点で日記を解剖した指南書。

    日記…と、ひとことで言っても、子どもの頃の夏休みの絵日記、中学生になれば交換日記、異国の地でのひとコマを記した旅日記、昨今のブログまで時代・年齢・状況によって、その姿を変える。

    まず「古今東西、人はどんな日記をつけてきたのか?」をテーマに文学者の日記を渉猟する。
    所謂「日記文学」の考察。
    武田百合子(武田泰淳の妻)は、移住先の富士山麓の山小屋での13年間にわたる家族の日々の営みをのびのびとした筆致で記した。内田百閒は齢八十になっても食への欲求が尽きることなく毎夜の献立を几帳面に記載。美味だったものには「○」、そうでなかったものには「×」の評価 まで付けている様子が眼前に浮かび上る。徳富蘆花は恋心のみならず自身の性愛までを大胆に綴る。

    著者の考えに倣えば、日記は残しておかないといけない。散逸四散しないように1ヶ所に保管しておく。何かの拍子に過去の自身に確認を取らないといけない時に日記の出番となる。そう、日記は集積してこそ、その効力を発揮する。

    そのことは本書表題の『日記をつける』の「つける」にもつながる。では、なぜ「日記をつける」なのか?著者は『「つける」は“しるしをつける” “しみをつける”がそうであるように、あとあとまで残す感じがある。いつまでも残るようにつける。ゆえに日記は「つける」なのだ』と導く。

    我が意を得たのは「人間は疲れると、文章中に「とても」「たいへん」「非常に」「いちばん」「ものすごく」等の副詞が多くなる。激しく首肯。

    僕も定期的に日記を無性につけたくなり、それは大体1年ぐらい続く。そして、何もなかったようにある日静かに日記帳をほっぽり出す。その間、必ず惰性で書く時が現れ、字は乱れ、描写はぞんざいになる。とにかく仔細に書くのが面倒くさくなる。

    その「しんどい時の日記との向き合い方」について言及する。内面を綴るのはしんどい。それを避けようとする。

    著者は以下の見解を示す。
    (日記では)自分をよく見せたりする。本当はこんなことではなく、別のことで辛かったのにその別のことをつける勇気はない。義務もない。日記は自分のものだから。感情面の出来事についてはいつもほんのちょっとだけ事実とずれたものになっている。だから、本当のことはちょっとだけかけ離れれたところにあるのだ。そう思えば元気も出る。日記への疑いの半分は消える。

    まぁ、日記なんて書きたいと思ったことない方にとっては関心外でしょう。もし「マツコの知らない世界」で、「日記の世界」を取り上げるなら、誰をさしおいても著者だと断言できるぐらい『日記を科学』している。実用性が高く、日記が頓挫しそうになった時に必ず下支えしてくれる一冊。

  • タイトル通り、日記について。

    著者は小学生の頃から日記を書き続けている達人である。
    特に続けるためのノウハウだとか、日記の書き方についてこうすれば大丈夫、などと言及せず、こんな日記もある、こんな書き方もある。と日記の自由さと身近さについてつらつらと述べる日記についての回想に近い。
    自分はどんな日記にしようかなと思いつつ、まずは続けられるようにしなければ…。


    ●面白かった話
    ・日本と欧米の書き出しの違い
    日本は天気の記録をよく残す
    欧米は印象深った話を中心にすることが多い(と感じる)

    ・日記をつける
    まずつけてみる。かたちにこだわらない。元旦で意気込むと力が入るので、中途半端な日、月曜より水曜や金曜日に、始めてみたほうが良いと思う。
    また、文字を升目に合わせて小さく書くと大変なので、少し粗っぽく細かくしない方がよい。
    気持ちを書くときはどんな風にまで詳細を書くと表記を工夫したりして日記をつけることに疲れるので、まずはシンプルな気持ちを書くくらいが続くポイント。
    また、時計(時系列)に沿って書くと書きやすいし思い出しやすい。

