日記をつける (岩波アクティブ新書)

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レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (169ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784007000164

感想・レビュー・書評

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  • 日記をつけることとは何か、自分にどんな影響を及ぼすのか、日記はどういうふうにつけられているのか、そういった内容を、作家たちがつけた日記を紹介しながら語られる。
    愛人や妻との情事を「宝」と表現した山田美妙の日記などがとても興味深い。簡潔な文章のなかに生があって、エロチック。
    日記は、人の一生、そのものだ。

  • 作家の日記の紹介が主。日記すらも公開されてしまうのが作家の運命である。

    (以下引用及び要約)
    「書く」は、書いた文字がそのときだけそこにあればいいという、どちらかというとそういうものであるのに対し、「つける」は、しるしをつける、しみをつける、がそうであるように、あとあとまで残す感じがある。いつまでも残るように記すこと。これが「つける」なのだと思う。だから日記は「つける」のだ。(pp.34-35)

    雨の日の日記は、その一日が、いかに晴れやかな舞台をふもうと、内面的なかげりにおびた消極的なものになりがちだ。そして晴れた日は、晴れ晴れとした調子のものになるだろう。日記は空とつながっているのだ。(p.41)

    司馬江漢が鯨を追いかけていた、ちょうど同じ頃、ローマで、詩聖ゲーテは何をしていたか。(p.42)

    ・樋口一葉、二十歳の日記
    一葉は連日とても遅くまで起きていた。毎日のように早起きをしている。体にこたえたろう。母と二つ年下の妹との三人ぐらし。裁縫と洗い張りで整形を立てた。一家を支える彼女のきびしい生活がうかがえる。(p.47)

    ・内田百閒、晩年の日記
    それは、食べることに興味をもっていたというより、その他のことを書く必要はないからである。彼は老年になっても次々に力のこもったものを書き発表していた。心のなかのことは発表され、外に出ているので、日記には書くことがないんどあ。寝ること、食べること。その確認に日記はついやされた。日記をつける習慣だけがつづいた。いらないものが消えて、つけるということだけ、そ習慣になった。だからといってその人らしさがなくなったのではない。書くということ、書いて生きているのだということが、はっきり取り出せるように見えてきた。彼の内部は必要なものだけをかかえて、いきいきと働いていたのだと思う。(p.52)

    ・山田美妙、隠語「宝」
     さて、主に末尾に「宝一」ということばが見えるが、「宝ニ」もある。これは、とめとの性交とその回数を示すものだろう。
     この他に「宝一、二を試みて不」(一〇月三〇日)もある。(中略)形容をそえるものもある「宝一 大美」「宝一 大妙」「宝一 至妙」などは満足度を示すものらしい。(pp.92-93)

    人間は疲れると、文章のなかに「とても」とか「たいへん」とか「非常に」とか「いちばん」とか「ものすごく」などが多くなるのである。(中略)なんとか早く切り上げたいので、はっきりしたことばを使ってしまうのだ。(p.104)

    ・他人の会話をつけておく――夕立、初対面の男女の例(p.105)

    ・幸田文 日常のささいな出来事から随筆を生み出す(p.128)

    ・十大ニュースを決める
    大みそか、紅白が始まる前に、僕はみかんを食べながら、「一〇大ニュース」の選定にとりかかるのである。これは、どきどきするものである。そのうちにできあがって、正式発表。決まれば異論はない。こうして無事、日記少年の一年が終わるのだった。(p.137)

    ・大手拓次と日記――「n」への片思いについて
    大手拓次は日本象徴詩のさきがけとなった人だが、ともかく詩を書く人なので、ことばが少ない。夢中になるとますます少ない。ことばも足りないから自分のつけた日記は資料にはなりにくい。だから二人のこともうまく振り返ることができなかったのではないか。そのためかどうか、nさんの姿はまもなく日記から消える。(p.147)

    あることをおぼえていることで、他人を幸福にすることはある。他人をしあわせな気持ちにしようと思っている人は、ものをおぼえようとするものである。(p.148)

    愛するということは、あるいはたいせつな人をもつということは、記憶に懸命になる、そうさせられるということである。(p.149)

    こんなことも、つけておこう。すべて、時間がたつと忘れやすいものばかりである。(p.151)
    家の間取り/窓からの風景/近所のようす/書棚のようす/行きつけの店/衣服の傾向/会社の人たちの描写/いまの仕事/家族のありさま/男性観あるいは女性観/いちばん心を占めている問題/政治、社会の大きな動き

