狭山事件の真実 (岩波現代文庫)

著者 :
  • 岩波書店
3.91
  • (4)
  • (2)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 31
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006032029

作品紹介・あらすじ

四七年前の女子高校生殺人事件の被告とされ、今もなお再審を求める石川一雄氏の闘いは続く。当初全面否認した石川氏が、第一審死刑判決後までは女子高校生殺害の自白を維持したのはなぜか。本書は長時間インタビューで石川氏の内面に迫り、虚偽の自白を強いられた事情と典型的な冤罪事件に隠された謎を初めて明らかにした衝撃のルポ。再審開始は実現するか。今なお注目の事件を知る上での最良の一冊。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 冤罪事件として有名な狭山事件だが、ほとんどなにも知らないまま映画「見えない手錠をはずすまで」を見に行こうとしていた。都合が悪くなりつきいち上映会に行けなくなったのでこの本を読んでみたのだが、映画よりも先に読むことができてよかった。
    文字を知らないと言うことの恐ろしさ、そして石川さんが獄中でそれこそ血のにじむような努力をして文字を学習していった部分が素晴らしい。それはあたかもヘレンケラーが水を触って言葉の意味に気がついたエピソードのような目の前がぱーっと開けてゆくような瞬間だ。
    映画はいつか必ず見に行こう。石川さんが心休まる日が来ることを願って止まない。

  • 昭和38年、埼玉県狭山市で女子高生が誘拐され身代金を要求する"脅迫状"が届く。
    身代金の受け渡し場所に現れた犯人は、張り込んでいた警察に気づき、金を受け取らずに逃走してしまう。
    捜査が難航する中、女子高生は遺体となって発見され、容疑者として被差別部落の石川一雄が逮捕される。
    石川さんは犯行を自供し、一審では罪を認め死刑判決をうけるが、一転して控訴無罪を主張する。
    控訴審で、
    ・石川さんは文字を読み書きできなかったこと
    ・兄(実は兄にはアリバイがあり犯人ではなかった)を逮捕すると言われ、身代わりとして自白したこと
    ・警察とは10年で出してやるとの約束を交わしそれを信じていたこと
    など冤罪事件であることが明らかになっていく。
    石川さんは獄中で文字を学習し、社会に無罪を訴え、仮出獄後の現在も無罪判決のために戦い続けている。

    映画「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」は石川さんたちの"人間"を描いていたので、事件の詳細を知りたいと思い読んでみた。
    映画も本書も真犯人は誰だったのかという点については、記載が少ないのだがその理由もエピローグを読むとなんとなく見えてくる。
    何かの事件が起きるたびに「こんな事をしたのだからコイツは死刑だ!」と主張する死ね死ね団のような輩もいるが、村木さんの事件やPC遠隔操作事件の最初の4人の逮捕者などをみても現在もなお冤罪事件はおき続けている。
    死刑を求めるより前に取調べの全過程録画や全証拠の開示を進めて冤罪を減らす方が先だと思うのだが。
    自分が冤罪で捕まっても死ね死ね団は自分に死刑をもとめるのだろうか…。

  • 大学生の時に出会った「狭山事件」は、明治公園での支援集会における警察・機動隊によるものものしい警備だけが印象に残っています。
    そしてその集会で地べたにあぐらをかいて仲間のろう学生に手話通訳をしている学生を見かけた事も決して忘れません。
    最初は、背中のリュックを機動隊員につかまれて「持ち物検査」された警備の厳しさが「狭山事件は何か恐ろしいモノ」と思わせたけど、狭山事件に関する勉強を重ねるごとに「狭山事件は何か大きな権力が不当に押さえつけているモノ、権力にとって都合の悪い事件」ということが僕にもわかってきました。田舎の高校を出たばかりで「部落差別」なんて言葉も全然知らなかった僕を少しずつ育ててくれた裁判でもあったと思います。
    一方でそんな集会に参加しているろう学生とその仲間の学生を「羨ましく」感じたように思います。”僕もいつかあんな風に友人のろう者に社会問題を扱った集会で手話通訳できるようになりたい。””思想・信条でも共感できるようなろうの友人を持ちたい”と思ったものです。
    さて、私の尊敬する鎌田慧さんの書かれた「狭山事件の真実」は帯にこんな風に書かれています。
    再審開始は実現するか
     事件の謎を解く労作-典型的な冤罪はいかにしてつくられたか
     石川さんはなぜ偽りの自白をしたのか
    折しも7月30日『布川事件』の再審第2回公判が行われた事を新聞が報道していました。
     鎌田さんの書かれる文章には「安易な批判」や「感情的な判断」がありません。作中に登場する人物に寄り添い「事実」だけを一つ一つ丁寧に描き積み上げていくことによって、「事実」がどれほど「裁判結果」と隔たっているかを我々に強く教えてくれるのです。
     だから前半「第6章 私は殺していない!」が始まる前までは、石川さんがむしろ自分から進んで警察の誘導に乗っかって自白する様子に歯がゆい思いをしたくらいです。
     後半は
    「第7章 見送った死刑囚と文字の獲得」
    「第8章 不思議な『証拠物件』」
    「第9章 東京高裁・寺尾判決」
    「第10章 自分で書いた上告趣意書」
    「終章  『見えない手錠』をはずすまで」
    「エピローグ」
     石川さんが獄中において文字を獲得する経過に始まり、上告趣意書を書くまでが描かれていますが、あまりにも不可思議な「証拠」ばかりで、もし狭山事件が裁判員裁判で扱われることとなったら検察及び裁判官は世間の笑いものになるのではと思います。
    books182

  • 「弘前大学教授夫人殺人事件」「死刑台からの生還」も読もう。

  •  子供のころ、新今宮の駅前のでっかい空き地に「石川さんは無実だ」と書いた大看板が立っていました。
     警察、検察のストーリに基づいて事件を作り上げる、という構図が現在とまったく同じでした。何十年たっても、その体質が変わらないことに恐怖を覚えました。

  • 昨今、検察の証拠改竄が話題になっているが、そもそも検察の緑でもなさはこのときからあったのだなと痛感。改竄というより、そもそも明らかにおかしい証拠が証拠とされたり、捏造されたりした。前からあったのだ。今回の証拠改竄は氷山の一角に過ぎないように思う。

    取調べの時に人格を否定するようなおどしがあるということは、しばしば話題になり、近頃取調べの可視化がなされそうであるが、そもそも行政の主人公は国民である。司法行政や公安機関のろくでもなさを監視していく必要があるだろう。

    逮捕された石川一雄氏は文盲であるのだが、文字を教えてくれた刑務官もいたそうだ。多少なりとも心温まるエピソードであった。

    石川一雄氏は今もなお再審請求を行ない続けている。仮にも政権交代がなされたのであるし、早急にやって欲しいところである。
    近頃やっと司法官憲もまとも裁判をするようになってきたように感じる。但し日本の司法府の組織は異常なところが多い。裁判官の独立をもっと図るべきであろう。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

ルポライター。『残夢――大逆事件を生き抜いた坂本清馬の生涯』(金曜日)、『大杉栄――自由への疾走』(岩波現代文庫)など、明治大正期の社会主義者、無政府主義者を描いた作品も多い。「さようなら原発」運動、「戦争をさせない」運動などの呼びかけ人。

「2017年 『軟骨的抵抗者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

鎌田慧の作品

ツイートする