「難死」の思想 (岩波現代文庫 社会 168)

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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006031688

作品紹介・あらすじ

空襲の焼け跡で見た虫ケラのような死=「難死」は、国家のための美しい「散華」などでは決してなかった。「公」のために殺し・殺されることなく、「私」を生き抜くにはどうしたらよいのか。敗戦の日をめぐって、三島由紀夫の割腹自殺をめぐって、空爆にさらされるベトナムや、アメリカ脱走兵をめぐって…。思索し行動する作家が、人間そのものへの深い洞察にもとづき記す平和論。

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    『思索し行動する作家,小田実.彼は,公の「正義」が個人を抑圧するあらゆる行為に,終生,抵抗し反撃しつづけた.敗戦の焼け跡で見た虫ケラのような死=「難死」,空爆の航空写真に写らない「される側」の悲惨,べ平連の運動の中でのアメリカ脱走兵とのかかわり…….人間そのものに対する深い洞察がつまった,代表的平和論集.
    -
    昨2007年7月30日に亡くなった小田実は,死の直前まで一人の市民の立場から平和を求める発言をし続けた.1965年に「ベ平連」(「ベトナムに平和を!」市民連合)をつくり,積極的な運動を展開してからでも40年以上.その揺るがぬ姿勢を支えるものは何なのか.
     本書では小田実の代表的平和論集を収録.ベトナム反戦運動にかかわる直前にすでに書かれていた「『難死』の思想」(1965年)をはじめ,「平和の倫理と論理」(1966年),「人間・ある個人的考察」(1968年)など,人間に対する彼の根源的な洞察は,いつの時代にもみずみずしく心に響く.

     お読みになって行けばすぐ判ることだろうが,私はこの本の文章で,ベトナム反戦運動やベトナム戦争そのもののことを語っているのではなかった.私が書いたことは,結局,二つを通して,戦争の問題,そこへの私たち市民の加担の問題,加担を当然のこととする社会,国家のありようの問題,そこでの民主主義の問題,そして,何よりも人間の生き方の問題だったにちがいない.こうした問題は今日も変わらず私たちの前にある.
    (あとがき)

     大阪大空襲の焼け跡で見た黒焦げの死体は,国家のために殉じる美しい「散華」などではなく,生きたいと逃げまどった末に焼き殺された「難死」だった――このように考える著者は「公」と「私」の問題を考え抜くが,現代文庫版解説では小熊英二氏(慶應大学教授)が,「市民運動家」としてだけでなく,「作家」としての活動の上でもいかにそれが不即不離の関係であったかを鋭く論じている.

     本書は1991年12月,同時代ライブラリー版として編集されたものである.』
    (「岩波書店」サイトより)
    https://www.iwanami.co.jp/book/b256417.html


    目次
    「難死」の思想/平和の倫理と論理/人間・ある個人的考察/デモ行進とピラミッド/彼の死の意味/「生きつづける」ということ/「殺すな」から


    冒頭
    『私は幼なかったから、保田与重郎などいなかった。高坂正顕も高山岩男もいなかった。『総力戦理論』も『世界史の哲学』も『近代の超克』もなかった。『万葉集』の文庫本も『葉隠』も、いかにして死ぬかの考察もなかった。私の世界には、そのとき、そうしたものは何一つなかった。』



    『「難死」の思想』
    著者:小田 実(おだ まこと)
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    文庫 ‏: ‎318ページ

  • [ 内容 ]
    空襲の焼け跡で見た虫ケラのような死=「難死」は、国家のための美しい「散華」などでは決してなかった。
    「公」のために殺し・殺されることなく、「私」を生き抜くにはどうしたらよいのか。
    敗戦の日をめぐって、三島由紀夫の割腹自殺をめぐって、空爆にさらされるベトナムや、アメリカ脱走兵をめぐって…。
    思索し行動する作家が、人間そのものへの深い洞察にもとづき記す平和論。

    [ 目次 ]
    「難死」の思想
    平和の倫理と論理
    人間・ある個人的考察
    デモ行進とピラミッド
    彼の死の意味
    「生きつづける」ということ
    「殺すな」から

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


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