いのちの旅――「水俣学」への軌跡 (岩波現代文庫)

著者 : 原田正純
  • 岩波書店 (2016年4月16日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006032982

作品紹介

有機水銀中毒「水俣病」の公式確認から六〇年が過ぎた。今もなお環境汚染、原発事故、薬害禍など、命と尊厳を脅かす深刻な問題が世界各地で跡を絶たない。人類の負の遺産としての「水俣」をあらゆる角度から捉えなおし将来に活かすべく、水俣学を提唱した原田正純医師(一九三四‐二〇一二)が、様々な現場を歩き、人びとと出会う中で、希望の原点を探った思索と行動の記録。

いのちの旅――「水俣学」への軌跡 (岩波現代文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 全く基礎知識なく読んだ。「水俣病」が過去の問題ではないことに衝撃を受けた。著者は、自ら関わった三池炭鉱炭塵爆発事件や水俣病の他、世界中の公害や化学物質による健康被害の調査に出向いて印象を語っているが、多くの症状・後遺症が、脳性の身体障害や自閉症スペクトラム症の症状に重なるということに驚いた。水俣病は、四肢の感覚障害・運動失調・聴力障害・言語障害・視野狭窄等の症状が見られ、炭塵爆発によるガス中毒症状と後遺症には、注意欠陥症状・衝動性やこだわりなどの精神症状が見られるという。世界各国の化学物質が原因と思われる健康被害も症状は類似している(これは、ドシロウトの私の個人的感想だが)。
    本書でも触れられているが、人類は現在も半減期が百億年以上というパンドラの箱のような放射性物質などをわざわざ地中深くから掘り起こして、大量使用している(ODAと称して、日本も大いに関与している)。身近に大量の化学物質が満ち溢れている現在、発達障害の子供が急激に増え続けている事実が、化学物質と無縁であると言えるのだろうか。発達障害の原因はについては 専門家も口を閉ざしている。家族の心情を考慮してのことなのかわからないが、様々な公害等の健康被害の因果関係が国によって隠蔽され続けてきた事実を読んで、ここにも事実を認めたくない国や企業の力が働いているのではないかと、勘繰ってしまう。

    読んでいると日本に限らず、そのような被害を受けた人々に対する扱いの酷さやや、再発予防意識の欠如に憤りを覚えるが、そんな中で、当事者の人々の言葉が光を与えてくれる。


    ーある日「お母さんも大変でしょう」言ってみた。すると「何の何のこの子のおかげで頑張れるとですよ」という返事が返ってきた。そして、いつも頬ずりしながら「この子は宝子ですたい」というの口癖だった。
    宝子という理由はいくつかあった。母親にいわせると「この子がわたしの食べた水銀を全部吸い取って生まれてきてくれたので、わたしも(この子の)妹や弟たちも元気でおられます。この子のが一人で水銀を背負ってくれたので我が家の大恩人です。それに、わたしはこの子の面倒で手いっぱいで他の子の面倒は全くみてやれなかったとです。それでも他の子のたちはこの姉を見て育ったために自分のことは自分でする、お互いに兄弟姉妹助け合う優しい子どもに育ってくれました。これもこの子のおかげです。」「それになあ、先生。この子がテレビにでるでしょうが 、すると政府の偉か人や会社の偉か人が見て、環境に注意するごとなれば、この子はやっぱり宝子ですたい」。ー

    どんな運命を負って生まれようとも、一人一人の命は輝いている。私たちは、この「宝子」の命を見過ごさず、早くこの親子の願う世の中していかなければならない、と強く思った。

  • イッキ読み。自然と人間の共生、というと、キレイゴトばかりなよう。人為の恐ろしさ、厳しい現実に寄り添う筆者の旅はまさにいのちの旅だ。
    足尾、水俣、三池、…最近、公害ということばはあまり聞かなくなった。でも…まだまだ苦しみは続いているのだ。

  • 著者の人となりから、むしろ人としての生き方を学ぶことができた。

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