インディアナ、インディアナ

制作 : 柴田 元幸 
  • 朝日新聞社
3.82
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本棚登録 : 141
レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022501875

感想・レビュー・書評

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  • 時計の振り子がゆっくりと左右に大きく振れて、向こう側がうっすら透ける扇形の白い幕を広げては閉じてゆく。そこへ描き出されるのは水底に沈んでいた記憶の断片で、明確で鮮明な輪郭をもった水彩画の趣がある。ときおり血が迸る。炎が吹き上がる。憤怒と悲嘆が垣間見える。失われた物と喪われた人の面影ばかりがひるがえってひらめく。けれども、その一幅一幅がどうしようもなく美しくて私の目には涙が滲んでしまう。
    いとしいノア。いとしいオーパル。
    二人が交わした色褪せない言葉の花びらが瞼の裏で止まない雨のように降りしきっている。

    私はこれまで起きた出来事をできるだけたくさん覚えていたい。それが繋がるのが明日なのか一カ月後なのか十年後なのかわからない。そのいつかのために覚えていたい。

  • 非常に通好みの小説、という感じでした。
    「優しい鬼」がものすごく良かった、ということと、柴田さん訳で安心、というのがなければ、たぶん途中で投げ出していたかも。順番逆で良かった。

    このレアード・ハントという作家は、作品の設定(人間関係とか時代とかバックグラウンドとか)を意図的に小出しにして、細部をパズルのように見せていきながら、ゆっくりゆっくり全体像を浮かび上がらせていく作家なんだなぁ、というのがこの2冊で分かるのだけど、でも、この「インディアナ、インディアナ」は、さすがに出し渋りすぎだろー!と思った。
    7章あるんだけど、6章目か7章目までいかないと、事実関係がほんの一部しか分からない。「優しい鬼」もたいがい事実関係が分からないまま引っ張られたと思ったけど、こっちに比べればめちゃくちゃ親切だったと、今は思う。

    そして、その最後の方がとてもいいの。
    頑張って読んだかいがあったと思う。今まで読んできたパズルがゆっくり像をなしていって、ゆらゆら揺れていた影絵たちの意味が分かる感じ。
    一方で、ノアの悲しみの理由が分かることで、それまでの困惑が一気に悲しみに変わって押し寄せてきちゃうんだけど。

    ノアとオーパルの二人の出会いの場面を読んでいると、特殊な能力だとか、頭がいいとかよくないとか、そういうものって、幸せなひとときとはなんの関係もないんだなぁ、と思う。

    あとがきを読んで、著者の経歴を見てちょっと驚いた。
    インディアナに思い入れがあるみたいだから、そこで生まれて、そこからあまり長い期間出たことのなかった人なのかと思ったら、全くその反対だった。シンガポールで生まれて、ソルボンヌ出て国連報道官? ええ? と単純にビックリした。

    読んでいる間はかなり困惑させられるんだけれど、でも、ちょっと癖になる作家かもしれない。

  • レアード・ハントがプロットよりヴォイスの作家であること、本書は「情で読める」が実験的な手法を使うことを改めて実感する。ネバーホームで女性兵士だったヴォイスが、ここでは”普通”ではない精神のカップルとなり、じんわりと愛と喪失のドラマが浮かび上がってくる。

  • 断片的な物語の重なりから、ノアたちに起こったことや、マックスが何者なのかがはっきりしてくると、何度もページを戻って読み返したくなり、交わされた会話や、淡い記憶のエピソードにもう一度ジンときた。

  • 心を少し病んだ男が思い起こし、錯綜する過去と今。
    ひどく不穏な感情に満たされているけれど、そこに私たちは美しさも感じる。

    廃墟の美のような。

  • 主人公のノアの記憶の中をゆっくりと行ったり来たりしながら、人物の関係性や過去が次第に明かされていく。
    問題を抱えた人間の純粋さや生きにくさが哀しいが、この物語は、とても美しい。

  • まだ新しいのに絶版なんですね
    『優しい鬼』がとても好きだったから、探してみたらすでに絶版で中古でなんとか手に入りました。

  • 切れぎれの回想、現在のノアの心理、ノアの父ヴァージルや母ルービーをめぐる一連の奇妙な逸話等々…。年老いて病んだ男の人生の喪失感とユーモアが美しい、人気翻訳家が惚れ込み、ポール・オースターも絶賛の本邦初翻訳小説。

    友人に勧められた作家/訳者だが、勧められた作品が図書館になかったので、同じ作家/訳者の違う作品を読んでみた。残念ながら何の魅力も感じず、久しぶりに途中で断念。
    (E)

  • -思い入れの深い訳書を挙げて下さい
    たくさんありますが、レアード・ハントの『インディアナ、インディアナ』を挙げます。僕が翻訳した中でも、とても美しく、悲しく、素晴らしい本です。そして、一番売れなかった本のひとつです。

  • どこを切ってもきれい。あとがきで、柴田さんが数年前、これだと思ったアメリカ作家3人にケリー・リンク、ポール・ラファージ、レアード・ハントを挙げているけれど、そのなかでも情感を揺さぶる鼓動をいちばん強く感じた。モノクロの風景の中に、ぽつんと取り残されたような寂寥感。透明度の高い文章に、ゆったりと浸る感覚。ちょっと不思議な手触り。もちろん、いい意味で。

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