- 岩波書店 (2010年12月16日発売)
本棚登録 : 45人
感想 : 5件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (430ページ) / ISBN・EAN: 9784006021818
みんなの感想まとめ
多彩なエピソードを通じて、堀口大學の魅力的な人生と創作の背景を探ることができる作品である。著者は、堀口の詩的世界に引き込まれた読者が興味を持つように、彼の人間性や経験を丁寧に掘り下げている。堀口の若き...
感想・レビュー・書評
-
先日読んだグウェン・ラヴェラ『ダーウィン家の人々』の後ろの既刊案内に掲載されていたので、気になって手に取った本。
堀口大學の名は、高校生の頃に詩集『月光とピエロ』で知り、その浪漫チックで硬質で優雅な世界に引きつけられたことがあった。訳詩集『月下の一群』を読んだのはずっと後。そういう世界を作る詩人の、人間としての姿など知らなくてもいいとは思うものの、どういう爺さま(聞き書き当時)がああいった詩を作ったかにもやはりちょっと興味があって、のぞけるのならのぞいてみようとページを開いた。
堀口大學は、最初からああいう西洋的なイメージで創作していたわけではなく、もとは与謝野晶子・鉄幹の弟子で、佐藤春夫が同門という、短歌の徒だったというのに驚いた。そこから出発し、大学では官僚の道に乗り損ねて文学に遊び、外交官の父に伴われてフランス語を学びつつ、欧米諸国を漫遊したという。ジャン・コクトーやアポリネール、マリー・ローランサンと親交を結び、「貧乏詩人」と自らをおっしゃるものの、前半生は華麗な放蕩人生(といってもいいと思う)である。豊かな和語と漢語とカタカナ名詞の絶妙なブレンドと、ナマのエロスを描いていても下品じゃない色気を発する、堀口大學の詩の素がとめどなく聞き出されている。
ゆるやかな色気とダンディズムと教養のかたまりのような、堀口大學の人生のあれこれを聞き出すというのは、よほど腕に覚えのある人間しか太刀打ちできないと思うけど、聞き手である関さんの、この海千山千(小ずるいという意味ではなくて)の爺さま相手に、丁々発止とはいかないまでも、幅広いエピソードを聞き出す手腕がお見事。それをまとめる手腕がまた一級品。ついでにいえば、関さんについた赤ペン先生も超一級のようです(笑)が、最後はやはり、関さんのご努力に尽きると思う。
とりとめのない年寄りの昔話(とびきりゴージャスだけど)に終わらせず、メリハリの効いた編集がされており、堀口大學の作品集としても、バイオグラフィーとしても楽しめる。あとがきから解説までも、とばし読みさせずにきっちり楽しめる本に仕上がっていて、この☆の数かと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フィクサーは丸谷才一。『日本の鶯』というタイトルも、丸谷の命名。文庫版解説も丸谷。
なぜ「日本の鶯」なのか? 丸谷の解説では、その理由も明かされている。アヴァンチュールは、堀口23歳、マリー・ローランサン30歳の時のこと。マリーの言うウグイスは、日本ならツバメのことだろうか?
インタビュー時、堀口は86歳、関容子43歳。訪問は1カ月おきに15回におよんだ。その誘導のうまさに、堀口は相好を崩して話している。文章は、堀口の語りの間に、関の状況説明とプチ解説が挿入されるという、絶妙な構成。日本エッセイストクラブ賞に輝いたのもうなずける。
熱く語られるのは、生涯の友、佐藤春夫との絆。敬愛し心酔する師、与謝野晶子と鉄幹のこと。海外での生活のこと。いくつものアヴァンチュール、ローランサンもそのひとり。そしてアポリネール、コクトーのこと。……17歳まで暮らした故郷・長岡のことも。関容子だからこそ、聞き出せたことも多い。
毎回のインタビューを心待ちにして、鼻の下をのばしている大学が見えるようだ。丸谷は関を「語る大学 聞く幼稚園」と呼んだ。その名にはパトロン愛が感じられる。大学同様、丸谷も彼女の術策にはまっているような。
旧版と違い、岩波現代文庫版には、インタビュー当時に撮られた堀口と関のツーショットが載っている。 -
こんな本が国語の教科書だったら、もう少し真剣に勉強したと思う。日本という国もそんなに悪くないと思うのは、こういった先達がいるからだ。それにしても容子ちゃんの書き方は、素晴らしい。日々の勉強がそこかしこに伺われ、相手に対する愛をつくづく感じられる。
-
おもしろく読んだ。解説で丸山才一氏が書かれていることがそのまま、自分の感想となる。著者と大學氏とのツーショットが何もかもを意味しているようですし、関容子にしか果たし得なかった聞き書きであったことも、丸山氏が言われているとおりです。
著者プロフィール
関容子の作品
