法服の王国――小説裁判官(下) (岩波現代文庫)

著者 :
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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006022747

作品紹介・あらすじ

歪んだ裁判官人事行政のツケで、首相私邸への偽電話事件、女性被告人との情交、当事者からの収賄といった不祥事が噴出する。津崎守は、最高裁調査官、東京地裁の裁判長と順調に出世の階段を上がるが、突然、「招かれざる被告人」が姿を現す。やがて能登の日本海原発二号機訴訟が金沢地裁で結審し、村木健吾裁判長が「世紀の判決」を言い渡す-。

感想・レビュー・書評

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  • 文庫本上下巻合わせて、986頁の大部を読み終えた。
    青法協問題で揺れる1970年代から、原発訴訟の裁判を経て、東日本大震災までの日本の司法を綴った法曹歴史小説と言ってもいいか。
    著者の緻密な取材による司法の内幕の叙述に、いやがおうにも興味を掻き立てられた。
    とりわけ、自らの信念で裁判官人生を貫いた村木健吾の生き方は、清涼感をもたらしてくれる。
    フィクションの人物に、実在の人物が交わり、架空の名前に実在の誰を想定するか、考えながら読むのも一興。
    戦後の司法の危機と言われた激動の時代の裁判官像を描いたこの小説は、法曹関係者ばかりでなく、裁判員制度がある現代、一般の人々も是非読んでおくべき作品ではないか。

  • めちゃくちゃ面白かった。
    戦後の裁判所及び判例の積み重ねの背景にはこんなことがあったのかと大変興味深く読みました。
    私は弁護士をしているので有名判例が書かれた文脈や裁判官という仕事について興味深く読みましたが、法曹関係者以外には専門的すぎたり、そもそも興味持てない部分が多いのではないかと心配になりました。
    すごい取材力と骨太のストーリー、2011年7月からという連載開始のタイミング、産経新聞にて連載というところもすごい。

  • 上巻に同じ。

  • 相変わらず見事な一冊。金融畑出身の著者が、取材の賜物もあろうけど、裁判所の中をここまでリアルに書けるのか。
    著者のエッセイで、日本の裁判所には酷い目にあったので小説にしてやろうと思った、的な記述があったのですが、それをここまで純度の高いストーリーに仕立て上げられるのだから凄いものです。

    下巻は昭和51年から平成23年まで、上巻よりも少し早いペースで進んでいきます。テンポが良く、かなり熱中して読み進められました。
    原発問題や住基ネット訴訟、ブルー・パージ等の現実の出来事を軸にしながらも、舞台裏のドロドロした話として出世を狙う人たちの人事のゴタゴタなんかが出てきます。

    なお、解説は完全なネタバレなので本編読了後に読むのが吉です。

  • 経済小説家が法曹の世界を書く。法曹界の人には申し訳ないのだが、司法試験をパスしたあとのキャリアのことを全く理解していなかったことに気づいた。
    裁判官、弁護士、検察官とたがいのキャリアは全く異なる。本書では二人の裁判官を主人公にし、それぞれのキャリアに切り込む。組織のやっかみや政治の影響などのなか一見異なる裁判官キャリアを積んでいく二人。が、任官後数十年経ったところでまた交錯するのが爽快。
    新聞で何気なく書かれてある諸々の判決は、無味乾燥なものではなく裁判官達の熟考につぐ熟考の末にたどり着いた結晶に見えてくる。

  • 戦後の日本の司法の大きな流れがよく分かる。それとともに、司法と行政、立法の問題も浮き彫りになる。時の政権が国策として裁判に影響を与えるだろうということは分かりきっていると、思っている自分がなんだか怖くなった。というのも、本来の裁判官のあり方が本書の中で色濃く出ているからである。裁判官は本来自分の良心のみに立脚し、何物にも左右されることなく、憲法に立脚し判決を出すものである。その当たり前を、当たり前にやる裁判官が冷遇される現実に恐ろしさを感じた。それがあたりまえでしょとどこか思っている自分にである。
    原発訴訟に関しても、専門的ではあるが、その立証の過程がよくわかる。この流れであれば原告側が勝利するだとうと思うが、勝てない現実。自衛隊と原発は国策だから負けてはならない。こんなことでいいのか。
    そう思い読み進めていって、最後の最後には救いも見えてくる。しかしそれは遅すぎたのか?原発事故は実際のものとして起こってしまった。ではもう遅いのか?
    日本のこれからの裁判官の良心を信じたい。信じなければ、この国はどこに向かってしまうのだろか。

  • 下巻はフィクショナリックに傾いています。
    多分・・・しかりした取材に基づいているのでしょう。
    下巻には「わくわく」感があります。

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