教育再定義への試み (岩波現代文庫 社会 199)

  • 岩波書店 (2010年3月16日発売)
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  • 本 ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006031992

感想・レビュー・書評

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  • 自分ならこうする。ぶれない軸をもった持論こそが、人への最高の教え。

  • 小学生の息子から、自殺をしても良いのか、と問われた著者は、自殺をしても良い場合があるとして2つの具体例を挙げて答えた。これは著者自身がさまざまな痛みを伴う人生の体験を通して探り得た自分だけの答えであり、決して学校教育で教えられる模範解答のようなものではない。私自身親として子供からこのような切実な問いかけをされたとき、ある種の覚悟を持って自分の言葉で答えることができるのか、しばし考えさせられてしまった。

  • 教育を再定義するというような固い本ではなく、鶴見の体験を語った本であった。
     ちまたでは、アメリカに行って日本に戻って兵隊に行ってまた戻ってきたというようにはしょって語られているが、本人の説明として本書を読むと、そう簡単には説明できない様々な事情があることが分かる。自分の大学生活のことも語っているし、大学生のことも語っているし、教師との体験についても語っているので、教員養成系の大学生にとっては読んでおくといい本であろう。

  • 子どもが本来持ち合わせている、教育を跳ね返す力

    正義と多数によってなされる教育に、どう抗うか

    そもそも、なぜ勉強しなければいけないのか

    なぜ生きなければいけないのか

    なぜ人を殺してはいけないのか

    そんな根源的な問いに対して、向き合うことから逃げてはいけないし、逃げる必要もないし、そんなことを疑問に思っている自分を変だと思う必要はまったくなくて、思うこと自体が至極当然で自然なことであり、その問いに、もうろくしてまでも向き合っていくことが大切なんだよ、という筆者からのメッセージがあったように思う。

    子どもが、生き物として抱く感情、情動、思考

    それらを、現代の「教育」というものが、いかにないがしろにし、矯正し去勢してしまっているのか。

    読み終えてから結構経ってしまっているので、いろんな思いを書き漏らしてしまっているが、子どもから見たこの世界の無理矢理感のようなものに遭遇した時の、理不尽で意味不明で頭ごなしで不思議で哀れで冷めたような感覚を忘れたくないと思ったし、とはいえ、そういう社会に翻弄されながら生きている自分の滑稽さに同情しつつも、子どもたちの持っている力を、できる限り侵さない大人でありたいと思わされた一冊だった。


    読始不明
    2024.2.13 読了

  • 難しい。最近読んだ本が殆ど実学系のものばかりだったからか、この本は本当の評論という感じがしてとても難しい。学者、しかも哲学者の著作という感じ。自分の問題を作る、という一節があった。その方が学校の成績は良くなるとも書いてあった。著者もそこには反対の考えを述べている。これも今から20年以上前の本であることを考慮すると、この国では教育も殆ど変化ないんだな、と思う。
    自分で問題を発見し、仮説・検証を試み、解決の方向へ進めていく力、これは自分で切り拓き、身につけていくしかないのだろう。教育という言葉はどうも上からの施しのように聞こえて気持ち悪いが、自己教育とか訓練という言葉に置き換えて試行錯誤の中から自らの血や肉にしていきたいし、子供達にも勉強とはそういうものだ、ということを経験を通して実感していってもらいたいと思う。

  • 不明(白金)
    キャビネ保管(横浜)

  • ラジオの番組で紹介されていたので何となく読み始めてしまったのだけれど、示唆に富む、そして何度も反芻しないと自分のものにできない言葉がたくさんちりばめられている本だった。もう一度読み返したい部分に線を引きながら読むということを久しぶりにやった。

  • twitterでの高橋源ちゃんの紹介で重要なエピソードについては読んで、知ってたので、改めて読む楽しみはそれほどなかった。構成についての分かりにくさはあるけど、考え始めるヒントは沢山あるし、鶴見さんの語りの魅力は感じられた。

  • 著者の鶴見さんの半生を振り返りつつ、教育というものの真の意味にたどり着こうとする論考エッセイです。むずかしい言葉でがちがちになっていなくとも、ちゃんと物事の深みを表現して伝えることができるという良い見本のような文章でした。むずかしいことはむずかしいという部分はあるのですが、時間をかけて読むことできっとイメージはつかめるという感覚。巻末の芹沢俊介さんの解説を読むと、ああそうか、とそれまで読んできた言葉がすっと胸に入ってクリアになります。まず、痛みによる教育の試みだといいます。痛みは身体的なものも心的なものもどっちも。そうして、著者が自分で経験した痛みからくる教育を披歴していく。そこで読者は、著者の経験に自分の経験や記憶を照らし合わせて、自分の内に著者の考えを落としこんでいくことになる。

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著者プロフィール

922−2015年。哲学者。1942年、ハーヴァード大学哲学科卒。46年、丸山眞男らと「思想の科学」を創刊。65年、小田実らとベ平連を結成。2004年、大江健三郎らと「九条の会」呼びかけ人となる。著書に『アメリカ哲学』『限界芸術論』『アメノウズメ伝』などのほか、エッセイ、共著など多数。『鶴見俊輔集』全17巻もある。

「2022年 『期待と回想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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