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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784006022839
みんなの感想まとめ
著者の作品を全集として刊行する過程には、多くの労力と複雑な駆け引きが存在します。ノンフィクション的な視点から描かれるこの物語では、出版社間の競争や遺族の思惑、そして木曜会のメンバーたちの情熱が交錯し、...
感想・レビュー・書評
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矢口進也著『漱石全集物語 (岩波現代文庫. 文芸 ; 283)』(岩波書店)
2016.11発行
2020.7.26読了
夏目漱石の全集を巡る出版史というと如何にも好事趣味的だと思われるかもしれないが、岩波書店だけでも14回も全集が発行されているという事実には皆が素直に驚嘆せざるを得ないのではないだろうか。夏目漱石が現代まで読み継がれているのは、もちろん漱石その人の多彩で先見性に富んだ作品群を抜きにして語れないけれど、小宮豊隆や森田草平などの門弟の尽力や岩波茂雄の無分別な情熱を見逃すことは出来ない。夏目伸六の回想を読むと、岩波茂雄はかなりそそっかしい人物だったようだが、人を惹き付けてやまない人望があったようだ。大正から昭和初期における彼らの献身が14回という驚異的な数字を生み出す原動力になったのは間違いない。日本における個人の全集作りは彼らを先駆けにして始まったと言って過言ではないだろう。出版権や商標権を巡る夏目家との争いも、後の時代から見れば、話題性の提供という意味で大きな宣伝効果があったと思われる。そして、何より「漱石文法」と呼ばれる特殊な語法・当て字・用字の不統一が、かえって唯一無二の漱石全集の決定版を作ろうという熱意を容易に冷めやらぬものにしたのではないだろうか。其処には一種の中毒性が備わっていて、校訂の底知れぬ楽しさすら見出せる。決定版への飽くなき探究は、荒正人という鬼神すら生み出してしまった程だ。
ところで、息子の夏目伸六は二つの出版社から夏目漱石全集を発行しているが、いずれの会社も倒産の憂き目にあってしまう。読者からすれば何とも迷惑な話だが、戦後のどさくさで窮乏を極めた時代であったわけだし、同情を禁じ得ない部分もある。特に夏目鏡子未亡人の晩年は相当苦しかったらしく、著者は「著作権期限とは非情なものである(p170)」と述べている。著作権が切れた後の夏目家の暮らしぶりはどういうものだったのだろうか。家督を継いだ長男純一はともかく、次男の伸六は徴兵経験もあったようだし、寂しい人生を歩んだのだろうか。少し興味をそそられた。
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I027686723詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
既に亡くなった著者の作品でも、全集として刊行するには労力がかかる。未発見の原稿を集める努力、原稿を駆り集めて参照する手間、誤字や書き方の癖は再現すべきか改めるべきか。一連の営みは創造的ともいえる。が、そこに著作権は発生しない。
一方で、完成度の高い全集として刊行したい出版社と、生活の糧にするためとりあえず全集を出したい遺族。著作権切れだからと、他社の校訂したテキストをそのまま使って全集を発行する出版社。
著作権の守っているものとは何だろう?と思わされた。
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