聞かせてよ、ファインマンさん (岩波現代文庫)

制作 : Richard P. Feynman  大貫 昌子  江沢 洋 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 198
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006031855

作品紹介・あらすじ

もしもファインマンさんの講演会があったなら、今だって会場には溢れんばかりの人がおしかけるだろう。学問のいかめしさとは全く無縁、不思議を突き止めていく科学のワクワク、ドキドキを、抱腹絶倒の語り口で伝えてくれるから。そんなファインマンさんの、講演・インタビューをまとめた一冊。話題は生い立ちから、素粒子や宇宙の話まで。

感想・レビュー・書評

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  • ファインマンさんシリーズという一連のエッセイがあることは前々から知っていたが、初めて読んだ。
    なんということもない読み物なのだが、読んでいるうち、だんだんと著者の「科学オンリー主義」とでも呼ぶべき偏狭さが気になってきた。
    彼はどうやら哲学が大嫌いらしく、さんざん嘲笑している。といっても哲学書をろくに読んだわけでもなく、たぶん全くわかっていない。
    社会科学についても「全然科学的じゃない」とさんざんにこきおろしている。
    確かに西洋文化の中で、自然科学は素晴らしい知の実績を積み上げてきたが、科学的思考「だけ」が正しく、政治もそれ「だけ」を考慮するべきだ、というファインマンさんの主張には賛成できない。
    たとえば「ツボ治療」なるものは、その効果についてはWHOさえもが認めているのに、それの「科学的解明」とやらは全くなされていない。やろうという気配さえない。「自然科学」はけっこう怠慢なのである。科学的な知は、知のすべてではないのだ。ツボ程度のものさえ解き明かし得ない科学主義者が、「疑似科学」を嘲る資格はないと思う。

    だいたい、どの分野であれ、その分野しか知らない「専門馬鹿」の語る話はおもしろくない。科学者であれ、そこらじゅうにいる自称「アーティスト/ミュージシャン」であれ、哲学者であれ、スポーツ選手であれ。彼らの業績、作品については別問題だが、とにかく狭い世界しか知らない人間が得意げに話す世界観には、あまり惹かれるものがない。むしろ、知ったかぶりの醜悪な自己満足が見え透いて不快だ。
    一方、科学も哲学も文学も政治も、あらゆることに向けて知的好奇心を惜しまないような巨人たちの語る言葉の方が格段に面白い。ジャン=ピエール・シャンジュー、ポール・リクール、メルロ=ポンティ、中井久夫、武満徹、こういった広範な知見を持つ者だけが、価値ある「話」を語りうるのではないか? いや、何も「すべてを解明する縦断的な見解」を持つ必要はない。ただ、おのれの「知」を、1個のはかない人間として、世界に向けてどこまでも開いていくことこそが、正しいのではないか?

    それと、ファインマンさんは原爆の開発にもたずさわっていた。ヒロシマで大量の、無防備な一般市民が死に、地獄絵図の中をさまよい苦しんでいたその時、開発チームは「成功」を祝っておおはしゃぎしていたという。科学者が実験成功を祝う気持ちはわからないでもないが、アインシュタインなら別の態度を示していたろう。
    原爆の開発に関し、ファインマンさんは無反省というわけではないようだが、アメリカがそれを先に完成させなければナチスが完成させる恐れがあった。だからアメリカが原爆を完成させて使用したことは正しかった、という思いがあるらしい。
    どう理屈をつけようが、戦争のために無差別大量殺戮兵器の製造をする者は殺人者でしかないと私はおもう。少なくとも非戦闘員の大量殺害の瞬間に大喜びするような事態は、何かが致命的に間違っている。クレイジーそのものだ。

