「日本国憲法」を読み直す (岩波現代文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006032715

作品紹介・あらすじ

「日本国憲法は占領下にアメリカに押し付けられたもので、時代にそぐわないから改正すべき」「国際平和のために第九条を改正して参戦できるようにすべき」-改憲論のうねりが高まる今、憲法を読み直すことは、国家と個人の関係を問い直す絶好の機会でもある。同年生まれで敗戦の少国民体験を共有する作家・戯曲家と憲法学者が熱く語り合う。

感想・レビュー・書評

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  • 「あえて刺戟的な言いまわしを使えば、犬死にだったということをごまかさないで見据えないと戦後はそもそも出発しなかったはずなのではないか。」

    高橋哲也の共通するところだけれど、戦死者を日本の発展の礎であるとか、そういう言い方をもって顕彰することへの気持ち悪さ、ごまかしへの自覚、というのが透徹していて、納得感があるけれども、おそらくここは生理的に許せない、という子も当然多いであろうところ。

  •  (樋口)憲法や国会法という眼鏡をかけるから議案の採決なり否決なりという意味を持つ行為になるが、そうでなければ500人ほどの人間が集まってどなったり立ち上がったり妙なことをやっているだけではないか。
     法は一皮むけばそういうものであって、人に対する人の支配をみんなが受け入れるべきものを示す「虚偽表象としてのイデオロギー」。それが法の正体であると言っています。(p.81)

     (井上)ぼくの印象を言えば、日本国憲法というのは個人の発見です。フランスの人権宣言やアメリカの独立宣言という200年ぐらいの流れのなかで近代的な国民国家が続々誕生して、憲法が一人ひとりの顔の輪郭をはっきりさせてくれたわけですね。
     そういう憲法の流れを見ますと、もうこれ以上の大発見はないだろうと思います。日本人はこうありたいという理想の大部分は日本国憲法と重なり、それが人類全体に共通する普遍の原理ということならば、そこにしがみついていくしかないのではないかという気持ちがますます強くなってきました。(p.174-5)

     (井上)あのレーガンさんが実にいいことを言っています。「謝って済む問題でもないし、おカネを出して済む問題でもないが、いまわれわれが謝罪し、莫大な補償金を支払うことで後世に他愛して教訓を残すことができる。われわれの兄貴たちがやったことを弟たちが謝ることによって、今度は末の弟たちが二度と過ちを犯さないように、そんなことをやったら高くつくぞ、えらいことになるぞということを一種の前例として残すのだ」と。(p.198)

     「多くの人が、今度の戦争でだまされていたという。(中略)しかしだまされたものは正しいとは、古来いかなる辞書にも決して書いてはない。(中略)だまされるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に自己の一切をゆだねるようになつてしまつていたことこそ、悪の本体なのである。(中略)「だまされていた」といつて平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。いや、現在でもすでに別のうそによつてだまされ始めているにちがいない」(伊丹万作「だまされた者の罪」)

     日本国憲法だけに限りません。人間を辱め、人間として辱められてはならぬという気質。それを育んでいこうとする人間の営み。それを支えるのが憲法だ。(p.286)

  • 90年代の社会情勢が垣間見える。
    2014年・・・、色々なことがありましたが、こと憲法に関しては、あまり変わらないか、解釈がどんどん拡張されていったことくらいでしょうか。
    拡張されたからといっても、ただちにきな臭い世の中になってきたという空気も感じられない。
    危機をあおるインテリゲンチャは多いのですが・・・・。

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著者プロフィール

(いのうえ・ひさし)
一九三四年山形県東置賜郡小松町(現・川西町)に生まれる。一九六四年、NHKの連続人形劇『ひょっこりひょうたん島』の台本を執筆(共作)。六九年、劇団テアトル・エコーに書き下ろした『日本人のへそ』で演劇界デビュー。翌七〇年、長編書き下ろし『ブンとフン』で小説家デビュー。以後、芝居と小説の両輪で数々の傑作を生み出した。小説に『手鎖心中』、『吉里吉里人』、主な戯曲に『藪原検校』、『化粧』、『頭痛肩こり樋口一葉』、『父と暮せば』、『ムサシ』、〈東京裁判三部作〉(『夢の裂け目』、『夢の泪』、『夢の痴』)など。二〇一〇年四月九日、七五歳で死去。

「2023年 『芝居の面白さ、教えます 日本編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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