チェンジング・ブルー――気候変動の謎に迫る (岩波現代文庫)

著者 :
  • 岩波書店
4.21
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本棚登録 : 197
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006032807

作品紹介・あらすじ

温暖化の背後から静かに、しかし確実に聞こえてくる気候変動の足音。地球は、これまでどう変わってきたのか。これからどう変わってゆくのか。謎の解明にいどむ科学者たちのドラマを、スリリングなストーリー展開で描く。日本の科学ノンフィクションに新たな地平をひらいた、講談社科学出版賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 丁寧に作りこまれたノンフィクション
    なのに全てを理解吸収できない数学物理音痴の哀しさ

  • 地球温暖化がCO2の増加だけが影響していると思っている人に読んでもらいたいかな。
    ミランコビッチ・サイクル、海洋深層水の動きや火山の噴火等々、色々な研究結果から地球温暖化について考えさせられる本。

  • 地球温暖化、異常気象という単語は誰もが耳にしたことがあると思います。これらの現象を研究対象とする科学がどのように進歩してきたかを辿る科学ノンフィクションです。
    誇大に危機感を煽るような書き方を一切廃し、気候変動をどのような方法で観測し、研究を積み重ねて来たのかを分かり易い文章で解説しています。取り扱うテーマは非常に広範で、地球の軌道や太陽活動に関する天文学、南極やグリーンランドの氷から過去の気候を研究する気候学、化石などの試料の年代を放射性同位体の性質を利用して特定する分析法、過去の気候を定量的に評価する古気候学などの基本的な考え方や過去の研究者の試行錯誤の様子の人間ドラマも交えて描いています。
    このような科学読み物は海外で出版されたものが翻訳されるケースが多い中、本書は日本人の著者による作品だけあって文章が非常に読みやすく、その表現方法も教科書的な無味乾燥な文章ではなくて、小説を読むかのような印象を受けます。今の地球が抱えるリスクや、自然科学の研究とはどのようなものか、著者の言葉は端的に表現しており、以下に抜粋します。
    「人類が放出した温室効果ガスが温暖化の原因であることが証明できないとしても、このまま放出を継続することは我々の気候に対して危険なロシアンルーレットで遊んでいるようなものだ」、「今年も去年と同じだけの雨が降り、3年前と同じような気温で、10年前と同じような海面の高さである事、これらのことに私たちはもっと感謝しなければならない」、「研究成果だけをつなげたストーリーは研究の本当の姿を物語っていない。自然科学の最先端とは、無数の袋小路に潜む立った一筋の抜け道を探り出す孤独な旅である」」
    文庫本で約400ページの大作ですが、情報量、トピックスの掘り下げ度合いともに新書とは比較にならないほど充実しています。気候変動についてマスメディアで紹介されるよりもより本質的な真実を知りたい社会人、理系の大学を進路に考えている高校生などに特にお勧めしたい1冊です。

  • 本の紹介サイトHONZ主宰の成毛さん(元日本Microsoft社長)が同サイトを立ち上げるきっかけになったと成毛さんによる解説に書いてある。ちなみに、この成毛さんによる解説だけでも読む価値があるだろう。
    成毛さんは、「残念ながら日本には科学読み物を専門とするライターすらいないのが現状だ。ほとんどの科学読み物は現役の学者が編集者に懇願され、研究の合間に書いているようだ」と書くが、同感だ。例えば、サイモン・シンのような書き手は日本には出ていない。続けて「ところが例外的に本書は、ひとたび英訳されることがあれば、英米でも間違いなくベストセラーになるであろう素晴らしい科学読み物に仕上がっている稀有な本なのだ」と言うが、こちらも全く同感で、日本人でも骨太なサイエンスノンフィクションを書くことができるんだというのがこの本を読んでいたときにずっと受けていた印象だ。

    地球温暖化問題はポリティカルな問題も絡まって色々な誤解に囲まれているように思う。そういった状況がある中で発生した原発問題も問題を難しくしている。元々は原発によって火力発電によって発生する二酸化炭素の量を減らすことができるとされていたからだ。温暖化問題と原発問題は、背景となるべき科学的な議論を飛ばして極論やときに感情論でもって議論がなされるという点も類似している。様々な擾乱要素や確率的な事象がある中で、地球規模の影響を議論するにおいては、徹底した科学的な考え方が必要になるのは自明であるにも関わらず、ときに結論を先において、そこに合う事実だけを都合よく取り出すような議論がまかり通っているように思われる。本書は、このような問題をはらんでいる温暖化問題に関して、よって立つべき科学的論拠を提供しようとするものである。

    本書は、地球規模の気候変動という課題に対して、必要と思われる科学的事実と考察を積み上げていく。古代の海水温の変動を海底堆積物から酸素同位体含有率から算出したり、グリーンランドや南極の氷床に含まれる酸素の同位体分析から古世代の気温を推計したりといった研究がその背景や根拠も含めて丁寧に紹介される。さらにスケールを広げて、地球の楕円公転軌道の離心率と歳差運動、自転軸の傾きによるミランコビッチ・フォーシングと呼ばれる数万年規模の周期的な変動についても解説される。これにより、地球が氷期・関氷期を移行してきた事実がある程度の範囲で説明される。大事なことはすべてを定量的に語ることだと意識されている。そして、こういった説明においても中心となる人物を立たせて語ることができるのが、この著者がノンフィクションライターとして評価されるべきところだ。

