霧の犬: a dog in the fog (岩波現代文庫 文芸 文芸331)

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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006023317

作品紹介・あらすじ

霧を吸い、吐き出す街。無蓋列車で運ばれる戦車。割れる男、足を洗う女、三本脚の犬——。九十五の断片を連ね、恐怖党の跋扈する異様な世界を現出させる表題作のほか、交合する男女が殺人の記憶を語りあう「カラスアゲハ」、刑吏の視点から〈できごと〉を眺める「アプザイレン」など、終末の風景、滅びの日々を描く中短編四作。解説=沼野充義

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。表題作は中編。霧、という言葉から連想される通り、すべてが曖昧模糊としている。登場人物の名前はすべてひらがな一文字で、不審者の「ん」、刺青師の「て」、スナック「ほ」のママ「な」等としか呼ばれない。犬は三本肢でZ(ズィー)と呼ばれている。「あ」という女にずっと足を洗ってもらっている男が語る、とめどもない町の住人の話。町ではすでにほとんどの人が「逃げるか死ぬか」しており、犬Zは安楽死の薬を配ってまわっている。霧に包まれた街の上空をザトウクジラやエイが泳ぎアメフラシが這う。震災後を思わせる描写、もしかしてこの町はとうの昔に水の底に沈んでいるのかもしれないけど、それでも人は殺されたり死んだりする。ひらがな表記多めの不思議な日本語と相まって不思議な世界観。

    他の短編は「カラスアゲハ」がわりと直接的に震災後の描写が多かった。著者の出身地は宮崎県石巻だそうだ。「アプザイレン」は死刑を執行する男たちの話。「まんげつ」は、すべて平仮名で書かれた掌編。いずれも実験的というか前衛的というか、古い日本語や俗語や方言、さまざまな言葉が入り乱れていて独特だった。


    ※収録
    カラスアゲハ/アプザイレン/まんげつ/霧の犬

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著者プロフィール

1944年宮城県石巻市生まれ。早稲田大学文学部卒。70年、共同通信社入社。北京特派員、ハノイ支局長、編集委員などを経て96年、退社。この間、78年、中国報道で日本新聞協会賞、91年、『自動起床装置』で芥川賞、94年、『もの食う人びと』で講談社ノンフィクション賞受賞。2011年『生首』で中原中也賞、翌年『眼の海』で高見順賞、16年『増補版1★9★3★7』で城山三郎賞を受賞。

「2021年 『月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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