法服の王国――小説裁判官(上) (岩波現代文庫)

著者 :
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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006022730

作品紹介・あらすじ

これまで金融機関や商社での勤務経験を生かしてスケールの大きいベストセラー経済小説を発表してきた著者が新たに挑んだ社会派巨編司法小説。昭和四十年代から始まった人権派裁判官粛清人事=青法協問題(ブルー・パージ)と原発差止め訴訟の二つを軸に、戦後の裁判所の歴史を内側から明らかにする。正義と保身のあいだに揺れる生身の裁判官の人間ドラマ。

感想・レビュー・書評

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  • 小説裁判官の副題通り、22期修習生を中心にした裁判官物語。
    彼らの司法試験合格から、70年代以降の主たる裁判関係、すなわち長沼ナイキ事件、青法協問題、原発訴訟等々が網羅されて、判決要旨等専門的で読み込めない個所もあるが、全体としては以外と読みやすい。
    各裁判所の格付けとか、裁判官の出世コースとか、部外者にはなかなか知りえない内実が詳細に記述され、情報小説としても読むことができる。
    法廷で着る黒の法服も、裁判官用は絹製だが書記官用は木綿生と差別化されているとか。
    あるいは、「売上げ」という隠語があり、毎月各部に回覧される事件処理状況一覧表のことで、処理した事件件数が新規に係属した事件件数を上回っていれば「黒字」、逆の場合は「赤字」というそうだ。処理件数が人事評価の大きな要素となっているとは、裁判官も楽ではない(笑)

  • たしかに産経新聞に掲載されていたとは思えない内容。
     弁護士のブログでけっこう書評がとりあげられているので、検索して探してほしいですが、私的には「こん日」と、何冊かの別冊宝島をすでに読んでいたので、ブルーパージの描写に関しては特に目新しさはなかった。
     左派への人事差別を書いた小説の形としては「沈まぬ太陽」のほうが凄かったから、なんたって支店のないナイロビ→カラチの転勤だったからねえ。
     法服の王国の書評に戻ると、実名が混じっている事件がけっこう何か所もあるので、そもそもの主役たちについてどうしてもモデルを探しちゃうが(弓削→矢口洪一、村木→竹中省吾とか井戸謙一、津崎→草場良八または竹崎博充を適当にごちゃまぜ)、黒澤葉子だけはハッキリとはわからんかった。あんなタイプは現実にいないから。
     あと後藤田正晴と弓削裁判官がちょくちょくあってた設定が描写されてるけど、ホンマにそんなんあったのかなあ。政界のヒロミゴー、前原誠司もおいしい役で登場しています。
     若い法曹には「こん日」で基礎知識を習得した後で読むのをお勧め。

  • 相変わらず見てきたような描写。

    先日読んだ、『裁判官の非情と人情』で紹介されていたので、早速。

    実際の裁判官などはまったく知らず。これはあの人がモデルかとか解説あっても、ピンとこないけど、とにかく引き込まれました。

    福島原発事故を経験した今となっては、当時の原発建設反対運動と、国策、裁判判決のシーンを半ば結果を知った形で読んでるのですが、、、

    戦後20年経った頃に、裁判官になった2人の主人公の40年を追った作品は1000ページの大部。

    お昼の時間も読みふけってます。次は下巻。

  • 投資銀行を舞台にした「獅子のごとく」でも思ったのですが、黒木さんの取材力、リアリティ、緻密さは本当に凄い。今回は裁判所を舞台にした小説ということで、全く知らない世界ではあるものの、あぁきっとこんな感じなんだろうなぁと思わされる生々しさがあります。
    昭和40年から平成18年までと非常に長いスパンでのストーリーで、堅~い感じの裁判官のキャラを含めて重厚長大な感じの1冊です。上巻だけで500ページ…。

    上巻では様々なエピソードが連なっているという印象で、原発問題と裁判所のブルー・パージという軸はあるもののそこまでではなく、キャラ紹介の面もあるのかなと。下巻でのストーリー展開が楽しみです。

  • 黒木亮氏による裁判官を主人公にしたフィクション小説。フィクションではあるが、実際に起きた判例を基にして描かれているので、どこまでがフィクションでどこまでがノンフィクションであるかが分からないほどである。同氏による徹底的な取材に裏打ちされた描写は、驚嘆に値する。
    本書で興味深かったのは、裁判官が行政に対して迎合するような判決を下すことである。長沼ナイキ事件では、自衛隊の違憲性が争点となり、加えて、国側勝訴を判決を下すように担当裁判官に示唆した平賀書簡事件があり、司法権の独立が問題視された。それにもかかわらず、札幌高裁は国側勝訴の判決を下した。
     さらに、裁判官の出世コースに関しても興味深かった。裁判官の出世コースは、司法行政(裁判所の人事や事務処理)を担当する最高裁事務総局に赴任することだ。ここで、司法行政を経たのちに都市圏の裁判所に赴任することが、出世の花道である。
     行政権を監視するための司法権が、行政の意向を汲み取るという状態が起きている、裁判官の現実が本書では描かれている。これは、まるで、上司におべっかするサラリーマンと同じではないかと、思えてならなかった。

  • 戦後の裁判官の歴史というべき本書。法学部の生徒にも読ませているという帯の文句で興味を持って読んでみた。専門的な用語も多いが、基本的にはなんとなく読んでいけば意味は分かる。物語に大きな盛り上がりがあったりとか、謎解きがあるわけでもない。淡々とその時代の雰囲気をあぶりだしていく。ブルーパージなど初めて聞いたが、何となく納得。今の時代に読むとなんだからいろいろと考えさせられるところが多い。今の自民党一強、原発裁判など現在的な視点で読めばとても意味深い。下巻ではどのような大きなうねりになるのか期待大!!

  • まるで実録。
    山崎豊子かと思った。
    専門用語が並ぶかと思いきや、著者がわかりやすく解説も入れる。だから読みやすい。
    裁判官がどのようなものかおぼろげながらわかった気がする。

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著者プロフィール

1957年、北海道生まれ。カイロ・アメリカン大学大学院修士(中東研究科)。都市銀行、証券会社、総合商社を経て2000年、大型シンジケートローンを巡る攻防を描いた『トップ・レフト』でデビュー。著書に『エネルギー』『冬の喝采』『貸し込み』『カラ売り屋』など。英国在住。

「2018年 『鉄のあけぼの 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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