    一方重要なこととして、気候変動が数十年というような比較的短期間で起きることがあるという知見が氷床の研究などから得られているという。それらの気候変動イベントには、ヤンガー・ドリアス・イベント、ダンスガード・オシュガー・イベント、ハインリッヒ・イベント、などと名前が付けられているものも多い。そのようなイベントは、たとえば海洋深層水の循環に変動が起きるときなどに発生しているようだという。

    このような短期間の気候変動は、地球の気候システムの問題が線形ではなくヒステリシス特性をもっているということを示しているという。人類の活動によって二酸化炭素という温暖化ガスが増えていることは否定のしようがない事実である。また、気温が実際に上昇をしていることもある程度確実なようである。ただ、人類が排出する温暖化ガスが起こす温度の変化は、統計的な温度の変動と比べて十分に小さいという意見があることも確かだ。しかし、危険なのは、温暖化ガスの放出が最後の引き鉄になって非線形である地球気候システムのヒステリシスを超えて別の相に変換させてしまう可能性があるということだ。地球の気候システムは複数の安定解を持つ方程式に従っており、その間を切り替わるような非線形システムであるというのが著者の見解でもある。そして、そのシステムはときに数十年といったかなり短期間に大規模に再編しうるというのだ。最後の「ひと押し」になって複雑なシステムおいて、気候の暴走が始まることが懸念されている。むろん今の状態であれば「ひと押し」には全く足りていない可能性もある。複雑な地球紀行システムにおいて、 現時点では確実に何が起きるということは言えないというのが現状なのだろう。しかし、現時点で何も手を打たないことはロシアンルーレットをやっているようなものだという。このまま温暖化ガスの排出を放置することは共有地の悲劇を生むことになりかねない。こういったことが、IPCCが生まれ、京都議定書などが生まれた背景にあることについて理解がされなくてはならない。

    地球温暖化というような規模の議論をするにあたり、何を守るべき価値とするのかについても意見の一致をしていない。個々の社会なのか、人類なのか、生物なのか、地球それ自体の環境なのかによっても答えは違ってくる。また、自分が生きている間なのか、われわれを含む数世代なのか、何万年も続く未来の子孫なのかによっても答えは違ってくる。答えることができる範囲も違ってくる。立てられる問いが異なっていれば、答えも違うし、その答えを得るためのツールも違ってくることは明白だ。

    「何かが起こり始める可能性があると最初に知るのは科学者だ。ならば、それが起きないように軽傷を鳴らすのは、科学者の務めではなかろうか。可能性を認識しつつも無作為なのは、罪を犯しているのと同じことだ」というのが科学者の倫理であり、著者の矜持というものなのかもしれない。

    骨のある本。おすすめ。

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    Kindleで読むとせっかくの図や写真が小さく、これは他のものでも同じなのでよいが、巻末の脚注がひとつひとつ改ページされてしまう。おかげで途中までものすごく長い本に見えた。Kindleももう少しかな。それでも、もう少しKindle本化が進んでほしい。

  • selected by Shun (Akita)

  • 本書の素晴らしさは、HONZの成毛眞氏の書評に凝縮されており、付け足すことはないが、心に残った一文を挙げておく。

    「いかなる分野であっても、原子、分子、遺伝子といった科学の基本単位にまで還元することによって、はじめてその発展の可能性が広がっていくのだ。」

    科学研究の本質を突いた至言だろう。

    (2015/12/12読了)

  • 面白かった。
    気候の変動メカニズム。

  • とても素晴らしいサイエンスノンフィクション、科学読み物。ただ、自分がそれを読みこなす素養に徹底的に欠けていることを思い知らされて赤面する。偏読や勉強不足のあらわれ…。地球温暖化がなぜクリティカルなのか、19世紀から20世紀にかけてそれを解き明かしてきた科学者達へのリスペクトに溢れ、我々に警鐘を鳴らす。良い本です。

  • 地球の気候変動の謎、氷河期と間氷期が繰り返す仕組みや地球温暖化について、そして多くの謎の解明を果たした科学者たちの物語。

    現代の科学では、過去数十万年レベルで地球の気温の変動がわかるらしい。それは深海の海底に沈殿したプランクトンの化石や、極地の氷床から採取したアイスコアに含まれる酸素同位体の比率で、温かい時期と寒い時期ではその比率が異なるのだそうだ。

    地球規模の気候変動については、地球の公転軌道が楕円形である事、公転軌道の中心から太陽がズレている事、地軸の傾きが変化している事などなど、複合的な要因によって起こるらしい。この理論は発見したセルビアの気象学者の名に因んで、「ミランコビッチ・フォーシング」と呼ばれている。

    科学的な仕組みの解説だけではなく、理論や仕組みに迫る人間のストーリーもあり、なかなかスリリングで面白い作品であった、もっと一人づつに焦点を当てた作品も読んでみたいと思った。

  • 2015/2/22

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