- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006030247
感想・レビュー・書評
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p.ⅲ
どういう本を読んだらよかろうか、ということは、一般的には決められません。どういう女を口説いたらよかろうか、という、だれにも通用する標準などあるはずがないのと同じことです。
p.08
読書はまた愛の行為に似ています。社会の全体から切り離されて、あなたはただひとりの相手との関係のみに生きる。
のっけから、引き込まれた。
本を読み、得られる、一種の快感や恍惚はこれかもしれない。
受け身ではないということ。
映画では替え難い満足感を、簡潔な言葉で言い表してくれた事に感謝を述べたい。
(勿論、映画も素晴らしい表現芸術なので、好きには変わりないのだが。)
5章の「本を読まない「読書術」」の中の、
読んだふりで話をして、相手から話を引き出す話の運び方は面白かった。
これはどんなお喋りや会席の場でも通ずるし、
今まで年長者との会話の大半はこれを反射的にやっていた気がする。
相手を乗せて、喋らせて、大いに学ぶ。
博識な方ほど、どんどん流れは止まらないのだから。
それがまた本を読むことに繋がっていくというのだから、面白い。
・知的好奇心の無制限な満足。
・別のもう一つの世界へはいって行くこと。身のまわりの世界からの出発。
・日本語の美しさと魅力を知るということ。
本を読む愉しさは、限りない。
あまりにも格好がよく、ウィットに富んだ
流れるように美しい珠玉の言葉の連続で、
著者の知性に酔ってしまった。
著者の別の本を読んだことがあったが、軽やかさが違う。
高校生へ向けた、からかもしれない。
これはもう、本当に、愉しんで書いたのだろうなぁと伝わってくる、本への愛情が詰まったエッセイ。
読書があまり好きでない方にも、ぜひ読んで貰いたい。
1962年の文章というのに驚き。
まったく色褪せない。
旅をするように、恋をするように。
いつも鞄には森鴎外を潜ませて。。
今日も、新たな出会いを楽しみに、本を愛でましょう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
加藤周一(1919~2008年)氏は、東京帝大医学部卒の医学博士(専門は内科学、血液学)、評論家。上智大学教授、イェール大学講師、ブラウン大学講師、ベルリン自由大学およびミュンヘン大学客員教授、コレージュ・ド・フランス招聘教授、ブリティッシュコロンビア大学教授、立命館大学国際関係学部客員教授、立命館大学国際平和ミュージアム館長などを歴任。北米、欧州各国に在住し、英語、仏語、独語なども操った、戦後日本を代表する国際的知識人の一人。
本書は、1962年に『頭の回転をよくする読書術』(光文社)として刊行されてベストセラーとなり、2000年に岩波現代文庫で復刊されたもの。
本書では、著者の、自然科学から人文科学までの幅広い分野の研究、日本語に留まらない各国言語との接触などの経験に基づいて、おそく読む「精読術」、はやく読む「速読術」、本を読まない「読書術」、外国語の本を読む「解読術」、新聞・雑誌を読む「看破術」、むずかしい本を読む「読破術」という、多角的な視点からの読書術が披露されている。また、もともと口述筆記により作られているため、表現もソフトで非常に読み易い。(丁寧すぎて少々くどさを感じるくらいである)
私はこれまで、『本を読む本』(モーティマー・アドラー他)、『現代読書法』(田中菊雄)、『読書について』(ショウペンハウエル)、『読んでいない本について堂々と語る方法』(ピエール・バイヤール)、『本はどう読むか』(清水幾太郎)、『多読術』(松岡正剛)、『読書力』(斎藤孝)、『本は10冊同時に読め』(成毛眞)等々、古今東西の多数の読書論・読書術の本を読んできて、本書から新たに驚くべき発見があったわけではないが、以下のような気付きはあった。
◆日本語は漢字、ひらがな、カタカナが混じっているので、ページに目を晒すだけで、重要な漢字やカタカナの単語を見つけることができ、速読に役に立つ。
◆たくさんの本を読むためには、一冊ではなく、同時に数冊読むほうがよい。
◆「本を読まない法」の根本は、目的をはっきりさせて、目的に適う本を選び、そのほかの本は一切読まないこと。
◆政治・社会問題を扱った本・雑誌・新聞は、できるだけ違った種類のものを2つ読むこと。
◆読んだことのない本を読んだ振りをしたり、よくわからなかった本を分かった風に語ることは知的「スノビズム」の表れであり、文化の向上のためには大切なことである。
◆難しい本、分からない本は、その本が悪い本か、自分にとって不必要な本である。よく書かれた本で、本当に必要な本であれば、それが難しい、わからないということは本来ないはず。等。
出版から60年を経ても通用する、幅広くオーソドックスな読書術といえる。