    自分の批評家がひとり生まれる。その批評家はときどき現れ、消えていく。日記をつけることは、自分のそばに、自分とは少しだけちがう自分がいることを感じることなのだ。ときどき、あるいはちょっとだけでも、そう感じることなのだ。その分、世界はひろくなる。一日もひろくなる。新しくなる。(p.163)

    日記をつけていると、自分のなかの一日のほこりがとり払われて、きれいになるように思う。一日が少しのことばになって、見えてくるのも心地よいものだ。ぼくはその気持ちのなかに入りたいために、日記をつけるのだと思う。(p.164)

    (15.10.11読了)

  • 日記を題材としたエッセイ集。著者の日記愛が感じられて、読んでいてほっこりした気分になる。
    毎年11月にはワクワクしながら来年の日記帳を選び、1月から勢い込んで書いていくのだが、花粉で鼻水が走る頃になると途絶えがちになる。そうかと言えばGWでまたぞろ日記を書き始め、なんてことを繰り返す。かくして粗密のある日記帳が毎年1冊ずつ増えていく。
    このエッセイを読むと、『それでいいのだ』と思えてくる。でも著者のように毎日の終わりに日記を書く、そのこと自体が至福の時になるなんて素敵だな、と思う。

  • 前にタイトルだけは知っていた本。
    日記のつけ方からさまざまな日記文学につながっていく。ここでも、日本人独特の天気を記す日記が指摘されていた。
    高見順の日記にほれぼれし、日記文学に触れては読みたいと思う。
    そして、日記をつけたくなる本。

  • 公開するつもりなく書かれた文章。
    やはり面白いものもあった。

    幸田文さんの日記は整いすぎている感もあるけれど、他の人があまり気に留めないこともよく観察して書き込まれていて、やはり作家さんは違うなと思った。機会があったら幸田さんの文章をまとめて読んでみたい。

    一年間の日記をつけ終えた後での、自分の十大ニュースというのを考えてみるのもなかなかよさそうである。

  • 1

  • 日記のいろいろが紹介されています。本文のまず始めのページには、イタリアの働く子供の日記の手書きのページが紹介されていて、それだけでもう、やられた!という気分になりました。

    筆者が小学生のときの日記に書かれた担任の先生の、気の利いた優しく鋭い赤インクのコメントを読んでは、「担任の先生ってえらいなあ・・・」と思う。

    名作に登場する日記の記述。それも日本だけではなく海外の作品からも紹介されています。また、文豪が実際に綴った日記も。

    日記というものが、こんなにもさまざまな形、ありとあらゆる重さで書かれている事実も興味深く、そして、自分のために書いたものであっても、時を経て他人に読まれるものであるということをあらためて知り、とても不思議な気分になりました。

    文中にはいろんな日記文学が紹介されているので、読書ガイドとしても見逃せない1冊です。ここに出てくるもの全てを読みつくしたい気持ちになっています。

    また、日記に対する心構えも記されています。
    とはいっても、「こう書くべし」なんて重い気持ちにさせるのではなく、「結局、したいようにすればいいのだ」と最後はまとめてくれる、そんな背中押しの1冊となっています。

    日付と曜日、天気など、ささいなことでも単なる記録を超え、すべての事が大切な要素。
    そして、取るに足らないように感じる、いつも同じように思える出来事でも、書いておけばそれは大切なドラマになりえるんだなあ。。。と、あらためて、自分の日記を楽しんでつけたいな、と思い直すきっかけになる素敵な本でした。

    10年日記に日常を綴って3年目ですが、なんでも素直に書いておこう!とあらためて思いました。

    【2011.2.3 Blogより】

  • 読めば日記をつけたくなる。日記は書くものじゃなくてつけるもの。手書きがいいね。

    老若男女の日記文学が紹介されていてよかった。

  • 巻末の参考文献一覧が一番参考になった。

  • すっかり読み飛ばした。書き方、とかこれがいいってのはない(自由だから)他人の日記の引用は非常におもしろかった。(07.7.19)

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著者プロフィール

現代詩作家。1949年、福井県三国町生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業。詩集『水駅』(書紀書林・第26回H氏賞)『渡世』(筑摩書房・第28回高見順賞)『空中の茱萸』(思潮社・第51回読売文学賞)『心理』(みすず書房・第13回萩原朔太郎賞)『北山十八間戸』(気争社)、エッセイ・評論集『忘れられる過去』(みすず書房・第20回講談社エッセイ賞)『文芸時評という感想』(四月社・第5回小林秀雄賞)『詩とことば』(岩波現代文庫)『文学のことば』(岩波書店)『文学の空気のあるところ』(中央公論新社)など。

「2016年 『過去をもつ人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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