人は愛するに足り,真心は信ずるに足る: アフガンとの約束 (岩波現代文庫 社会 328)
- 岩波書店 (2021年9月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006033286
作品紹介・あらすじ
一九八四年に医療援助活動を開始してから二〇一九年に凶弾に倒れるまで、戦乱と劣悪な自然環境に苦しむアフガンの地で、人々の命を救うべく身命を賭して活動を続けた中村哲医師。良き聞き手を得て、自らの個人史的背景とともに、熱い思いを語った肉声の記録、待望の文庫化。遺志を受け継ぐ現地スタッフのメッセージを収録。
感想・レビュー・書評
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泣
アフガニスタン 中村哲さん銃撃事件から2年 真相解明は困難に | アフガニスタン | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211204/k10013374191000.html?utm_int=news-international_contents_list-items_008
人は愛するに足り、真心は信ずるに足る - 岩波書店
https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b589305.html詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いやあ、読んでよかった。中村哲さんの書かれたものは1冊しか読めていなくて、何か読もうと思いながらそのままになっていた。今回文庫になったので読んでみた。もう本当にこの人は利他の人だと思う。なにかもう自分のことを全然考えられていない。どうしてそこまでできるのか。しかし、本当に幸せだったのだと思う。心やすらかだったのだ。「おひさまと一緒に起きて、働けるときまで働いて、そして『ああ、今日も一日が終わったな』と。明日の予定を立てて、もう八時ころには寝るんですね。その毎日ですが、やっぱり自然のリズムで、汗を流して働くというのは、非常に健康で、心身ともにさわやかな感じがします。」今の日本ではそういう幸せを感じることができなくなっているのだろうなあ。そしてアフガニスタンの一般の人々は「彼らは日本人ほど高望みがないんですね。三度のご飯が食べられること。それと、家族が仲良く故郷で一緒に生活できること。この二つを叶えてやれば、いろんな問題のほとんどは解決する。」中村哲先生のされた仕事の中では、もちろん命の水を引いてくるというのが最も大きな仕事だろうが、本書を読むとマドラッサ(伝統的な寺子屋のようなもの。モスクを中心にした識字教育などをするところ。そこでは長老などが話し合っていろいろな問題解決もしている。)をつくったということも大きかったように思う。その工事を始める鍬入れ式のときに村人たちは「これで自由になった!」と言ったとのこと。それをタリバンを育てると言って破壊しようとする。そのマドラッサで学ぶ子どもたちのこともタリバンというそうだが、政治的な活動をするタリバンも貧しい農民などが中心のようだ。それに比してテロを起こすようなアルカイダは裕福でヨーロッパで教育を受けたりしている。そこには西欧社会の矛盾が見え隠れする。「野蛮な国を文明化してやるというような奢りね。これは食えないと思います。」軽くおっしゃっているが、ここから中村先生の強いメッセージが読み取れる。それと、前半の先生自身の生い立ちなど昔話の中、北朝鮮の拉致事件についての件で、こういうことばがあった。「自分の身は針で刺されても飛び上がるけれども、相手の体は槍で突いても平気だという感覚、これがなくならない限り駄目ですね。」これも重要な発言だと思う。ところで、聞き役の澤地さん、どうしてこうも唐突に話を他に転回されるのか(展開では無く)。読みながら何度もそう思いました。
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援助ではなく自助努力が必要
助けを求められる
自主性の尊重が大事
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VIVANTを見ていて、ノゴーン・ベキから中村哲さんのことを連想しまして、本書を読みました。このような立派な方が実在したということを、忘れないようにしたいと思います。
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岩波現代文庫
中村哲 「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」
インタビュー形式で アフガニスタンの現実や自身のことを語った本。
