詩とことば (岩波現代文庫)

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感想 : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006022020

作品紹介・あらすじ

知らないうちに私たちは、生活のなかで、詩のことばを生きている。しかし、詩とは、なにをするものなのか?その意味を考えることは、私たちと世界とのあたらしい関係をひらくことにつながっている。詩をみつめる。詩を呼吸する。詩から飛ぶ。現代詩作家が、詩の生きる時代を照らしつつ、詩という存在について分析する。

感想・レビュー・書評

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  • Ⅰ詩のかたち
    Ⅱ出会い
    Ⅲ詩を生きる
    Ⅳこれからのことば
    の四章から成っています。

    著者の荒川さんは詩の歴史をあまり知らないと述べられていらっしゃいますが、私は高校の教科書程度しか知らなかったのでかなり勉強になりました。

    特に、北原白秋・萩原朔太郎・室生犀星の三人のかたい結びつきなども面白く読めました。
    「これまでの現代詩は『時代という愛情』に包まれていた。戦争があり、闘争があった。政治の季節には政治があった。(中略)いまは時代も、たたかう相手も鮮明ではない。読者もいない。何もなくなったのだ。(中略)だとしたら、ここから本当の詩の歴史がはじまるのかもしれない」以上抜粋。

    「唱歌」   石垣りん
    みえない、朝と夜がこんなに早く入れ替わるのに。
    みえない、父と母が死んでみせてくれたのに。

    みえない、
    私にはそこの所がみえない。
    (くりかえし)

    著者は「詩の歴史も、この父や母のように何も教えてくれない。詩はひとりになった。詩は人が生きるということに、いまとても近づいているのだと思う」と述べられています。

  • 主流《散文の読み方》と違うもの《詩の読み方》を提供する著者は、主流の流れに逆行する。だから読む人にわかるように、特有の読みの習慣から離れてみられるように、一生懸命漕がなければならず、工夫もいる。その困難を親切な心遣いで包むような、フレッシュな軽さが著者にはあって、行分け、くりかえし、リズムなど、詩について知りたかったこと、とくに心のそって行き方が、わかるようになってくる。言語的にも、ゆたかで、ことばがゆたゆたと、たなびくように、引用で登場する詩人から著者、そして読む人へ繋がって育ってゆく心持ちがした。

  • 日本の近代詩/現代詩に的を絞って編まれたかのような詩論。とはいえ、そんなにハードコアなものではなくユルく読み物として読める。そこが良い、という読者も居ればヌルいと感じる読者も居るのだろう。もちろん私は本書から大いに勉強させてもらった。谷川雁に興味を抱く。彼の詩を読んでみようかな……詩に疎い私のような読者をも惹きつける魅力がある、平たい中に豊満さを隠し持った散文が展開されているように思う。まあ、もっと欲を言えば過激な現代詩の実験についても触れて欲しかったとも思うのだが……そのあたり痛し痒しといった感じがある

  • 詩に関する荒川洋治のエッセイ。
    一般的な読者の視点にたって、なぜ現代において詩が読まれなくなったのか、詩が衰退したのかについて言及していた。
    詩は散文とは違って、わかりにくい。書き手その人が現れてくるし、優しく説明されていない。
    こういう詩の難しさを指摘していたけど、実はそれこそが詩の魅力なのだろうなと感じた。
    引用されている詩はよいものばかりで、こういった本を書けるっていうのはそれほど詩に接して、詩を読み、詩を考えなくてはいけないのだろうと感動した。
    もう一回落ち着いて読みたいし、引用されている詩や詩人についても本を読みたいなと感じさせられた。

  •  「詩のことばに象徴されることばがまわりから消えて、これまでなかったようなへんなことがあちこちで起きる。詩は、人間に何かを教えていたのだろう。それを失った人にはわからない、何かを。」<詩のようなことば>全体が遠ざけられているという危機感が、ひしひしと伝わってくる。詩人のエッセイなので、文章にも著者独特のリズムがある。散文を読みながら詩的表現も味わえる。
     詩と散文の違いについて腑に落ちる解説がある。「散文はつくられたものなのである。散文そのものが操作、創作によるものなのだ。それは人間の正直なありさまを打ち消すもの、おしころすものだから、人間の表現とはいえないと思う人は、散文だけではなく詩のことばにも価値を見る」「詩を思うことは、散文を思うことである。散文を思うときには、詩が思われなくてはならない。ぼくはそのように思いたい。」
     この本は<ことばのために>というシリーズの一冊として2004年に刊行されており、これはその文庫化であるが、7年以上経過したことにより、新たに書き下ろされた6編の文章も加えられている。ものをしっかり見る人がいなくなったことに触れた「眼と社会」や、若き日の与謝蕪村がすでに「自由詩」を書いていたことを発見する「君あしたに去りぬ」には、詩のことばが現在も昔も、時代を越えて息づいていることに気付かされてはっとさせられる。
     しかし、最も重要な指摘がなされているのは「詩の被災」である。東日本大震災の後で、大量の詩や歌が書かれていることへの違和が表明されている。「誰も何も言えないのをいいことに増長、拡大。人々の求める方向に流されていったのである。翼賛的な空気もあった。」日本は被災したが、詩も被災し、ことばも被災しているというのだ。ことばは時間をかけて書かれなければならないのに・・・。こんな勇気ある発言をできるのは、やはり著者が「詩とことば」を大切にしている「詩作家」であるからだろう。

  • Ⅰ詩のかたち
    Ⅱ出会い
    Ⅲ詩を生きる
    Ⅳこれからのことば

  • 詩を書きたくなった。

  • 詩もことばも被災したのだ、ということに気づかされた。

  • とても読みやすかった。楽しくもあった。
    「詩」は読まれないもの・・・という正直な感想もありがたかった。
    なぜ、詩を読まなくなったのだろうという自分の気持ちを代弁してくれてるよう。
    散文はわかりやすい。対して詩、俳句、連歌、和歌は難しい。
    解釈を迫られる。数字パズルが好きな人がいるように、囲碁将棋が好きな人がいるように、詩や俳句の解釈が好きな人もいるのだろう。
    でも、それは少数派。
    それでも、この本を読んで、少しは詩に親しむことができそうな気持になった。

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著者プロフィール

一九四九 (昭和二四) 年、福井県生まれ。現代詩作家。早稲田大学第一文学部文芸科を卒業。七五年の詩集『水駅』でH氏賞を受賞。『渡世』で高見順賞、『空中の茱萸』で読売文学賞、『心理』で萩原朔太郎賞、『北山十八間戸』で鮎川信夫賞、評論集『文芸時評という感想』で小林秀雄賞を受賞。エッセイ集に『文学は実学である』など。〇五年、新潮創刊一〇〇周年記念『名短篇』の編集長をつとめた。一七年より、川端康成文学賞選考委員。一九年、恩賜賞・日本芸術院賞を受賞。

「2021年 『昭和の名短篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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