私の読書遍歴――猿飛佐助からハイデガーへ (岩波現代文庫) (岩波現代文庫 社会 203)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006032036

作品紹介・あらすじ

忍術小説に熱中した少年が、なぜハイデガーの研究者となるにいたったか。敗戦後の混乱期、著者はあてどなく本を読みあさるうちにドストエフスキー、キルケゴールの著書に出会う。そしてハイデガーの『存在と時間』を読まずにいられなくなり、大学の哲学科に入り哲学研究の道へ…。難解な哲学書のわかりやすい翻訳で知られる著者の、約七〇年に及ぶ読書体験記。

感想・レビュー・書評

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  • とても面白い。
    「本を読まなかった日なんて数えることができるくらいだ」という著者の実に膨大で有益な読書遍歴。そこから見える本や言葉への深いまなざし。本は単体で存在しているのではなく、その時に、その人の前に、「現れる」ものなんだな。そう実感する。
    例えば次のような著者の文章。

    『本には旬があって、ドストエフスキーや太宰治などは、二〇歳前後が旬だと思う。漱石などは、若いときにはむしろその味が分からず、四〇代にでもなってはじめて分かってくるということがありそうだ。鷗外の史伝物などにいたっては、六〇代にでもなってはじめて味読できるといったものではないかと思う』

    著者は、詩も、ものすごく読んでいる。
    『詩なんか読んで、いったいなにになるんだとおっしゃる方も多いと思う。たしかに、なんにもなりはしない。しかし、こういうことは言えるのではなかろうか。私たちは、日ごろひどく振幅のせまい感情生活を送っているものである。喜びであれ悲しみであれ、よくよく浅いところでしか感じていないのだ。ところが、われわれは詩歌を読み、味わい、感動することによって、喜びや悲しみをもっと感じることができるようになる。ものごとを深く感じるためには、それなりの訓練が必要なのである』

    世界や自分自身を認識するには、ことばが必要だ。ことばを豊かにすることは、世界を、感情を、豊かにすることだ。

    ベルクソン、ボードレールの「笑い」論やキルケゴール、ドストエフスキーなどに話題が及ぶ。実に楽しい読書遍歴!必読。

  • 海軍兵学校から身一つで焼け野原の東京へ。テキ屋、闇屋と渡り歩いて農林学校から哲学者へ。人生行路のみちづれはいつだって本たちだった。坂口安吾「勉強記」、谷譲次「テキサス無宿」、ドストエフスキー「悪霊」、南洋一郎の冒険小説、大切なことはすべて小林英雄から教わった。洒脱な語り口。引用の絶妙。この著者の手にかかるとどの本もたまらなく読みたくなる不思議。

  • 2010年(底本2003年)刊行。著者は中央大学名誉教授。一応、読書遍歴という体裁だが、書評や読書遍歴というより、自叙伝に近い叙述内容。選書にフィクションが多いのが特徴だが、そのことが、特にドストエスフキーの読破体験が、著者のハイデガーなどの解釈を魅力あるもの、判りやすいものとしているのではないか、と思わせる。また、終戦直後の闇屋体験が生々しい。ちなみに、著者の語学習得術は愚直だが、実に明快。

  • これ読んだら、今月の『私の履歴書』読まなくていいじゃんか!

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著者プロフィール

中央大学文学部教授

「1993年 『哲学の探求』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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