女の民俗誌 (岩波現代文庫―社会)

著者 :
  • 岩波書店
4.00
  • (9)
  • (6)
  • (6)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 76
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006030445

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 婚姻・習俗・生活・仕事等につき、女性という切り口でまとめられた論考集。宮本常一が全国各地を訪ね歩き、聞き取りをした結果が、ぎっしり詰まったもので、彼の丹念な調査・行脚に驚嘆するばかりである。本書(特に、「海女たち」「共稼ぎ」)を読めば、「専業主婦」という有り様が、極めて限定された時代の特殊な状況ということがわかる。また、「行商」「出稼ぎと旅」からは、女性が頻繁に連れ立って旅をしていた(させられていた)ことがよくわかり、従来のイメージを覆すだけでなく、ルイス・フロイスの説明を裏付けるものとなっている。

  •  庶民の暮らしというのは、大体表舞台の外に置かれ続けてきた。こと家庭内の役目に従事した女性の実態となるとなおさらである。

     まず谷川健一氏の解説から引用しよう。
    「私は柳田にみちびかれて民俗学の世界に足を踏み入れたのだが、貴族的精神の持主であった柳田の文章からは、庶民の肌のぬくもりというものはあまり感じだれない。私は宮本氏に出会ってはじめて、庶民の生き生きした姿を実感することができた。宮本氏は生まれ育った環境からして、生得の庶民だったから、民俗学者として「庶民の魂」をつかむことは誰よりもうまかった」

     私は民俗学者ではないし、そもそも柳田氏の著作もほとんどまともに読んだことはない。このところ歴史や民俗学に関する書籍を読み漁っているのは、伊勢志摩の海女キャラクター「碧志摩メグ」の公認取り消しや「のうりんポスター事案」などを契機に「いわゆる萌え表現に対する規制」というものがどこから来ているのかに興味を持ったからで、日本における女性の表現がどのようなものであったかという関心だった。
     わが国に文字がもたらされた飛鳥時代から連綿と続く日本の表現の歴史の中で、女性がどのように描かれてきたか、女性の地位がどのようなものであったか、それを知ることに、「萌え規制」を望む感情を読み解くヒントがあるような気がしている(ちなみにまだ答えには至っていない)。
     表現される女性はとりもなおさずその時点での女性の扱いを表すものであって、それを「女性の地位」という形で私はとらえている。

     本書はまさに女性の生き方そのものの記録であるわけで、わずか100年ほどの間に、私達の生活習慣は大きく変わったことを改めて知らしめられる。
     「昔は親の決めた相手と結婚した」「夜這いの習慣があった」等々といった断片的な知識はあっても、それが具体的にどのようなものであったかを、人々はあまり語りたがらないし、風習は地域や時期によって大きく異なる。
     著者は徹底的に歩いて回ることで多くの人々の話を聞いた。祭事だの食生活だのといったことは誰もが気軽に答えるであろうが、性や婚姻といったプライベートなことはなかなか本当のことを語ってもらえない。「濁酒と堕児の話が出てきて、はじめて本当のことが聞けた」というのが著者の弁であるが、そこに至るまでの労苦は想像を絶する。
     そうした労苦を抜きに成果物を拝読し、好奇心を充足できる幸甚を噛み締める次第である。

  • 所在:紀三井寺館1F 請求記号:Browsing
    和医大OPAC→http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=21197

    この国で、名もなき女性たちの歩いてきた「苦難の道」、「その目ざすところはいつも正しかったように思う」、宮本常一はそう言う。

    では、いま叫ばれる"女性の活躍"とは?

    先人たちが来た道を辿りながら、これから行く道を考えてみたい。

  • 2016/2/12購入

  • 日本人女性の社会的役割を古代から現代まで、北から南、果ては海外まで追った一冊。武家だけでなく、庶民の、無名の女性達の記録で、その調査対象の広さには感服した。それはまさに自分の母や祖母、曽祖母の話を聞いているようで、ある意味どのエピソードも「あ、それ聞いたことある」という感じだった。女性は男性に比べて選択肢が少ないとか、社会的弱者だとか言われているものの、冷静に見つめ直してみると、想像以上に女性は柔軟な生活を、つい最近まで送っていたのだということが分かる。歴史観を変える一冊。

  • 古来より女性は抑圧されてきたーなどの、一面的な見方はかわる。ところどころ、泣かせる物語もあり。名もなき庶民たちの貴重な記録。

  • 農村の女たちの生活を明るくする法
    時間にとらわれていないこと
    歌を持つこと

  • 自分がどうしようもなく女性であることを認識し、女子力を女性という存在そのものから考えたかったときに、書店で目にしたので購入

    日本の様様な祭などが女人禁制である理由(男尊女卑)の一考察に、なるほどと思った
    女性からの縁切りが多く離婚率も高かったことは、初めて知った
    女性が服従するだけの存在ではなかったことに、なんだか安心してしまった
    男性との関係を絶つときに、「このたびかぎり」と、女性が男性に足袋をおくったというから、なんとも粋だ

  • 宮本常一、2冊目。良く調べてるなぁ。

  • 宮本常一氏の書いたものの中から、女性に関して書かれたものを集めた一冊。
    女性はたくましい。その一言に尽きるかもしれない。
    各地を回り、綿密な話を聞き取った宮本氏は偉大です。
    いまから同じ話を聞き取ろうと思っても、無理ですもの。
    イメージや思い込みで語られがちな「日本の女性像」の真の姿がここに詰まっています。

    最後の「母の記」は涙ぐみました。

全12件中 1 - 10件を表示

宮本常一の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部 みゆき
レイチェル カー...
三島 由紀夫
有効な右矢印 無効な右矢印

女の民俗誌 (岩波現代文庫―社会)を本棚に登録しているひと

ツイートする