未来からの遺言――ある被爆者体験の伝記 (岩波現代文庫)

著者 : 伊藤明彦
  • 岩波書店 (2012年7月19日発売)
4.67
  • (2)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • 本棚登録 :20
  • レビュー :4
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006032463

作品紹介

千人を超える原爆被爆者の肉声を録音し記録してきた著者にとって、長崎で被爆した吉野さん(仮名)が辿った半生ほど心を打つ証言はなかった。だが感動的なその語りに、無視できない謎が含まれていることが判明した。吉野さんは幻を語ったのだろうか。終生にわたって被爆者の声を記録し続けた著者が、被爆者とはだれであるのか、被爆体験とは何なのかを根底から問い続けて記した入魂の一冊。

未来からの遺言――ある被爆者体験の伝記 (岩波現代文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 本書は一九八○年に、青木書店から刊行されたきり、永らく絶版状態となっていたが、二○一二年にようやく岩波現代文庫に収録された。
    著者の伊藤明彦は、原爆被害者の肉声を録音するという作業を通して、吉野啓二(仮名)さんと出会う。吉野さんの語る被爆者体験は、目の前に情景が浮かんでくるほど生き生きとしていた。特に「姉さん」の話に深く感動し、できるだけ多くの人に吉野さんの話を聴いてもらいたいと思う一方、果たして吉野さんの話は本当なのだろうかという疑念も抱く。やがて、吉野さんが別の人に、違う体験を語っていたことが判明する。果たしてどちらの話が本当なのか、あるいはどちらも虚偽の作り話なのか。
    そもそも、人が自分の体験を他人に語る時に、まったく虚偽を交えずに真実のみを伝えることは可能なのか。また、話を聴く立場の人間が、相手に本当のことだけを話してもらうことはできるのか。
    被爆者に限らず、体験の後世への伝承という作業が孕む問題点を浮き彫りにする、衝撃の被爆記録である。すべての読書人よ、また絶版にならないうちに、ぜひ読むべし。

  • こんなに胸が苦しくなる本を読んだのは久し振り。
    「苦悩の意味付け」ということを重く考えた。

  • 結論が出てるわけではないけど,内容は心に深く突き刺さる.
    扱っている題材が重すぎて,何と言っていいのかわからない.

    とにかく凄い話だ.

  • 原爆太郎・・・・・・。
    著者の哲学的苦悩がにじみ出ている。
    被爆者とは何か、被爆者は作り出されていくものであるほどに、それほどに非人間的であり、限りなく重い人類の罪のひとつであるのだろう。
    語られることはすべてが真実でないことは、被爆体験者に限らず、日々の生活において往々にしてあることだ。
    人生を美化し、相手にわかりやすくし、あるいは曲解を好んでしたり・・・・・。
    それはもちろん、罪であるはずがない。

全4件中 1 - 4件を表示

未来からの遺言――ある被爆者体験の伝記 (岩波現代文庫)のその他の作品

伊藤明彦の作品

未来からの遺言――ある被爆者体験の伝記 (岩波現代文庫)はこんな本です

ツイートする