秘密解除ロッキード事件 田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか (岩波現代文庫 社会 347)

  • 岩波書店 (2024年5月17日発売)
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本 ・本 (436ページ) / ISBN・EAN: 9784006033477

作品紹介・あらすじ

秘密指定解除が進む米国の公文書を解読し、戦後最大の疑獄事件であるロッキード事件に新たな光を当てる。「田中角栄逮捕は米国の虎の尾を踏んだから」説の真相、CIAと児玉誉士夫との関係、中曽根康弘と米政府との知られざる秘密などを探った傑作ノンフィクション。第21回司馬遼太郎賞受賞作、待望の文庫化。(解説=真山仁)

感想・レビュー・書評

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  • アメリカの大統領図書館についての本を読んだついでに読み始めたが、歴史好きとしてはこちらの方が面白かった。
    ロッキード事件に関連する人物や日米関係について、どのように図書館や公文書館を活用して資料調査を行ったのかについて、巻末の膨大な参考文献とともに知る事ができた。本当にすごいなあというのが、正直な感想である。
    内容については、各首相の日記や実録も合わせ、読み合わせることで近現代の史料をどのように読み解くかを学ぶ事ができると感じた。言及された人物について、また事件や日米関係について理解をすすめるのはその先にあるのかな、と思う。

  •  
    ── 奥山 俊宏《秘密解除 ロッキード事件 田中 角栄はなぜアメリカ
    に嫌われたのか 20240517 岩波現代文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4006033478
     
    …… 濱口 桂一郎《書方箋 この本、効キマス 第105回 》
      
    (20250327)
      
    …… 心中に燻ぶる「虎の尾説」
     ロッキード事件と言っても、多くの読者にとっては歴史上の事件だろ
    う。筆者は当時高校生であったが、田中角栄元首相が逮捕されるに至る
    日々のテレビや新聞の報道は今なお記憶に残っている。田中が逮捕され
    た頃、『中央公論』に田原総一朗の「アメリカの虎の尾を踏んだ田中角
    栄」というルポが載った。父が買ってきたその雑誌を読んで、ロッキー
    ド事件がアメリカの仕掛けた罠であり、独自の資源・エネルギー政策を
    試みた田中をアメリカが憎んだからだという見立てに感心したことを、
    半世紀後の今でも覚えている。
     
     ロッキード事件の真実とは何なのか? 今日に至るまで繰り返しロッ
    キード本が刊行されてきていることからしても、それは日本人が常に問
    い続けてきた問題であった。これに対して、アメリカ政府が秘密指定を
    解除して公開された文書を徹底的に読み込んで、アメリカ側からの視点
    でロッキード事件を再構成してみせたのが、原著が刊行された2016年当
    時、朝日新聞記者であった奥山俊宏による本書である。彼は、ワシント
    ンDCの国立公文書館や全米各地に散らばる各大統領図書館などで、膨
    大な資料の密林に分け入り、当時のアメリカ政府の中枢で何がどのよう
    に行われていたのかをリアルに再現する。
     
     その結果浮かび上がってきた姿は意外なものであった。アメリカ政府、
    とりわけニクソン、フォード政権で外交を担っていたキッシンジャーは
    田中角栄を嫌っていた。その嫌いっぷりは本書冒頭で繰り返し出てくる。
    ただし、それは田原の言う資源・エネルギー外交ゆえではなく、田中の
    粗野で粗雑なスタイルへの嫌悪感であった。とくに、日中国交回復に伴
    う日米安保条約の台湾条項問題で、「台湾条項は事実上消滅したという
    ことか」というメディアの問いに、勝手に「字句にこだわる必要もない」
    と答えたことに激怒したという。
     
     しかし、ロッキード事件そのものに対しては、アメリカ外交の闇を暴
    こうとする上院外交委員会多国籍企業小委員会(とりわけジェローム・
    ロビンソン)と、それを抑えようとするキッシンジャーらアメリカ政府
    とのせめぎ合いが激烈であった。田原の「虎の尾」説が成立する余地は
    ない。もっとも、田中の名前はあるが中曽根の名前がないことを知って、
    心置きなく文書を日本の検察に渡したという可能性は否定しきれない。
     
     ところが、ロッキードで名前が出ながら無事だった他の政治家にとっ
    ては、「虎の尾」説はずっと心の中にわだかまっていたのではないか、
    というのが著者の見立てだ。とりわけ中曽根康弘は、三木武夫政権で自
    民党幹事長として真相解明を掲げながら、陰でアメリカ政府に対し「私
    は、合衆国政府がこの問題をもみ消すこと(MOMIKESU)を希望
    する」とのメッセージを送っていた。若き日には民族主義的であった中
    曽根が、アメリカ世界戦略の下で日本を「不沈空母」と呼ぶに至ったの
    は、アメリカの「虎の尾」を踏まないようにその行動に追従する道を選
    んだからではないか、というのだ。
    ── 奥山 俊宏《 岩波現代文庫》

  • 【本学OPACへのリンク☟】
    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/716078

  • 東2法経図・6F開架:B1/8-2/347/K

  • 【蔵書検索詳細へのリンク】*所在・請求記号はこちらから確認できます
     https://opac.hama-med.ac.jp/opac/volume/482276

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著者プロフィール

奥山 俊宏(オクヤマ トシヒロ)
朝日新聞編集委員
朝日新聞編集委員。東京大学工学部卒。1989 年朝日新聞社入社。社会部などを経て、特別報道部。2009年にアメリカン大学客員研究員。『秘密解除 ロッキード事件』(岩波書店)で司馬遼太郎賞(2017 年度)を受賞。同書や福島第一原発事故やパナマ文書の報道を含めた業績で日本記者クラブ賞(2018 年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書)。

「2019年 『現代アメリカ政治とメディア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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