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Amazon.co.jp ・本 (246ページ) / ISBN・EAN: 9784006023140
作品紹介・あらすじ
誰もが見ていて,見えている日常から,覆いがはがされ,詩という新しい表現が詩人に訪れる瞬間.詩人は詩をどのように読み,文字を観て,何を感じるのか.美しい日本語で語られた,フィクションとも思われる豊かな経験.単行本に三篇を加え待望の文庫化.解説,片岡義男.
みんなの感想まとめ
日常の中に潜む美しさや深さを、詩的な視点で描き出した作品は、詩人の独自の感性を通じて、読者に新たな発見をもたらします。詩と随筆が交錯する中で、思考が広がり、内面的な探求が促される様子が魅力的です。特に...
感想・レビュー・書評
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初めて読む小池昌代さんの本。
早速、一話目の「鹿を追いかけて」で度肝を抜かれる。文章が上手い。自分がちょうど最近感じていたことを的確に、でも、素人には書けない言葉で書いている。
◯目が合うと、なんとなくこちらが照れてしまう動物がいる。例えば馬、例えば、鹿、ロバや牛、羊の類も、そうである。
白目が目立たない彼らの瞳は、全体が茫洋とした曇りの日の海のようであり、暗いみずたまりのようであり、小さな宇宙のようでもある。人間のように言葉を持たないものだから、みずたまりは意味によって汚されておらず、混沌のままに残されている。彼らが何を思い、何を考えているのかは、私には全くわからないことだ。
しかし、その瞳には、時に、いきものとしての強さではなく、意外な「気の弱さ」のようなものが表れているような気がして、私はそこに惹かれている。
(中略)
そういう瞳の持ち主は、猫などの肉食動物などよりも、むしろ、草食系の動物の方が多いような気がするが、どうだろう。
鹿の目は、私を見ていたのであったが、私を含むこの世界全体を丸く包むようにぼんやりと見ていた。それは言ってみれば、宗教的な瞳だった。
最近、妙に草食動物に会いたいと切迫するよう乞うていたのだが、この視線に会いたかったのだと腑に落ちた。
他にも、ぞわぞわと共感してしまう箇所があった。
◯連詩(複数の人が、交互に詩を書いて繋げていく)の自分の最後の番が終わり、次のものへ手渡したとに、わたしは心から解放されたが、その時、わたしには喜びと、そして同じ位の重さの非常なさみしさがやってきた。私自身が死ぬ瞬間も、こんな感じなのではないかしらと、思わせるような一瞬だった。
なんだか本当に自分が死を迎える一瞬の感じを経験したような感覚に陥った。あー、最期ってこういう感じなんだな、と、わかってしまったというふうに。
白秋が使っていたという例を挙げていた、忝い(かたじけない)という言葉についての考察も面白かった。
◯宇宙を、在らしめている神秘の力に対して、かたじけないと感じたのかもしれない。
◯敗戦後数年までは、同時代の作品の中に、この言葉(かたじけない)がなにげなく使われていたことを思うと、とても不思議な感じがする。
と、まとめている洞察力と感受性にも脱帽した。
正直に言うと、読んでいるて章によって出来にばらつきを感じたり、なんだかちょっと冷たくて怖い人だなと感じて近寄りがたさを感じたりもした。
それでも、「鹿を追いかけて」を読めて良かった。あー、この作家さんを今まで知らなかったのはもったいなかったと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
詩人が、世界を見る視点は面白い。
日常の事柄から、どんどん拡がっていったり、内側に深まっていく思考が興味深かったです。
小池昌代さんはアンソロジーで小説しか読んだことがないと思うのですが、詩も読みたくなりました。
音が感じられる言葉をお書きになるな、と思います。
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岩波「図書」に読み切り連載されていた作品が纏めて読めました。良かったです。詩人の感性、女性の視点で紡がれた詩と本を中軸におかれた随筆。中身も、あとがきも、文庫版あとがきも、また片岡義夫サンの解説も、併せて素晴らしかったです❕文庫の表紙絵の選択、帯にある惹句、デザイン、本一冊の佇まいも本文の秀逸を物語ってくれます。
今頃になって読みましたが、書籍時になかった3篇も加味された、後発ならではの「素敵な」1冊でした -
本屋で自然に手に取ったのは、表題とカバー絵があまりに印象的だったから。このフレーズはギュンター・グラスの詩から取られている。黒雲が迫ってくるなかでも、卵を抱くという自分の仕事を続けるめんどりを、グラスはひそかに胸さわがせながら見ている。井坂洋子さんや、もう亡くなってしまった長田弘さんもそうだけど、詩を書く人たちのエッセイはいつも、世の中にはこれほどすばらしい文学作品があるのかと教えてくれる。
死の瞬間に飛び込んでくる蠅について書いたのはエミリー・ディキンソン。お鍋の中で茹でられている卵のわれめからひらひらと泳ぎだす白いリボンの描写とともに紹介されているクレア・キーガンの短編集も、とても読みたくなった。
でもその中でも印象的なエピソードは、毎年みごとな菊を咲かせていた小池さんの隣人のことで、まるで短編を読むようにぞっとさせ考えさせられる。一粒ずつ大事に味わうようにして読み終わった。 -
詩人が感じる世界を本という手段を通して見れた。
『道』が特に好き。 -
詩人・作家である小池昌代氏の視点でつづられる日常生活が読める。
小池氏の家庭的というか俗っぽいというか親しみやすい一面も読めるし、
さすが言葉を扱うプロだと思わせる、ハッとするような一文も読める。
私は、他の人間はどういう考えで生活しているのか?という視点でエッセイを読むが、その意味で実に有意義な一冊だった。
この本が好きな人におすすめの本
著者プロフィール
小池昌代の作品
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