チェルノブイリ――アメリカ人医師の体験 (岩波現代文庫)

制作 : 吉本 晋一郎 
  • 岩波書店
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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006032289

作品紹介・あらすじ

骨髄移植の世界的権威であるゲイル博士は、チェルノブイリ原発事故が発生した一九八六年、事故直後にモスクワを訪ねた。放射能を浴びた人々を治療しなければならないという使命感が彼を衝き動かしたのだった。本書は事故現場の様子、患者の相次ぐ死、ゴルバチョフとの会談など、ゲイル博士の懸命な医療活動と核の恐怖を描きだした迫真のルポである。

感想・レビュー・書評

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  • 元々は岩波新書で上下巻で発行されていたらしいが、福島第一原子力
    発電所を事故を受けて、岩波現代文庫で復刊した。

    1986年4月26日、ソ連(当時)のチェルノブイリ原子力発電所で起きた
    事故は世界に衝撃をもたらした。未だソ連政府が正式な会見を行う以前、
    事故からわずか6日後にモスクワ入りしたアメリカ人医師の手記だ。

    ソ連にパイプがあった訳でもない著者は、原発事故の報を聞き骨髄移植
    専門医として被曝した人々に骨髄移植が必要になることを確信して現地
    での医療活動が行えるよう動き出している。

    ソ連にゴルバチョフが登場していた当時でも、東西冷戦は解消されて
    いたのではない。それでも、医療従事者として求められるであろうこ
    とを予期し、早々に準備を行っていたことに感銘を受ける。

    深刻な事故により人命が危機に直面していれば、国境も、イデオロギー
    も飛び越えてしまうのだよな。それが、医療従事者としての熱意であり、
    使命なのだろう。

    原子力発電の仕組みも分かりやすく書かれており、ソ連側の医療従事者
    との交流、ゴルバチョフ書記長との会談の様子なども興味深い。

    ただ、被曝者の治療の様子についてはそれほど綿密に描かれていない
    ので、その点では少々肩透かしだった。

    日本は、スリーマイル島の時も、チェルノブイリの時も「対岸の火事」と
    捉えていなかっただろうかと思う。福島第一原子力発電所はチェルノブイリ
    の事故と同じ「レベル7」と評価されている。

    幸いと言っていいのか分からないが、チェルノブイリ原発事故の時の初期
    消火にあたった消防士たちのように命が朽ちるほどの被曝をした実例は公
    にされていないし、骨髄移植が必要になった人がいるとの話も聞かない。

    だが、あの時、次々と原子炉建屋が爆発を起こしていたらどうなっていた
    だろうかと考える。事態はもっと深刻になり、日本国内の医師たちだけは
    治療は困難になっていたのではなだろうか。

    福島第一原子力発電所の事故から既に7年が経過した。歳月と共に事故を
    風化させてはいけない。これからもずっと、事故のことを思い返し、学び
    続けなければならないと感じた。チェルノブイリ原発の今後は、福島第一
    原発の今後でもあると思うから。

  • 1986年4月26日、旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所で大惨事が発生。その六日後に骨髄移植の世界的権威であるゲイル博士は現地を訪れ、放射能を浴びた人々を治療する。衝撃的な内容のオンパレードです。

    これはかつて岩波新書から上下巻で出版されたものを今回の福島第一原発の事故を受けて岩波現代文庫から新しく再販されるようです。この本はチェルノブイリの原発事故を受けて、骨髄移植の世界的な権威である筆者が現地に赴き、患者を実際に診察、手術をしたり、ゴルバチョフ氏やシュルツ氏などの会談などを通して、旧ソ連の社会体制と「核」の恐怖を描いたルポルタージュになっています。

    ここに書かれてあることを丹念に追っていくと、今後、福島県で起こりうることが想像できて、ものすごくイヤーな気持ちになっている、というのが正直なところです。特に、写真も掲載されていますので、機会があればぜひ見ていただきたいのですが、(日本ではそのようなことがないと祈りつつ)事故現場の消火に当たった一人の消防士が重い被曝を受けて無菌室にいるところを撮影したものがありまして。短時間に強い放射線を受けると人体はかくも脆いものなのか…。ということがよくわかります。

    戦後66年。ヒロシマ。ナガサキに続いて日本が受けてしまった「フクシマ」という核の惨禍。今後、あまりにも情報の隠蔽がひどいので、僕はその辺を想像で補っていくしかないと確信していきますが。どんなに悲惨なことがおこっても、受け止めなくてはならない。そして、今後何十年と続く汚染の被害と向き合うためにも必須の文献だと確信しております。ただ、かなり衝撃的なことがつづられていますので、それだけはご留意願います。

  • チェルノブイリ原発事故の詳細について語られたものではなく、原発事故について一般の人に警鐘を鳴らした本。著者の自己紹介も多く、だから・・・・と思う所も多いが、チェルノブイリ原発事故直後に、アメリカ人として駆けつけた医師として、当時のロシアの状況などが、著者とともに追体験できるという長所もある。
    こんな大きな事故が25年前にもあるが、人々は「忘れ」、今また福島原発事故があっても、人々はまた「忘れ」て、核爆弾の所有や、原子力発電所の利点をあげつらう日々が訪れるのでしょうか。

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