アフガニスタンのエピソードだけでなく、幼少期や家族の思い出や死、影響を受けた本や宗教などのインタビュー。自伝に近い
自衛隊のアフガニスタン派遣について、対米追随により現地の日本人を危険に晒していると批判。国会に呼びつけといて、批判を取り消させる国会議員の態度は 残念
「人間とは関係である〜その人とある対象との響き合いの中で自分というのは成り立っている」
「組織というのは、ある事業を遂行するためのもの〜事業が成し遂げられれば、組織が続くか続かないかは二の次のこと」
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書名に惹かれて、思わず手に取った。
亡くなったニュースだけ聞いて“日本のお医者さんが異国の地で大変な仕事をなさった”と漠然と思っていたが、異国の地も、大変さも、何ひとつ自分はわかっていないことを知った。
これを読み、私に今すぐ何かをしろと先生は別におっしゃらないだろうけど、人類だの国際協力だの環境問題だのといった空虚な哲学より、まず自分と家族と隣人へ何ができるかから考えていこうと思った。 -
自分の土地で美味しいごはんを家族とともに食べて平和に暮らせる。
わたしたちにとっては当たり前のこと。
それがアフガニスタンではできない。
地球に生きる生物が、不必要に干渉し合わず、ただ幸せに暮らせる世界になってほしい。
この本は率直に言って、まったく面白くなかった。
人に読ませようとして書かれていないんじゃないかと思うくらい、独りよがり。
インタビュアーは聞き手に徹したと言っているけれど、(どこが?)ってくらい過激な意見が入りすぎ。
わたしは別にこの本に関しては澤地さんの意見は求めていないし、純粋に中村さんのお話だけが知りたかった。
自分たちが中村さんを遠くアフガニスタンから参考人として呼び寄せておいて、失礼な態度をする国会議員がいたことは忘れずに覚えておきたい。 -
生き方の道標。バイブルになるような本。
中村さんの私生活に触れている点が他と比べては珍しいとのこと。
迷ったときには何度も読み返すこと。 -
中村哲(1946~2019年)氏は、九州大医学部を卒業後、1984年にパキスタンのペシャワールに赴任し、ハンセン病の治療やアフガニスタン難民の診療に従事、その後、長年、戦乱と旱魃に苦しむアフガニスタンで、井戸・水路建設などの復興事業を行ってきた医師。NGO「ペシャワール会」現地代表。2003年にマグサイサイ賞、2018年にアフガニスタンの国家勲章を受章。2019年10月7日には、アフガニスタンでの長年の活動が認められ、同国の名誉市民権を授与された。2019年12月4日、アフガニスタン東部のジャララバードにおいて、車で移動中に何者かに銃撃され、亡くなった。享年73歳。
本書は、戦争や国家を問う作品を多数手掛けてきたノンフィクション作家・澤地久枝(1930年~)が、2008~09年に行ったインタビューをまとめ、2010年に出版、2021年に文庫化されたもの。
私は、2010年に本書の単行本を読み、その後、中村医師の自伝である『天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い』(2013年)、西日本新聞社が、生前の中村医師本人の寄稿などをまとめた『希望の一滴 中村哲、アフガン最期の言葉』(2020年)なども読んだが、今般文庫版を改めて購入し、再読した(文庫版には、遺志を受け継ぐ現地スタッフのメッセージが新たに加えられている)。
中村医師は、パキスタン・アフガニスタンに赴任当初、医師として患者の治療にあたっていたが、医学の恩沢から完全に見捨てられている現地の村々を歩き、わが目でその惨状を確かめるに至り、遂には白衣と聴診器を手放し、「百の診療所より一本の水路を」と現場で井戸掘り、水路建設の陣頭指揮をとることになる。以来現地人と協力して、1,000本を超える井戸を掘り、27㎞に及ぶ用水路を建設し、それらは1万6,500ヘクタールの農地を潤した。そうした中村医師だからこそ、現地の人びとに心から信頼されると同時に深く愛され、その存在は、日本よりもアフガニスタンでより多くの人びとに知られ、その死は、より多くの人びとに悼まれたのだ。。。
本書は、インタビューだからこそ聞き出せた、現地の自然や日常の様子などがとても興味を惹いたし、また、中村医師の、あの訥々としながらも、信念に満ちた声が聞こえてくるようで、改めて胸が熱くなる思いがした。
この夏、米国は20年に亘り駐留したアフガニスタンから撤退したが、米国軍のヘリが飛び交う下で、現地の人々はどのような日々を送っていたのか。。。文庫版あとがきで澤地氏は、本書単行本ができたときにオバマ大統領に送付したと明かしている。(予想通り反応はなかったそうだが)
真の平和のためには何が必要なのかを考えさせてくれる、中村医師からのメッセージである。
(2021年9月了)