3001回ぶたれた男の子 (旺文社創作児童文学)

  • 旺文社 (1991年3月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784010695142

感想・レビュー・書評

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  • 表紙の海の中の絵が忘れられない作品。

  • 読み直してみたけど……面白いとは思えない。子どもの時も面白いとは思えなかったけど、課題図書だったのでこの本で感想文を書いたのは覚えてる。
    だって、これすごく『わかりやすい物語』だったのよね。どんな風に書けば大人が気に入るかというポイントが見えやすいので、それに沿って『真面目な感想文』を書いた。
    嫌なガキだなと自分でも思う。でも、そういうのが見えちゃう自分が大嫌いだったんだよな。

    まずは物語から。
    いじめられっ子の唐沢ケイを沢木めぐみが助けることから物語は始まる。ねこのふんをかけられて臭いケイに金のしっぽの青い魚のハンケチを渡すと使えないと突き返されてしまう。めぐみはそのままケイについてケイの家まで行き、ケイのお家が貧しいことを知る。そして、スニーカーとトレーナーをプレゼントすることに決める。
    スニーカーとトレーナーを買いに行く途中でケイと双子だというメイに出会う。ケイが実は金の尾っぽの魚で、海の底の魚の国からやってきたことを知らされる。メイの話は荒唐無稽で信じられないことばかりで、めぐみは嘘だと思おうとするが、本当かもしれないとも思う。ケイは女王の真珠のネックレスを盗もうとして、真珠を全て失くしてしまう。真珠の数の3001回、ぶたれるためにケイは人間の姿で地上にいるのだと。
    半信半疑のめぐみだったけれど、ケイと一緒にいたくて、「もう、ぶたれないで」と伝える。ケイはめぐみの言葉のとおり、ぶたれないようにすることにする。
    ケイは少しずつクラスに馴染み、めぐみはケイにトレーナーとスニーカーをプレゼントする。でも、ケイのいじめっ子たちにそれをからかわれて、「トレーナーとスニーカーをプレゼントしたことを話したケイ」が許せなくなる。思わず手をあげてケイをぶつと、ケイは魚になって魚の国に戻って行ってしまった。

    というもの。さて、大人が好きな要素が沢山詰め込まれてる。
    まず、「めぐみ」のキャラ。いじめを止めるという正義感溢れた素敵なキャラ。
    次に「ケイ」のキャラ。いじめっこだったのに、めぐみのためにいじめっこに「ぶたないで」と言える勇気を持っている。
    さらに「メイ」不思議なキャラだけど、ケイを心配しているお姉さん。
    次は「魚の王国」という不思議で神秘的な世界観。ワクワクドキドキしますね。……ごめん。しなかった。
    最後に物語。「めぐみの手を避けることをしなかったケイ」切なくなりますね……ごめん。切なくないんだわ。

    大人が「ここを見てくれ」と思ってる部分はわかる。けど、子供は馬鹿じゃないんだよな。この物語には欠点がありすぎる。

    次は欠点を突きまくる。
    まず「めぐみ」は正義感溢れるキャラなのか。
    んなわけあるか。このいじめを止めたのは10月の終わりかけということが作中には書かれてる。少なくとも七カ月は彼女はこのいじめを放置してたことになる。なにせ最初の文章が「また、やられてる。」3pなのだから。
    そんなキャラクターが「正義感溢れている」わけがない。
    でも、それを正当化するための「いじめの理由」が最初のほうにはこれでもかと書いてある。まず、服も靴もずっと同じでぼろぼろという見た目の問題。……この辺りは時代もある。たしかにこの時代は服が同じでぼろぼろでも、問題視されなかったし、いじめの対象ではあった。でも、児童書でそれを書くのは最悪だ。
    さらに「クラス対抗リレーで負けたのはケイが転んだせい」という、『今日はいつもと違う理由がある』ことになっている。……服装でいつもいじめてるなら、他の事は関係ないだろうが。

    そして、『ケイ』はめぐみを好きになる。
    お決まりの恋愛をここに持ってくるのは悪手過ぎるし、そもそも7カ月もいじめを見てただけの人間をいきなり好きになるなんて、そんな馬鹿な。という部分もあるけど、それよりも文章が「めぐみを好きになる」雰囲気が一つも見えない。ケイはクールだし、普通に接してるように見える。なのに、『ひっそり好きでめぐみの事を思って念じてた』……ストーカーか?

    次に唐突に出てくる『メイ』と『魚の王国』
    物語としてはもう少し丁寧なエピソードが欲しいところ。淡々とした文章で、いきなりメイが出てきて、魚の王国の話をし始められても、いきなりファンタジー??としか思えない。ただ、この辺りは『表紙の絵』がそれだということがわかるので、表紙に助けられてると思う。
    では、ここからめぐみが奮闘していじめをやめさせるのか??という話かと言えば、そうではない。めぐみがやるのはケイに「もう、ぶたれないで」という事だけ。そして、なぜか素直に従うケイ。そして、なぜか「ぶたないで」と言っただけでぶたなくなるケイの母親といじめっこたち。……ちょっと待て、そんなわけあるかと突っ込みたい。

    代わりに物語は『ケイが実はかっこいい』ことが教室内でバレて、『歌もうまい』ことが発覚する。……つまり、クラスメイト達に好感を持たれるようになる。そして、クラスメイト達と仲良くなったケイは聞かれるままに、トレーナーとスニーカーをめぐみから貰った話をするという。
    元が魚だし、ここまで素直にめぐみの言葉を聞いてるなら、そりゃ『聞かれたら素直に話す』よね。でも、めぐみは怒り出し、ケイをぶつという。
    最後の1回は「好きになった相手」だったというオチにしたかった作者の思惑がわかりやすすぎて萎える。
    そして、そのオチで満足してるからなのか、ケイとめぐみの『好き』もすごく軽い。ケイは「助けてもらったから好き」という程度で、めぐみも「よく見たら、見た目がいいから好き」程度にしかみえない。

    恋愛っぽい形にしてみたけど、恋愛ではなくて友情?いや。友情にすらなってない感じだけど??という、なんとも浅い繋がりしかみえない。


    表紙は綺麗で好き。物語はスカスカ。
    やっと『好き勝手感想』が書けて満足。ごちそうさまでした。

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著者プロフィール

東京生まれ。「立原えりか作品集」(思潮社)、「いわさきちひろ名作絵本」シリーズ(講談社)など著書多数。

「2020年 『たぬきのいとぐるま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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