(2021年5月了) -
加藤周一、二冊目。(角川ソフィア『文学とは何か』)
買おうと思ったのは丸山眞男についての本で、ふと目に入ったのだけど、まあこの二人が繋がっていて面白い。
「私のこれから会う人がたいていの偉い人でも、鷗外ほどではないのが普通です。」
「鷗外の語るところを中断されるのが、残念なくらい」という筆者。笑った。本当だ。
古典は遅く読む。
現代文学は早く読む。書評を活用する。
何冊も並行読みするべきだ。
経験がなければ「分からない」文章はある。
経験がなくとも「読んだふり」をして情報を引き出すことも大切である。
中でも、自然科学の文章と、文学や哲学の文章の違いを挙げている所が面白かった。
自然科学では、雑誌=今の情報が重要とされる。
文学や哲学は、必ずしも今の情報を重要とはしない、そこに「私」という一人の人の存在がある。
けれど古典だけに重きを置くものではなく、そこには不易流行が混在(語弊があるか)している必要がある。
どれだけの量を読んでも、世界の知の全てを掌握することは最早不可能である。
ならば、何を読むか。どのように読むか。
後書きで、筆者は「日本語を読む」楽しみを挙げているが、何で読むか、も確かに大切だな。
自分の人生を味わうために、重ねていく本が愛おしくなった。 -
色んな人の読書術や”オススメ本に関する書籍には目がないオレですw
本屋にいって特に気になる本が見つからなかったときなどはいつも誰かの読書術に関する本の中で紹介されている本を買ったりします。
数ある読書術の本の中でも加藤周一さんの『読書術』は永久保存版でしょう。オレが言うまでもないことですがw
持っておいて損はないと思います。
・おそく読む「精読術」
・はやく読む「速読術」
・本を読まない「読書術」
・外国語の本を読む「解読術」
・新聞・雑誌を読む「看破術」
・むずかしい本を読む「読破術」
読書の技術としては以上の6つに分けて解説されています。
どのジャンルの本を読むにしてもこれらのうちどれかを参考にできる形になっています。
中でも、
・本を読まない「読書術」
これがおもしろいです。
オレも知り合いから、「一流の教養人になるには、読んでいない本でも読んだことがあるかのように内容を語るスキルが必要だ。」と言われたことを思い出しました。
まあそうなるためには多読した経験という素地が必要なのでしょうが。
とりあえず巷の読書術本と違ってずっと本棚に置いておき、たまに参考にしたくなるような本です。 -
私もいつか、船旅で読書したいと思った次第です♪
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タイトルどおり作者の読書術がつまった一冊。
私が1番気に入ったのは、待たされる時の備えとしてどんな時も本を持ち歩くことを推奨する作者の構えについての表現。例え待たされるとしても、もし鴎外を読めば、待たされている相手は鴎外ほど偉くないのでイライラはしないという作者のユーモアに富んだ表現には思わず膝を打った。また、わかりやすいことは、はっきり表現されたことであり、よく考えられたことである。という箇所も印象に残り、文章を書く際には自分がきちんと理解して書いていないと相手には伝わらないというのは論文を書く際の自分の心に留めておきたい。 -
速読や遅読、古典との付き合い方、難しい本がなぜ難しいか、など様々な視点から「読書」のあり方を説く。
一貫して語られる「難しい本は読まなくてよい」「必要な本であれば自ずから理解できる」という論調には、救われた思いもした。 -
「本の読み方」についての本を何種類かよんでいる。
この本はアメリカ初の「本を読む本」と違い、エッセイ風である。
「本を読む本」はアメリカらしくロジカルであるが、こちらは例として登場する方々が知識人や文学者が多く、もっと人間らしい感じ。
読書の方法として参考になったのは、とくに洋書の読み方。
小林秀雄が原書と翻訳書を2冊かい、辞書をひかずに2冊をくらべてよむ。これを1年やれば早くよめるようになる、と紹介していたそうです。
これはぜひやってみようと思う。
また、古典の読書の効用についても書いてあり、現代でも本を深く理解するためにはその背後にある思想を理解する必要があることを改めてしった。特に海外の文化が違う本については。
最近はビジネス書をよむことが多かったが、また古典も読んでみたいと思うきっかけになった。 -
初版は1962年。内容はほとんど変わっていないのに、内容はひとつも古くないです。
速読の重要性をきちんと指摘しつつ、「急がば回れ」と言い「早く読むために遅く読む本も必要だ」と言われています。つまり、基本となるような古典1冊は、じっくり時間をかけて読むべきで、そうすることで、その関連の本は早く読めるようになる、と書かれています。
非常にオーソドックスで普遍的な内容だと思います。
目新しいことは特には書かれていないでしょう。
でも、実行できている人も(僕を含め)あまりいないのではないかと思います。