現代語訳 蜻蛉日記 (岩波現代文庫 文芸 225)

  • 岩波書店 (2013年8月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784006022259

みんなの感想まとめ

心の葛藤や人間関係のもつれを描いたこの作品は、平安時代の日常生活を鮮やかに再現しています。主人公は夫の浮気や心移りに悩みながらも、愛情と嫉妬が交錯する複雑な感情を抱えています。道綱の母としての苦悩や、...

感想・レビュー・書評

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  • 国語教師をしている友人から勧められ、こちらの本のレビューに惹かれてお取り寄せ。
    室生犀星の現代語訳でとても分かりやすい。和歌の解説も丁寧。兼家から求婚の文和歌を何度も送られて熱烈アプローチ受けるうちに心を許して長男まで設けたが、夫の心移りへのいじけ具合や正妻時姫とのやり取りがなんともじれったい。確かに自分のところへ行くといいつつ来なかったり、家の前を通った余韻を漂わせて他の女性のところへ行ってしまうのは腹立たしいか。でもせっかく顔を出してくれた時ぐらい素直になればいいのに、キレ気味でつらく当たる態度ばかりだとますます縁遠くなるのだと思うけれど。
    「どうして来ない、訪れない、憎らしい、悲しい、と言って、なぐったりつねったりすりゃいいじゃないか」と兼家に言わせてしまうまでに。
    伏見稲荷神社、賀茂神社などへの参拝の様子は観光している気分。母想いで芸達者な息子の道綱が、心寄せる人への和歌は切ない。想い人が他へ嫁いてしまっても未練を残す息子と自分の不憫さと抱えながらも歳の暮れを迎えて終わる。

    付き合い始めの頃
    人知れず今や今やと待つほどに返り来ぬこそわびしかりけり
    (こっそりと今か今かとお待ちしているのに、御返事のこないのは心細いことです)

    夕ぐれの流れ来るまを待つほどに涙おほゐの川とこそなれ
    (夕ぐれを待っている間にもう涙が頬ににじんできます。会いたくて)

    思ふこと大井の川の夕ぐれは心にもあらず泣かれこそすれ
    (物おもいの多い夕方は、すぐにもかなしくなってまいります)

    『相変わらずはかない日常であることを思うと、こんなことを書きしるしていることも、あるかなきかの感じがして、ちょうど「かげろうの日記」とでも名づけたらよいのであろう。』
    大空をめぐる月日のいく返り今日行く末にあはむとすらむ
    (空ゆく月日が繰り返すように、末長く年月を重ねることだろう)

    道綱から想いを寄せる人への歌
    狭衣のつまも結ばぬ玉の緒の絶えずみ世をやつくさむ
    (着物の褄も結ばれないようなはかない命が、あなたのお心しだいで、耐えようとしたり絶えなかったりして、一生を終えるのでしょうか)

  • 平安時代成立の藤原道綱母著「蜻蛉日記」を室生犀星が現代語訳したもの。…なのだけど。古典とか流麗な文章や風俗を味わうとかより、「家族がこんな暴露本出したら、ツライ…」とドン引きしてしまったのが正直な感情。

    つまることなくサラサラと読めて頭に入ってきてしまう室生犀星訳がうますぎるの、いいのか悪いのか…。

    今風に言うなら、別宅暮らしの総理大臣の第二夫人(※合法)が、自分を軽んじてあちこちに女を作る夫との生活への不満を恨みつらみたっぷりに綴った、暴露本か。

    しかも、本邸にいる第一夫人に「夫が他の女の所に行ってしまって、私たち二人ともかわいそうね」的なしょうもない手紙送りつけたり、10代後半の思春期真っ只中の息子の二回の失恋事情まで事細かに書きまくってるし…。(ここ、本当に、やめてあげてっ…てなった)

    何より、ことあるごとに「こんな私ってかわいそう」を言葉を変えて繰り返し…。

    正直、メンヘラ気質を感じてしまって、私は友達には絶対なれないなあ、きっと。
    まあ、時代が時代なので、今の価値観では測れないところもあるけれど。

    天皇の外戚たる摂関家の家系に生まれ、貴族社会の中心にいた貴公子・藤原兼家。
    彼には既に、何人もの子を産んだ妻・時姫がいた。(後年、あの藤原道長も、この「正妻腹」として生まれる。)
    そんな男の妻の一人となった、貴族としては二流の受領階級出の女性。
    彼女は、一人息子の名前から、後世からは、藤原道綱母と呼ばれる。
    悲しいほどにプライドの高かった彼女は、自分だけを見てくれない夫を恨み、些細なことで口論となり、他の女に嫉妬し、一人息子の成長にすがって溺愛し…。
    そんな20年間を書き綴っています。

    現代で言うと、日記というよりは、過去を思い出して綴った回顧録なのですが、やたらと描写や時期などが細かくて、これがもし事実だとしたら、彼女の記憶力と恨みの深さが怖い…。
    (夫婦間や他の人とやりとりした和歌の掲載が豊富なために、「出版」には夫の兼家の協力…少なくとも理解があったんじゃないかという説もあるけど…)

    でも、小さな構成とも言える文章の並べ方や、読者の共感を引き起こすような言葉のチョイス、時々挟まれる俯瞰的な視点、何度もめぐって時間の経過を悟らせる四季や小物の描写などがいちいち上手くて、見事な物語性を帯びています。

