処世術は世阿弥に学べ (岩波アクティブ新書 13)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784007000133

感想・レビュー・書評

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  • 世阿弥を競争社会において生き抜いたビジネスリーダーとして捉え、彼の残した言葉は現代に生きる人間においても参考になるとして紹介されている。

    夢幻能や、旅による境界越え、幽玄というブランドイメージ、秘すれば花など世阿弥は能のベースを作った。

    印象に残ったのは
    初心は失敗・試練を思い出し、今の試練の対処を考える
    時節感当:自分のタイミングだけではなく他人の求めるタイミングを見計らうこと
    離見の見
    変化し続けること、
    家(芸)を継ぐものは才能があるものが継ぎ、その者は傲慢にならないこと
    という部分。
    初心忘るべからず、や 
    秘すれば花 が
    現代では違う意味になっていることが興味深かった。

    命には終わりあり、能には果てあるべからずという言葉からも、世阿弥は物事を広い視野で捉えることのできる人だったのだなと感じた。

    風姿花伝は能のことが書かれているだけなのかと思っていたが、普遍的であり、処世術だと言う著者の主張がよくわかり論語よりも、風姿花伝を読んでみたくなった。

  • 世阿弥も能も、恥ずかしながら名前を聞いたことがあるくらいだったけど、世阿弥、とても興味深い。風姿花伝の幼年期の子どもの稽古についてのことばは、現代でも小さな子どもを育てるにあたって非常に共感できる。

  • vol.25 日本初のマーケターは世阿弥?!http://www.shirayu.com/letter/2009/000070.html
    【芝蘭友のトップストーリーニュース】

  • 学生時代の国語の授業で見せられた能があまりにも退屈だったので、50歳を超えてしまった今までずっと敬遠していたのですが、NHKの「100分 de 名著」で「風姿花伝」を取り上げたのを見ると、世阿弥は実にいいことを言っているんだと感心し、とりあえず「100分 de 名著」での解説の土屋氏の本を読んでみることにしました。
    当然ながらNHKの番組内容と結構かぶっていますが、なかなかおもしろかったです。ここでの「処世術」というのは、一般的なニュアンスの「その場しのぎ」ではなく、むしろ人間としてかっこいい「生き方」「老い方」といった感じ。著者は「処世術」の方が「人生論」より的確と考えてこのタイトルにしたそうですが、たしかに「人生論」では説教くさすぎて問題があるものの、「小生術」も現在の用法ではちょっと軽すぎる言葉であまりよくなかったような気がします。
    まあ「かっこよく老いる生き方」に当たる適当な言葉は確かにないのでいたしかたないのでしょうが。
    これは、今の僕にはまさにフィットする本でした。能も、一度見てみたくなりました。

  • 風姿花伝よむべし

  • ものごとを深く読むとはこういう人のことを言うのだろうな

    世阿弥と美輪さんの、舞台登場時の意識動作が似てる
    観客に向けて、気合いを見せる。美輪さんなら、つめていた息を吐いて、自分の存在を知らしめる

    この本は、確かに処世術

  • [ 内容 ]
    能の大成者・世阿弥は、マーケティングの天才でもあり、彼が残した『花伝書』は優れた戦術書だった!
    「男時・女時」「目前心後」「離見の見」などのキーワードから、現代ビジネスにも通じる人生の智恵を伝授する。

    [ 目次 ]
    第1章 世阿弥の人生戦略論(リスト時代の「初心」;チャンスをつかむ力こそ、「時節感当」;勝負の波を読む「男時・女時」 ほか)
    第2章 世阿弥の創造性(「旅」の発見―境界を越える方法;能は情報カプセル―「名所教え」;能は「夢」のカプセルのなかにある―夢幻能 ほか)
    第3章 人生のシステム 世阿弥の人生論(幼年期;少年期前期;少年期後期 ほか)

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • P-4
    ◆世阿弥にとっての「初心」とは、新しい事態に対応する時の方法であり、
    試練を乗り越えていく戦略のことである。
    つまり、「初心」を忘れるなというのは、第一には、人生の試練の時に、
    どうやってその試練を乗り越えていったのかという戦略を忘れるなということなのだ。