    というわけで、どうもこの人の「人柄」には全然魅力を感じなかった。もうファインマンの本は読まないと思う。

  • 読んでおいて損はない

  • 科学者っていいなあ。憧れる。

    懐疑を貫くって大変だから。カッコいい。

    ナノテクノロジー、量子コンピュータの発想がすごい。

    お父さんがまた魅力的なんだな。
    息子とのやりとりをどれだけ楽しんだか。

    これまでのファインマンの著作にあった愉快さの源泉を見た思いがする。

  • 3週間かけて2回読んだ。1964年にイタリアで開催されたガリレオ・シンポジウムで行った講演「現代社会での科学的文化の役割とそのありかた」の中で、「科学の応用について道徳的問題に直面するこれからの分野は、きっと生物学です。社会に関する物理学の問題が深刻なら、生物学の知識の発達にともなう問題はそれどころではなく、ますます深刻なものと考えていいでしょう。」(86ページ)と述べているのは、さすがだと思った。その一方で、「そういうわけで僕はあることを学びました。女性の頭はたしかに解析幾何を理解できるのです。ですからいままで長年女性も男性も等しく合理的思考能力があると(あれだけ反対の証拠に直面しながらも)主張しつづけてきた人たちの言い分には、一理あるのかもしれません。」(209ページ)という発言を、よりによって米国科学教師協会の会議(1966年)での講演「科学とは何か」でしているあたり、ファインマンも時代の制約からは逃れられなかったということか。1918年生まれといえば、日本では大正時代だ。量子計算機の研究もしていたこととか(「未来の計算機」)、「ナノテクノロジーの父」と呼ばれていることとか(「底のほうにはまだ十二分の余地がある」)、初めて知ったことも多い。そして、欧米の科学者は、どうしても科学と宗教との関係に頭を悩まさずにはいられないものらしい(「科学と宗教の関係」)。フリーマン・ダイソンによる「序―偶像視せんばかりに」に心底共感できるくらいに物理学が分かっていたらよかったのに。『ファインマンさん ベストエッセイ』改題。

  •  ファインマンシリーズの第1弾として読了。これは面白い。チャレンジャー号の事故報告書、ファインマン物理学の人という印象しかなかったが(教科書はかなり分厚く、ちょっと尻込みしていた)、一掃された。
     哲学的記述は少々理解が厳しかったが、好奇心が落ちることはなかった。いやー別の本もすぐに読みたい、と思えた本であった。読みます。

  • 「ご冗談でしょう、ファインマンさん」と同じく、本人へのインタビューや、大学での講演録音の書き起こしが元。この人にまつわる本はどれもおもしろい、というか読みやすい。こなれた日本語であって、かつ本人の語り口が何となく文章に現れている(気がする。)まちがいなく翻訳者の仕事のたまものでもあるけれど、それ以上に本人の説明センスのおかげだな、とも思えた。

    ・1. 簡単なことを / 2. 難しいことを / 3. 簡単か難しいかはまだ誰もわかっていないことを
    ・a. 聴き手がわかりやすいように話す / b. 聴き手には難しく話す

    と分けると、2-a や 3-a にものすごく長けていることがわかる。普通は、準備不足だったり、油断したりでもう全部 b へ‥つまり 2-b と 3-b はもちろん 1-b でさえやってしまう。例えば、セミナーで同じ内容を話すときも、最初はこれができない。自分ではわかりやすく選んだつもりの言葉が、聴き手によっては届かない。同じ内容を何度かこなしてようやく a になる。


    特に「2 未来の計算機」には本人直筆のスライドが挿絵で加わって、思考の中身が絵で伝わっておもしろかった。「4 底の方にはまだ十二分の余地がある」では電子顕微鏡の(当時の)限界や将来の進化を的確に論じている。「6 チャレンジャー号 事故少数派報告」で示されている分析力や取材力で、当時の産業界でも見逃していた原因にたどりついた、ということがわかる。学術の世界だけで生きていた人と思っていたので、この章は特に新鮮だった。

  • 天才物理学者のインタビュー集。

    「困りますファインマンさん」の解説にあった
    ファインマンさんベストエッセイの改題。

    解説で削除されたのが残念と書かれていた
    スペースシャトルチャレンジャー号の
    調査記録が収録されているが、
    だいたい「困ります」に書いていたことを
    堅い文章で書いたような印象で、
    個人的には期待はずれだった。

    それよりもファインマンさんの
    宗教に対する見解が載っており、
    それが大変おもしろかった。

    それによると疑問を持つことは
    科学を勉強する上で不可欠だが、
    それと信仰を両立させることは難しい。
    だが、宗教の道徳性は神を信じなくても、
    学んだ道徳はその人に根付くというもので、
    必ずしも宗教を否定してはいなかったのかな。

  • 「これぞ科学者!」と思わせてくれる。
    文章から筆者の科学に対する真摯な姿勢とユーモアを感じる。

    この本はファイマンの公演などをまとめたもので、ファイマンはとても頭が柔らかく、そしてわかりやすく科学と科学者のあり方を説いてくれている。

  • 「科学とは何か」について簡潔に書かれた本。

    * 100%の真理など存在しないということ
    * より正しそう(正しそうな確率が高い)仮説が現在の説である
    * ある説を経験(実験)によって確かめるのが科学
    * 言い換えれば、人間の経験の一般化でもある
    * 自然という神秘のまだ一部しか分かっていない
    * 科学における「疑う」ことの重要性
    * 因果関係を解明するのは科学だが、価値判断は科学の範囲外
    * 数学はパターンの記述

    コンピュータとかの話も面白かったから、

    もう少し物理学に関する知識があれば。

    ちょっと勉強してみようかな。

  • ファインマンという天才的物理学者の側面、つまりユーモア溢れる逸話にしぼった本。
    理系が苦手な僕でも難しくないです。

    哲学等の科学的とは言えない学問に対するファインマンの辛辣な批評が面白い!

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