ゆたかな社会: 決定版 (岩波現代文庫 社会 137)

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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006031374

作品紹介・あらすじ

「ゆたかさ」の増大と普及は何をもたらしたか。現代資本主義の特質を明らかにした古典的名著の最終改訂版である本書では、インフレ論について第四版を大幅に修正した。他方では、今回もマネタリズムの金融政策、環境問題、軍事支出などを批判的に考察し、政治的保守主義台頭の必然性を解明している。二〇〇六年に九七歳で逝去した著者の代表作である。

感想・レビュー・書評

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  • 最初の出版は1958年。本書では生産量を経済の中心とする現代の経済学のあり方そのものを19世紀的な価値観に縛られた通念であると批判し、現代の消費は過剰生産によって依存的に生み出されたものなのだと指摘する。普段僕らが感じるあれが欲しい、これが欲しいという欲望は決して自分自身から生まれたものではなく、広告によって刷り込まれたものだという構造は現代でも全く変わっていないと思う。後半で触れられる新しい階級に対しては楽観的に肯定しているが、今も全員が望んだ仕事に就けるわけではないことを考えると悲劇的でもある。

  • 戦後大復興を遂げた1950年代のアメリカ社会において、これまでの経済学の通説に真っ向から疑問を呈し、現代資本主義の在り方に異議を唱え衝撃を与えた経済学者ガルブレイスの古典的名著。

    生産性向上によるゆたかさを価値として追求された経済理論が直面したのは、現在における不平等、貧困、環境問題、格差社会という深刻な問題だった。

    まさに、これからの日本と世界を考えるうえで、秀逸。
    ガルブレイスの問題提起に対する答えをうやむやにしてはならないと感じた、時代のギャップを感じさせない古くて非常に新しい一冊。

  • ところどころいいところはあるがぴんとこないところもある。

  • [ 内容 ]
    「ゆたかさ」の増大と普及は何をもたらしたか。
    現代資本主義の特質を明らかにした古典的名著の最終改訂版である本書では、インフレ論について第四版を大幅に修正した。
    他方では、今回もマネタリズムの金融政策、環境問題、軍事支出などを批判的に考察し、政治的保守主義台頭の必然性を解明している。
    二〇〇六年に九七歳で逝去した著者の代表作である。

    [ 目次 ]
    ゆたかな社会
    通念というもの
    経済学と絶望の伝統
    不安な安心
    アメリカの思潮
    マルクス主義の暗影
    不平等
    経済的保障
    生産の優位
    消費需要の至上性
    依存効果
    生産における既得利益
    集金人の到来
    インフレーション
    貨幣的幻想
    生産と価格安定
    社会的バランスの理論
    投資のバランス
    転換
    生産と保障との分離
    バランスの回復
    貧困の地位
    労働、余暇、新しい階級
    安全保障と生存について

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 1958年に初版が、1969年に第二版が出ている。
    50年経過して、ガルブレイスの説が、現実のものになった。

    不平等、貧困の新しい地位が、アメリカの深刻な現実になった。
    ゆたかな社会の曲がり角が、2008年の特徴だろう。

    ガルブレイスを呼んでいた人たちが、判断を誤ったのはなぜだろう。
    理論を軽んじたのだろうか、歴史から学ばなかったのだろうか、
    現実に押されてしまったのだろうか。

  • 「暇と退屈の倫理学」に出てくる。かなり項を割かれていたように思う。

  • 6章の平等の章だけ。格差はそもそも悪いものなのか?最近はそんな論争も薄れつつあるとのこと。懐疑的な視点をカバーしている。

  • アメリカ経済を貫く考え方が垣間見える。

  • ガルブレイスの代表作ですが、読み応え十二分でした。「陰気な学問」と呼ばれる経済学、なぜそう呼ばれるかと言えば、リカード、マルサスに代表されるように、社会の困窮、貧困、モノの欠乏をいかに解決するかに経済学が取り組んできたからです。経済学の伝統的な関心は生産、不平等、経済保障の3つですが、そのなかでも「生産」が最重要トピックになります。なぜなら生産が増大すれば、不平等問題も覆い隠されますし、雇用と所得が生まれることで経済保障問題も解決するからです。

    しかしここでガルブレイスは主流派経済学者に「目を覚ませ」というわけです。現代社会(20世紀アメリカ)を見ると物は豊かであふれている。いやむしろ不必要なもの(使用価値がゼロ、実質的な効用がゼロのもの)を生産し、過剰な広告宣伝を通じて販売している状況下において、経済学は依然として「生産極大化」「生産性の向上」から抜け出せていないと批判します。そして消費の良し悪しについてはあえて議論を避けてきたところに経済学の限界があると指摘します。またアメリカは「ゆたか」ではあるけれども非常に歪んでいる、それはあまりに貧素な公共サービス(ガタガタの道路など)と不必要なものまで生み出す民間サービスというアンバランスさを伴っているからです。

    このような警鐘を鳴らすわけですが、それでも「生産」は雇用=所得を生み出すという意味で、経済保障と密接につながっていることは間違いありません。ですから生産は「やめたくてもやめられない」(ハムスターがいつまでもグルグル回し続ける回り車)ものであることには違いなく、そこでガルブレイスは現代的に言えばベーシックインカム的な案を提出するわけです。これは生産と経済保障のリンクを断ち切ればよい、つまりハムスターは回り車を回さなくても餌にありつけるんだということです。

    足元の世界経済を見ると、リーマンショック後の「長期停滞の時代(ローレンス・サマーズ)」が、コロナ禍でダメを押された形になっています。GDP(生産)は落ち込み、まさにガルブレイスが述べているように、これまで高生産水準によって覆われていた不平等問題が姿を現し、さらに経済保障問題も浮上しているわけです。そして多くの主流派経済学者は「生産を増やせ!」と相変わらず叫びつつけているわけですが、「生産」は大いなる逆風に遭遇していると思います。そもそも国連が提唱するSDGsを実現したいのであれば、「生産極大化」理論は自然環境を制約条件にしなければならず、そうしたとたん、最適解は「生産を減らせ」となるからです。経済学は、ガルブレイスが主張するように、生産ではなく分配、あるいは支出に主眼を置く学問に転身しなければならないと本書を読んで強く感じました。

  • 主流派経済学は、その起源からして貧困が当たり前の社会を前提としているのにその前提が変わったことを受け入れず理論武装に終始している。。という著者の憤り、もどかしさが伝わってくる
    ゆたかな社会における貧困とその解決策、新たな階級、有名な依存効果など、現実に軸足を置いた「反主流派」本

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