霧の犬 a dog in the fog (岩波現代文庫)

  • 岩波書店 (2021年2月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784006023317

作品紹介・あらすじ

霧を吸い、吐き出す街。無蓋列車で運ばれる戦車。割れる男、足を洗う女、三本脚の犬——。九十五の断片を連ね、恐怖党の跋扈する異様な世界を現出させる表題作のほか、交合する男女が殺人の記憶を語りあう「カラスアゲハ」、刑吏の視点から〈できごと〉を眺める「アプザイレン」など、終末の風景、滅びの日々を描く中短編四作。解説=沼野充義

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。表題作は中編。霧、という言葉から連想される通り、すべてが曖昧模糊としている。登場人物の名前はすべてひらがな一文字で、不審者の「ん」、刺青師の「て」、スナック「ほ」のママ「な」等としか呼ばれない。犬は三本肢でZ(ズィー)と呼ばれている。「あ」という女にずっと足を洗ってもらっている男が語る、とめどもない町の住人の話。町ではすでにほとんどの人が「逃げるか死ぬか」しており、犬Zは安楽死の薬を配ってまわっている。霧に包まれた街の上空をザトウクジラやエイが泳ぎアメフラシが這う。震災後を思わせる描写、もしかしてこの町はとうの昔に水の底に沈んでいるのかもしれないけど、それでも人は殺されたり死んだりする。ひらがな表記多めの不思議な日本語と相まって不思議な世界観。

    他の短編は「カラスアゲハ」がわりと直接的に震災後の描写が多かった。著者の出身地は宮崎県石巻だそうだ。「アプザイレン」は死刑を執行する男たちの話。「まんげつ」は、すべて平仮名で書かれた掌編。いずれも実験的というか前衛的というか、古い日本語や俗語や方言、さまざまな言葉が入り乱れていて独特だった。


    ※収録
    カラスアゲハ/アプザイレン/まんげつ/霧の犬

  • 短編集。

    収録された4作とも、どれも曖昧で霧に覆われたような文章の羅列に最初は辟易しこれは一体何を描いているのか、と手探りしつつ進むうちに思わぬ輪郭手触りに触れてドキリとさせられる。それはあの震災と大津波を思わせる光景であったり、男の眼前、「下」に落ちてくる受刑者の肉体であったり、産まれたばかりの子ヤギを包む胞衣であったり、霧の中から立ち現れる名を削られた人々の影であったりする。

    何とも難しい、曖昧模糊とした世界観。表題作「霧の犬」は解説で沼野氏が書いてあるように、現代(元々の刊行は2014年)の風刺・預言のようにも思う。世界は確固としたものではなく曖昧だ

  • ふむ

  • p.2021/4/30

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著者プロフィール

小説家、ジャーナリスト、詩人。元共同通信記者。宮城県石巻市出身。宮城県石巻高等学校を卒業後、早稲田大学第二文学部社会専修へ進学。同学を卒業後、共同通信社に入社し、北京、ハノイなどで特派員を務めた。北京特派員として派遣されていた1979年には『近代化を進める中国に関する報道』で新聞協会賞を受賞。1991年、外信部次長を務めながら書き上げた『自動起床装置』を発表し第105回芥川賞を受賞。

「2022年 『女声合唱とピアノのための 風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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