    ・著者の日記を書くことに対する意見
    →1日を復習することで元気をつけたい。暗くなりたくはない。(日記をつけることで)自分を愛していることに変わりはないと思う。
    →記録のための日記も面白い。1年のうちの10大ニュースをつけるのが好きだった
    →その人の為には記憶しなくてもいいが、あることを覚えていることで、他人を幸福にすることはある。

  • 多くの既刊の日記エッセイを例に、日記のつけ方や向き合い方を説いた1冊。
    私自身も日記をつけて10年くらい。本来日記はプライベートの極みのような作業だと思っているので他人様の日記を覗き見する心持ちで読んだ。本書から感じたことは、結局日記は自由に、気楽に、好きに書いていいということ。
    と併せて、飽き症の自分がなぜ日記をつけ続けるのかも考えてみた。とりとめのない日常や考えを書くと、まず言葉にすることで心の整理がつく、客観的になれる。そして後々見返した時に何気ない一文から、その時の思い出が一気に甦る。楽しくなる、嬉しくなる、悲しくなる、苦しくなる、悶絶する(笑)。そして最後は必ず笑えてくる。
    そんなものすごく個人的なヒトトキのために、これからも日記をつけようと改めて思えた。

  • そっと丁寧に日記と言う輪郭をなぞってみる。
    そんな感覚の本です。

    これもまた言葉の在り方で、対話する為でもなく
    営みとしてあるような言葉たち。
    夜、街並みに生活の明かりが灯っていると安心するような形で
    ここの文を見ているとほっとする。

    ブログのところだけ少し、テンション高く荒ぶっているのが
    またほほえましい。

  • つまるところ日記は自由な発想でつけて良い。
    物語の絵が浮かぶように日記をつけよう

  • 読んでいて面白い日記を書きたくて久しぶりに読んでみたが、前に読んだ時の評価は正しかった。
    情緒的な紹介文ばかりで参考にならない。
    今ひとつ。

  • 作家や画家などの日記を引き合いに出しながら、日記を「つける」ことについて詩人でもある著者が語ったもの。ここで紹介されているいくつかの日記を読んでみたくなった。

  • 「興味を持つ」ということは、いったん<ことば>になるということである。というフレーズが印象的。読んだ本の感想も日記の範疇と言えるのかどうかわからないが、自分の記録である事は間違いない。また、いつか振り返る事があった時に何か発見があれば変化や成長を感じる事もできるだろうし、気負わずにやっていこうかと思う。

  •  この本を読んだら、そうそう下手なことを感想として書くことは出来ない。
     著者の幼年時代の日記や、先人たちが残したものを参照しながら、日記をつけることの味わいや、どのような日記を書くべきかという方法論などが書かれている。さらには、日記をつけることを越えて、文章を書くことの意味やそれに伴う責任についても触れられている。
     僕は本を読んだときの感想を残すために、ブクログを使い始めた。紙に書くのではなく、なぜオンラインに記録を残すことにしたかというと、一つは整理がしやすかったのと、もう一つはやはり誰かにみてもらいたかったからだ。
     しかし、匿名のままで、校正も不十分なままに感想を書き続けることは、やはり不誠実なことかもしれない。不誠実であるということを自覚して、恥を感じながら細々と書き残すことを、著者は許してくれるだろうか。

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著者プロフィール

荒川洋治
一九四九 (昭和二四) 年、福井県生まれ。現代詩作家。早稲田大学第一文学部文芸科を卒業。七五年の詩集『水駅』でH氏賞を受賞。『渡世』で高見順賞、『空中の茱萸』で読売文学賞、『心理』で萩原朔太郎賞、『北山十八間戸』で鮎川信夫賞、評論集『文芸時評という感想』で小林秀雄賞、『過去をもつ人』で毎日出版文化賞書評賞を受賞。エッセイ集に『文学は実学である』など。二〇〇五年、新潮創刊一〇〇周年記念『名短篇』の編集長をつとめた。一七年より、川端康成文学賞選考委員。一九年、恩賜賞・日本芸術院賞を受賞。日本芸術院会員。

「2023年 『文庫の読書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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