- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006021825
作品紹介・あらすじ
樋口一葉の日記をもとに一人称で書かれた評伝。各章冒頭では死に臨んだ一葉の心境が記され過去が追憶される。幼年時代と父母兄弟のこと、萩の舎入塾と半井桃水との出会い、本郷・龍泉での暮らし、名作の執筆と鴎外・露伴らによる絶賛、そして早すぎる死。一葉は今もなお書かれなかった小説の登場人物となって生きている。
感想・レビュー・書評
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樋口一葉研究者による、樋口本人の語りという形式を用いた評伝。職業として求められるものを命がつきるまで書き続けた。運命の荒波に揉まれながら、清濁併せのみながら必死に生きた姿が胸を締め付ける。
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一人称評伝が新鮮だった。一葉の言葉で語られている錯覚にある自分が心地良くもあった。むしろ、一葉以上を感じたかもしれない。和田芳恵という先達があったにしても、膨大な資料が背景にあり、自伝(小説)というより、学術書のようなものかもしれない。
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一人称で書かれた樋口一葉の評伝。想像力の遊びはないし、いちいちに注を付けているから、小説じゃない。
一葉がどんな人だったのかというのは、いろいろ読んでみてもどうも捕らえどころがなくて自分にとっては謎なのだけど、一人称で語られてみると、行き会う人々との齟齬にまみれて「状況と他者とのかかわりによって変化する不安定な自我」(p. 275)として不思議に一貫した記述になっているというのがおもしろい。
あの擬古文体が彼女の中でどのように形成されたのかについて、もうちょっと知りたかったかも。