人物ノンフィクション〈3〉孤高の戦い人―後藤正治ノンフィクション集 (岩波現代文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006031886

作品紹介・あらすじ

一瞬の判断が明暗を分ける勝負の世界で、いかに勝利を手中にするか-。野球場で、テニスコートで、道場で、人生を凝縮したような光を放つ一流のスポーツ選手がいる。彼らのこれまでの歩みには、どんな物語があるのか。また、行く手には何が見えているのか。松井秀喜、伊達公子、福永祐一、古賀稔彦、小川良樹、故・仰木彬など。

感想・レビュー・書評

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  • ノンフィクションライターによる、スポーツ選手及び指導者達の戦いの軌跡。ⅠとⅡは読んだことはない。たまたま目に付いた本書を読んだ。

    紹介されているのは松井秀喜、伊達公子らスポーツ選手から、仰木彬、北橋修二(競馬調教師)といった指導者など。数々の困難を克服して結果を出してきた人達だ。そして、苦労と成功の裏にあるその人となりにも触れている。

    同い年であるからか、松井秀喜の話が特に印象に残る。本書では、以前読んだ別の松井伝ではあまり触れられていなかった実家の宗教のことにも頁を割いている。実家の宗教と野球に直接の関係は無さそうだが、松井の精神形成にはやはり無縁では無い。

    指導者達の戦いぶりも読みごたえがあった。300頁弱で多くの人を凝縮して紹介しており、興味が湧いたらそれぞれ単独での人物伝を読んでみるのも良い。

  • ノンフィクションの第一人者 後藤正治氏によるオムニバス。対象となっているのは松井秀喜氏(元巨人)、小川良樹氏(高校バレー部監督)、上田利治氏(元阪急)、伊達公子氏(元テニスプレーヤー)、仰木彬氏(元オリックス)、古賀稔彦氏・谷本歩美氏(柔道)などです。最も印象的だったのは、下北沢成徳高校監督の小川氏の章でした。
    20年ほど前、小川氏が同高監督に就任した当時はバレーの指導は根性バレー一色と言って良い時代でした。小川氏もその流れを踏襲したのですが、選手の気持ちをつかめないまま試行錯誤の上に選手の自主性を重んじる指導法へ切り替えられます。それと時を同じくしてバレー強豪校としての実績を重ねてゆきます。大山加奈、荒木絵里香、木村沙織など全日本を支える選手も小川氏のもとから育っていきました。
    スパルタ式ではなく、しかし緩いだけではない指導法。それを著者は「バレーに疲れ切ることはなかった。小川は”余白”を残して卒業生を送り出したのである。」と表現しています。厳しすぎてはスパルタになりがち、でも「緩く」に傾倒し過ぎては結果が伴わない、この矛盾する状況に絶妙のバランスを見出した小川氏と選手達との日々は読んでいて清々しい気持ちになります。

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著者プロフィール

1946年、京都市に生まれる。1972年、京都大学農学部を卒業。
ノンフィクション作家となり、医学、スポーツ、人物評伝などの分野で執筆を重ねる。
『空白の軌跡』(講談社文庫)で第四回潮ノンフィクション賞、『遠いリング』(岩波現代文庫)で第十二回講談社ノンフィクション賞、『リターンマッチ』(文春文庫)で第二十六回大宅壮一ノンフィクション賞、『清冽』(中央公論新社)で第十四回桑原武夫学芸賞、を受賞。

2016年、書き手として出発して以降、2010年までに刊行された主要作品のほとんどが収録されている「後藤正治ノンフィクション集(全10巻)」の刊行が完結。

他の著者に、『関西の新実力者たち』(ブレーンセンター.1990)、『刻まれたシーン』(ブレーンセンター.1995)、『秋の季節に』(ブレーンセンター.2003)、『節義のために』(ブレーンセンター.2012)、『探訪 名ノンフィクション』(中央公論新社.2013)、『天人 深代惇郎と新聞の時代』(講談社.2014)、『拗ね者たらん 本田靖春 人と作品』(講談社.2018)などがある。

「2021年 『拠るべなき時代に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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