「赤毛のアン」の秘密 (岩波現代文庫 文芸 238)

  • 岩波書店 (2014年5月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (334ページ) / ISBN・EAN: 9784006022389

感想・レビュー・書評

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  • この著者は「赤毛のアン」が好きなのかしら?

    のっけのプリンス・エドワード島(P.E.I.) 訪問記において既にネガティヴというか、「赤毛のアン」に書かれている情景と現実との乖離についても、妙に何か他の意図を感じてしまう。

    著者の出自や彼女が歩んだ実生活と、アンをそこまでリンクさせる必要はないのではないかと思う。僕にとっては「赤毛のアン」は小説なのであって、アンの成長を暖かく見守ってゆきたい。(ここまでが、読書中のレビュー)

    読み進めるにしたがって、実はこの著者は「赤毛のアン」をこの世から葬り去りたいとすら思っているのではないかとすら思えてくる。なぜ、アンの物語を著者の実生活に絡めて解釈しなければいけないのか理解不可能である。その解釈も、必ずしも論拠を明らかにしていなくても、または自分勝手な思い込みでる可能性があるのにも拘らず、「明らかである」と断定しきる事に反発を覚える。

    最終章の、日本社会と日本女性についての議論の内容については考えを同じくする所が多いのだが、「赤毛のアン」を絡ませてくる必要性は全くないと思う。

    本名も「赤毛のアンの著者モンゴメリーについて」とか「モンゴメリー研究」とかにすべきであり、「赤毛のアンの秘密」などという題名を付けることに姑息さを感じてしまう。

  • 後半のフェミニズムより、前半のモンゴメリについての方がおもしろかったです。フェミニズムへの伏線だったにしても。
    モンゴメリについての論を読むと、朝ドラの楽しみが増えそうです。朝ドラは、村岡花子の行動にアンを時々混ぜているのが、おもしろいのですが、これにモンゴメリを加えると、どういう展開になるのか、楽しみです。
    私は小学生の時にアンに夢中になりました。涙したところは、やはり何かあったのねと思いました。
    時間軸を考えると、モンゴメリも村岡花子もそして、アンも保守的に見えるのは、それがリアルだったからだと思います。カナダは当時の日本よりは進んでいても、これくらいだと思います。

  • モンゴメリが自殺だった、ということを初めて知って驚いた。

  • 赤毛のアンを夢中で小さい頃読んだ。まさしく、自由で空想好きで、負けず嫌いで、コンプレックスの塊な女の子が学校の勉強でギルバートに勝つ。そして、腹心の友は、美人で女性らしい、自分に対してねたみを抱かないダイアナ。
    大好きなおじいちゃんとおばあちゃんにそだてられていく構図。
    アルプスの少女ハイジを思い出させるような風景。
    憧れの情景。
    まさにそんな世界にのめり込みました。
    だけど、続編からは、どうもあわずにあまり記憶がないのです。
    多分、私は女性である役割や結婚の概念とは離れていたんだと思います。
    アンの時代が、第一次世界大戦の頃だなんて。実はひいおばあちゃんの時代なんだと思うと驚きです。
    そして、近代国家として、男女平等だと思っていた国が実はそうではなかったのも驚きでした。
    家政科の成り立ち、英米文学部の成り立ち、キリスト教、良妻賢母への教育。なるほどなあと歴史の紐がとかれた気がします。
    モンゴメリは最後自殺。自分のあり方、社会の中の自分、持って生まれた性別への意識、葛藤して、自己分裂していったのかと。
    世の中の価値観と個を持つこと。
    時代の変化の波の大きさに改めて驚くと同時に、価値観を改めて見直せるような気がしました。

  • ハードカバーが出た時に一度読んでいるけど、その時の印象で覚えているのは、「モンゴメリの死因は自殺」という、当時の自分にとっての新事実だけ。
    このたびの文庫化で再読してみると、あるじゃないのもっと大事なことが。
    老嬢恐怖。負け犬恐怖。行かず後家になるくらいなら、愛のない結婚も辞さず、愛のない結婚を続け、夫の精神病という破たんは糊塗し、離婚は選ばず死を選ぶ。
    そんなにそんなに結婚が大事だったから、大家族を擁するアンの賛歌を書き続けることができたんですね。
    アンとギルバートの間に会った愛と信頼は、著者にとっては現実に求めも得られもしなかったもの。得られないものを書き続けての、自死。
    傷ましい魂です。

  • ふざけた表題だから、てっきりアンフリークかな・・・と思ったんですが、最初に「あとがき」を読めばよかった。
    それにしても、最終章で初めて・・・おやっ??と思う。日本人少女の心理をこきおろしてる??
    つまり、アン信仰の乙女大人が期待して読むのは危険でしょうね。

  • 祝文庫化

    岩波書店のPR(単行本)
    http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/7/0220210.html

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著者プロフィール

1952年、大阪生まれ。早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻博士課程修了。大阪成蹊女子短期大学、愛知淑徳大学文化創造学部教授をへて、執筆・講演活動に入る。本業のジェンダー・セクシュアリティ論からテレビドラマ、日本の晩婚化・少子化現象まで、幅広く分析を続けている。現在は認定こども園を運営し、幼稚園と保育所の連携についても関心を深めている。
主な著書に『醬油と薔薇の日々』『シュレーディンガーの猫』(いそっぷ社)、『増補版・松田聖子論』『結婚の条件』(朝日文庫)など。

「2020年 『草むらにハイヒール──内から外への欲求』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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