    P-5
    ◆世阿弥は「初心」には、三つの「初心」があるといっている。
    言い換えれば、三つの試練の時があると言っている。
    最初の初心は、若い時の初心である。次に、人生のそれぞれの時にまた初心がある。
    そして最後に老後の初心がある。世阿弥はいう、「老後の初心忘るべからず」。
     若い時の「初心」を忘れてはならないのは、若い時の失敗や試練を忘れないことが、
    のちの成功の糧となるからだ。

    P-5
    ◆普通に考えられているような「最初の志」ではなく、最初の試練や失敗こそが
    「初心」という言葉の本当の意味である。
    失敗や試練のない者は、ついには本当の成功にはおぼつかないといっているのだ。
    人間には、いつも試練がやってくる。
    何か新しいことがあれば、それはいつでも試練である。
    その時に助けになるのは、かつての若い時の失敗であり、試練である。

    P-7
    ◆「初心忘るべからず」とは、それがなんであれ、いまだ経験したことのない事態に対して、
    自分の未熟さを知りながら、その新しい事態に挑戦していく心の構えであり、姿に他ならない。

    P-8
    ◆中年になったら初心などないというのは間違いである。
    中年には、中年の初心がある。老人には老人の初心がある。
    それは、今の時代が示している。学生であった者がリストラされたりするのを見ると、
    まさしくそこに「初心」の時がきていることを知る。

    P-13
    ◆この「時節感当」という言葉には、いくつかの人間の能力についての考えが言われている。
    一つは言うまでもなく、タイミングをつかむ能力である。時の節目を見る能力である。
    どんなに正しいことをいっても、それがタイミングを外してしまえば、
    決して人々に受け入れられることはない。行動にも説得力がなくなる。

    P-14
    ◆私たちは現在の中に生きている。
    この現在の中で戦うには、ただ先見の明を誇るのではなく、
    この現在に的確に「当たる」考えが必要なのだ。
    世阿弥はそのことをよく知っていた。
    何しろ彼は、あなたと同じようにこの現在の内に生きて、ここで結果を出さないことには、
    生きていくことができない人間であったからだ。

    ◆タイミングとは、この「諸人」の心の動きを読み取る能力のことに他ならない。
    タイミングは「人」の心の動きのことであるとするならば、タイミングを逸したのは、
    結局、人の心をつかんでいなかったことに他ならない。
    正しいだけでは、ダメなのだ。その正しさを人々の心の中に受け入れてもらう「時節」を
    つかまないといけない。

    P-15
    ◆人は、当り前のことだが一人では生きていけない。
    あなたは時間と場所を他人や「諸人」と共有して生きている。
    こんな当たり前のことを、つい私たちは忘れる。
    それも人間であるからであろう。自分のタイミングしか見ていない。
    他人のタイミングこそ、もっとも大事なことなのだ。

    P-19
    ◆ライバルの勢いが強くてどうも押されているな、と思う時は、
    小さな勝負ではあまり力を入れず、そんなところでは負けても気にすることなく、大きな勝負に備えよ。
    「女時」時に、いたずらに勝ちにいっても、決して勝つことはできない。
    むしろ、「男時」がめぐってくるのを待って、そこで得意の芸を出し、一挙に勝ちにいくのだ。
    それが世阿弥の教えであった。


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    ▼ 100文字感想 ▼ 
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    マーケティングや商売の本によく出てくるのが、世阿弥
    の花伝書。なるほど、マーケットの把握の仕方、消費者
    のニーズへの応え方、など、世阿弥の考えは今の社会
    に通じる。というか、人って室町から変わってないの!?


    ----------------------------------------------
    ▼ 5つの共感ポイント ▼ 
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    ■「初心忘るべからず」「初心」の本当の意味は、最初の
     試練や失敗。

    ■タイミングは、「人」の心の動きのこと、タイミングを
     逸するということは、人の心をつかんでいなかったこと

    ■「離見の見」自分を客観的に、外から見る努力。つねに
     客席から見える自分を考え、そこに注意する

    ■停滞することなく変化することこそ、芸術の中心

    ■「序破急」 「序」…はじまり 「破」…時間がたち、
     気持ちが熟す頃 「急」…クライマックス

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著者プロフィール

明治大学名誉教授

「2022年 『独身者の思想史 増補版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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