精神の生活 下 第二部 意志 (岩波オンデマンドブックス)

制作 : 佐藤 和夫 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784007302503

感想・レビュー・書評

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  • アーレントの最後の作品。

    「精神の生活」は、「思考」「意志」「判断」の3部構成になるはずだったのだが、アーレントはこの「意志」を一通り仕上げた翌週、「判断」の標題と2つの題辞からなるタイトルページをタイプしたところで、心臓発作で死去。

    というわけで、本当に最後の「仕事」である。

    難解なアーレントの著作の中でも、もっとも難解と言われる「精神の生活」だが、「思考」は、そこそこついていけた。多分、西洋哲学の形而上学的傾向を批判し、乗り越えを目指すということで、アーレント独自の見解はあるものの、形而上学批判は多くの人がやってるし、対象となっている哲学者もソクラテスをはじめとして有名な方々だったからかな。

    そういうわけで、「精神の生活」、それなりにわかると思って、「意志」に進むが、ここで一気に難度が上がる。

    アーレントによると、そもそもこの問題を取り扱っている哲学者があまりいない、とのこと。

    「意志」は、「自由」に関わること。決定論的な世界観では、「自由」はないので、「意志」もあまり意味がないということか。

    つまり、アーレントがターゲットにしているのは、「思考」では「形而上学」、「意志」では、「決定論」なんだと思われる。

    まあ、その辺までは、分かる。

    扱われている哲学者のうちヘーゲル、使徒パウロ、エピクテトス、アウグスティヌスというあたりまでもなんとか分からなくもない。

    が、トマス・アクィナス、ドゥンス・ソコトゥスと中世スコラ哲学の世界になると急速についていけなくなる。

    そういう議論を踏まえながら、ニーチェ、ハイデカーにたとどりついて一応の結論に至るのだが、このニーチェ、ハイデカーの部分が、かなり難解。

    ニーチェで取り上げられているのは「権力への意志」という遺稿集。なんで、そんな編者のバイアスがかかっている本を選ぶんだよ〜、と???がたつ。で、その解釈も裏読みが続く。

    そして、ハイデカー。ここは、ハイデカーの「ニーチェ」解釈を中心に議論が進んでいて、前の章のニーチェが分からない私には、一層の混迷でしかない。

    アーレント、やっぱり最後まで恐るべしでした。

    というわけで、途中で意味不明になって、後半は文字を追っかけているだけになったのだけど、なんだか、アーレントの意図みたいなのは伝わってきた気がする。

    この本でのターゲットは、多分、ハイデカーなんだろうな。

    アーレントはハイデカーの弟子で、一時、愛人でもあった人。

    ナチが政権を取った後、ハイデカーはナチズムに加担、アーレントは亡命と運命は別れる。

    戦後、2人は再会して、交友関係を再開する。

    アーレントのハイデカーへの尊敬と愛情、そして反感、憎悪などの複雑な感じが、ここで難解なハイデカー批判として文章化されているように思える。

    このハイデカー批判の前提として、ナチズムとの関係のある「権力への意志」がニーチェの著作として論じられているのかも?

    西洋思想全体の批判を試みたアーレントの最終ターゲットは、師のハイデカーの乗り越えだったんだな〜、と。

    アーレントは、最後まで、このハイデカー批判を本に入れるかどうかを悩んでいたが、「ハイデカーも高齢なので、多分、この本は読まないだろう」と思って、本にいれることにしたらしい。(結局、ハイデカーよりアーレントの方がさきに亡くなってしまったのだが。)

    友情を大切にするアーレントらしいエピソード。

    というわけで、西洋思想全体への批判は、概ね、この「思考」と「意志」までで、「判断」で、アーレントなりの乗り越え案が提示される予定であったはず。

    が、その「判断」は、タイトルページしか書かれなかった、という。

    自分の著作で、自分の言いたいことが唯一のメッセージにならないように複雑な迷路を築いていたアーレントらしい終わりかも。

    が、ミステリー的な関心で、「判断」は、どういう内容だったのか、という興味は尽きないし、アーレントの本当の意味での「最後の思想」を知りたいという強い欲求があるな。

    その辺は、「カント政治哲学講義録」が、その内容を示唆しているということになっていて、当然、そちらも読むことにする。

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著者プロフィール

1906-1975。ドイツのハノーファー近郊リンデンでユダヤ系の家庭に生まれる。マールブルク大学でハイデガーとブルトマンに、ハイデルベルク大学でヤスパースに、フライブルク大学でフッサールに学ぶ。1928年、ヤスパースのもとで「アウグスティヌスの愛の概念」によって学位取得。ナチ政権成立後(1933)パリに亡命し、亡命ユダヤ人救出活動に従事する。1941年、アメリカに亡命。1951年、市民権取得、その後、バークレー、シカゴ、プリンストン、コロンビア各大学の教授・客員教授などを歴任、1967年、ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチの哲学教授に任命される。

「2018年 『アーレント=ハイデガー往復書簡 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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