    その物語性のおかげで。
    当時の読者にとっては、「あのセレブの家の内情」的な単純ゴシップとしても面白かっただろうし。
    なにより、基本的に外には出ずに夫の来訪を待ちながら時間を持て余す女性陣の共感を得る読み物として、きっと流行った(だから後世にも残った)んだろうな、というのは、納得してしまう出来。

    当時の風習や行事ごとについての注釈は一切ないので、平安時代の文化をより詳しく知りたい人にはお勧めできません。

    でも、内容の泥っぽさに対して、意外に意外、文体はとてもサラリとした出来なので、胸焼けせずに最後まで読めます。
    これは犀星の仕事におうところが大きいのですが。
    これで文体までねちっこかったら、私は絶対完読してなかったよ…。

    まだ蜻蛉日記を読んだことないけどこれから読みたい人にはお勧めしてみたいです。

  • 元祖ツンギレ?妻の日記。(デレ要素よりギレ要素が濃いです)

    夫である兼家さんは、歴史的にも非常に有名な人物。まぁ、個人的には「花山院の出家」で暗躍する狡い人物のイメージがあるのだけど。

    そんなビジネスの世界では大活躍の夫に対しても、デリカシーねぇヤツだなあと、これ以上ないくらい嫌味を言い放つ道綱母さん。

    でもまあ、新しい女の元に通うのに、自分ちの前を忙しなく通って行くなよ、とは思う。
    あと、行く行く詐欺もヤメて欲しい。
    で、期待を期待と言えず、落胆を落胆と言えないまま、もう会わん方が楽だわ……と思い始めた矢先にヘラっとやってくる兼家さん(笑)
    素直になれたらいいのに、冷たくしてしまう道綱母さんの気持ち、結構分かるよ……。

    この時代は、婚姻には大層な儀式がある割に、関係が切れたっていうのが、通わないという行為にあるからか、分かりにくい。
    現代であれば、離婚届で関係がスッキリ切れてしまって、ある意味では楽なのかもしれない。

    家族の世話はするから、養育費はちゃんと頼みますよ!って言いそう、道綱母さん……。

  • かなり正直に気持ちをぶっちゃけていて、心配になってしまうほど。当時、周りの反応はどうだったのかしら。その分、平安時代を身近に感じられた。


  • 開始:2023/2/20
    終了:2023/3/4

    感想
    宮廷の煌びやかさと人の想いの瞑さ。それでも歌に乗せてしまえばどこか清々しさすら感じさせる。女性の心情の変化はまるで秋の空。

  • 源氏物語の空想的・独善的な男の見方より、この方が真実味がある。が、独りよがりにみえて、興ざめである。物語ではなく日記。

  • 夫・兼家との結婚生活での苦悩やささやかな喜びを描いた、回想録。
    己のプライドの高さゆえに、兼家の浮気が許せず嫉妬に苦悩する。
    現代の恋愛にも通じる文学を、室生犀星の現代語訳で楽しめる。


    熱烈にアプローチしてきたのは向こうなのに、溺れて苦しむ道綱の母の苦悩は、現代の私たちにも痛いくらいわかります。
    自分だけが想っているのかしら、他の誰かと笑っているのかしら、肌を寄せあっているのかしら、と。
    もちろんそんなことは書いてありませんが、文章を読み進めていくうちに、彼女の想いが強く伝わってきます。

    原文は上中下巻に分けられていますが、この本は一冊にまとめてあるので、お手軽に読めると思います。
    個人的には、面白いのは上と中で、感情が下火になりつつある下巻はあまりそそられなかったです。
    勢い余って原文買ってしまいました(笑)

  • 道綱母は女性性そのものなのではないか。受け身で自分勝手な一方で、感受性が豊かで他人に対する思い遣りや同情心が強い。息子への愛情は特別に深い。およそ一般的に女性性と言われるものが、見事にそのまま具現化したようで驚いてしまった。この人の女性としてのあり方に非常に高い普遍性を感じる。
    生活の不安や仕事の煩わしさのない貴族という身分では、人間本性が現れやすいのだろうか。そう考えると平安文学にますます興味が湧いてくる。

  • 和歌の応酬オシャレなメッセージ

    道綱母はクソ
    兼家もクソ
    道綱は純情しょっぱい

  • いまさらかもしれませんが、とてもおもしろかった。
    現代なら「めんどくせぇ」女・・・という感じもする。
    もてあまし気味の兼家もおもしろい。
    すねて可愛げのある女性でもある。
    息子が父と母の間を取り持って右往左往する姿も面白い。
    道綱母が予期したとおり、千年後の今、「門地の高い人の暮らしがどんなだか」よくわかりました。

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著者プロフィール

1889(明治22)年〜1962(昭和37)年、石川県金沢市生まれ。本名、照道。詩人、小説家。父は元加賀藩に仕えた武士だったが、生後数週間で住職・室生真乗の内妻赤井ハツに引き取られる。1904年『北国新聞』俳句欄に句作が掲載され、俳号として「犀星」を使う。1908年、尾山篤二郎らと北辰詩社を結成。1913年に北原白秋に認められ、白秋主宰の『朱欒』に詩が掲載されると、その詩に感動した萩原朔太郎より手紙を受け取り、終生の友となる。
1918年『愛の詩集』『抒情小曲集』刊行。1920年『性に眼覚める頃』刊行。
1934年「あにいもうと」発表。1957年『杏っ子』を刊行、翌年に読売文学賞受賞。
1959年『蜜のあはれ』刊行。1962年、肺癌のため死去。

「2026年 『幻影の都市 室生犀星 憂愁夢幻傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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