日本の失敗: 「第二の開国」と「大東亜戦争」 (岩波現代文庫 社会 134)

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  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006031343

感想・レビュー・書評

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  • なぜ日本が対米戦争に踏み切り、そして完敗したのかを知りたくて、日本の「失敗」をテーマとする本を探していたところ出会った一冊(松岡正剛の千夜千冊から)。結果的に、とんでもない傑作に出会った。
    日本が中国に進出し、韓国を併合し(1910年)、対支二十一か条の要求(1915年)を行なった辺りからの、様々な知識人の言論を一つ一つ丁寧に拾い上げ、平易な言葉で解説してゆく。そうすることで、当時の日本の政治や評論、文学、メディア等がどのような思想を背景に言葉を発し、軍人や世論に影響を与え、戦争が進められていったのかを解き明かす。
    戦争の歴史というよりも、思想史であり、思想が国を形作ったことを証明するような非常に説得力のある論考だと思う。著名な言論人が多く登場し、そうした人々の考え方に浅くではあるが広く触れるきっかけとしても優れた本だと思う。
    松岡正剛が「松本健一が書いた本は、長らくぼくが信用して近現代史を読むときに座右にしてきたものである。」と言ったことの意味が分かる思いがしている。

  • 日本の失敗

  • [ 内容 ]
    日本はなぜ無謀な戦争に突入し敗れたのか―ヨーロッパ諸国から同時期に文明国と認められた日米宿命の対立の根底には、中国問題があった。
    その端緒「対支二十一ヵ条の要求」から敗戦に至る軍人、政治家、思想家、ジャーナリストたちの言動を検討し、誤りを摘出する。
    多彩な登場人物が織り成す壮大な思想のドラマは論争を呼ぶ。

    [ 目次 ]
    日米の仮想敵国
    発端としての「対支二十一ヵ条」
    アジアの帝国主義
    「日米衝突」のシナリオ
    満州事変というファシズム
    世界戦争のプロローグ
    「侵略」という認識
    統帥権干犯の思想
    軍部の独裁化をめぐって
    精神的鎖国としての国体イデオロギー
    日本の「世界史」
    大東亜戦争の「開戦の詔勅」をめぐって
    時代思潮としての「死の哲学」
    外の力
    戦犯とは何だったのか

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 統帥権干犯や戦争犯罪など昭和史のキーワードごとに章に分かれていて興味のあるところを読み返しやすい。
    政党政治がロンドン海軍軍縮条約締結の際に統帥権干犯問題で自滅した様子が詳しく描かれているが、著者の評が政党に辛らつすぎるのかそれとも適切な評なのか自分には判断しかねるところであった。しかし昨今の政治を見ているかぎり、著者の評を肯定する要素しか浮かび上がらないのもまた事実である。

  • 2009/
    2009/

    1092夜

  • 日米関係を読み解くときには中国も見ないといけない。
    日米対立の元に中国問題があった。

  • 日本が無謀な戦争に突入し、敗れてしまったのは、何故なのか。東京裁判の結論どおり「軍閥」を中心とする一部支配層の謀議によるものなのか。それとも国民全員に等しく原因があり、総懺悔すべきものだったのか。筆者は、いずれでもない、ということを、昭和日本の外交、軍、議会、思想状況・・・を立体的に描き出すことで示してくれる。日本の中国大陸での軍事行動は、日本自らが批准していた条約に明らかに違反するものであり、決して正当化できるものではないという指摘。また軍部に「統帥権」という伝家の宝刀を振りかざす隙を与えたのは、党人政治家たちが党利党略に走ったことの結果であったとの指摘。さらに「大東亜戦争」には、開戦時、動機はあっても目的がなかったという指摘。・・・等、改めて「大東亜戦争」について評価していくための重要な論点を明快に提示してくれている。

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著者プロフィール

松本健一(まつもと・けんいち)
1946年群馬県生まれ。東京大学経済学部卒業。
現在、麗澤大学教授。評論・評伝・小説など多方面で活躍中。
2011年3月11日におきた東日本大震災のときの内閣官房参与として、
『復興ビジョン(案)』を菅直人首相(当時)に提出。
著書に『白旗伝説』『北一輝論』(以上、講談社学術文庫)、
『近代アジア精神史の試み』(岩波現代文庫、アジア太平洋賞受賞)、
『開国・維新』(中央公論新社)、『砂の文明・石の文明・泥の文明』(PHP新書)、
『評伝 北一輝』(全五巻、岩波書店、毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞受賞)、
『畏るべき昭和天皇』(新潮文庫)、『天国はいらない ふるさとがほしい』(人間と歴史社)、
『海岸線の歴史』(ミシマ社)など多数ある。

「2012年 『海岸線は語る 東日本大震災のあとで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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