ひとがた流し

著者 : 北村薫
  • 朝日新聞社 (2006年7月発売)
3.54
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  • 117レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022501998

ひとがた流しの感想・レビュー・書評

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  • アナウンサーで独身の千波。
    作家でバツイチ、ひとり娘のさきと共に暮らす牧子。
    元編集者でバツイチ、写真家の類と再婚し、娘の玲と共に暮らす美々。
    高校時代の同級生である3人は、時に助け合いながら、昔から変わらない付き合いを続けている。
    朝のニュース番組のメインキャスターとして抜擢されることになった矢先、千波は身体が病魔に侵されていることを知る…。

    久しぶりに、北村さんの本を読んだ。
    やっぱり、透明感のあるきれいな文章。
    北村さんの紡ぎだす、濁りのない、穏やかでゆっくり時間の流れる日常は、いつも優しい。

    どんなに離れていても、会えば離れていた時間や距離などはお構いなし、年齢や立場を忘れ、昔の気持ちに戻れるのは、学生時代の友人ならでは。
    でも、昔同じ学校で学んでいたからこそ、時を経るごとに変容するお互いの立場の違いに、微妙なひっかかりや焦燥感、嫉妬心が生まれたり、「言いにくいこと」「聞きにくいこと」がでてくる気もする。気付かないふり、そんなの関係ないふりをしながらも。
    結婚した者と、独身を貫く者。家族関係がうまくいっている者、うまくいかない者。子供がいる者といない者。仕事をやめて主婦になる者、転職をする者、仕事で成功を収める者、海外に行く者…。

    たとえば辻村深月さんなら、自分はこれだけ幸せなんだよと笑顔をふりまいて倒錯した安心感を得る、といった同級生の裏の感情をもっとぐいっとひねり出すだろう。
    そういったところの全くない、この本の3人の関係は、ちょっときれいすぎるんじゃないかという気もする。
    でもこの淡さ、(いい意味での)軽さは、北村さんの持ち味だと思うし、この3人の関係に嫉妬や詮索や劣等感や、そういうのは絶対似合わない(笑)。
    お互いを尊重しあい、困っているときは当たり前に手を貸し、思いやれることができる、…まさに理想だなぁと思う。
    サイドストーリーの、類と玲のエピソードもとてもよかった。

  • 先日の十五夜読書で『月の砂漠を~』を読んだのでこちらも再読。
    さきちゃんとお母さんの牧子が、時を経ても懐かしく温かな記憶を共有していることがなんだか嬉しい。
    この作品は淡々としているようで、心を揺さぶられる言葉が溢れている。
    類が玲に優しく語りかけるくだりがとても好きです。
    幼い頃からのささやかな記憶を積み重ねてきた友人達。
    ああ、素敵だなと思う。
    「人が生きていく時、力になるのは《自分が生きてることを、切実に願う誰かが、いるかどうか》」
    この言葉が胸に沁み入ります。
    友人、家族。私も誰かの力になれていたら良いなと思う。

  • 子どものころからの、学生のころからの友人たち
    40代の女性3人のお話。

    3人の大人の女性の
    それぞれの立ち方と生き方と終わり方。

    厚い友情といろんな形の愛に溢れたお話でした。

    素晴らしい、良作です。

    北村さんの上品な文章が
    時にリアルに心に迫る、そして優しい。

    夫婦の繋がりって決して歳月だけではないのだな。

    「月の砂漠をさばさばと」のさきちゃんも登場。
    読了してるのに記録してないなぁ。。なんでだろ。

    さきちゃんの成長が偶然娘の年齢と重なったのも
    なんとも言えず感慨深かった。

    私の大切な大切な何十年来の友に
    愛していると伝えたい。

  • いいお話だと思いました。

    序盤の描写は淡々と綴られていて、特に事件性やワクワク感等は感じられませんが、主人公が病気を患ったあたりから、ぐいぐい引き込まれます。
    かといって、具体的な病名もあえて書かれておらず、安易な「闘病もの」ではないところに好感。

    重い病を抱えて生きる様、周りでそれを見守り支える様…悲壮感があまりなく淡々と進んでいくが、それがリアルなのかも。

    いつか、もし自分が命に関わる重い病を患った時…または、周りの友達がそうなってしまったら…どうふるまっていくのだろう。
    色々感じるものがありました。

    今、自分に出来ること。
    「家族や友人を大切にする」
    単純だけれど、それに尽きるなぁ。

  • 多感な十代の頃から友情を培って来た女三人、人生の折り返し地点に差し掛かろうという彼女らの関係、日々の思い、家族の姿を描いた静かな物語です。落ち着いて安心感のある文章や、登場人物それぞれの物事の捉え方は、段々彼女らの年齢に近づいて来ている者として、良く理解出来、しっとりと心に染み入る感じがしました。身近な者の死に際して、どの様に向き合い、受け入れれば良いのか、いつか自分自身が戸惑ってしまった時に、この物語のことを思い出せれば良いなと思います。

  • 主人公千波とそれを取り巻く友人牧子、美々。 友人っていいものだと思った。

    そして千波に乳がんが発見される・・・。夫と過ごしたわずかな日々も美しく表現されている。

    「涙」という言葉を使わずに表現したのがグッときたし、言葉では表せない心のスカスカ感がよく感じられた。
    悲しい話だけど心に透き通った風のように吹き抜けた。

  • 学生時代からの繋がりを持つ40代の女性三人の友情の物語。
    長い付き合いだからこその軽口や、言葉なしに伝わる言葉や、間合いや、優しさ。
    途切れずにずっとべたべたしてきたわけではないけど、長い時間を共に越えてきた彼女たちの、それぞれの相手への視線がなんとも鋭くて暖かい。
    お互いを大事に思っているからこそ、本人よりもその人をよく見ている。わかっている。
    何かを話しかけたり、手渡したりする場面で各章が終わり、次の章は毎回受け手の視点から、という構成もまた良かった。
    小さな思い出がたくさん出てくる。そのひとつひとつのエピソードが、ラストでまたさらに輝いてくる。
    北村薫さんならではの、人間だけではなく猫や物、果ては天気にすら可愛らしい人格で描くタッチがじんわり暖かい。
    これを読んだら、誰しも孤独ではないと思える。
    自分が思っている以上に、自分の傍にいる人は大事に思ってくれているし、たとえ傍にいなくても気にかけてくれている。
    悲しいラストだけど、でも素敵なお話。

  • 女性同士の友情、母娘そして父娘の愛情、男女の愛が丁寧に描かれています。
    どの登場人物も、相手を思いやれる素敵な人たち。
    私には、こんな風につながっている友達はいないかもしれないと
    この物語の3人の女性達が羨ましくなりました。

    そして後半は、涙なしでは読めません。
    悲しいけれど、でも、なんだか清々しい 心があったかくなる そんな涙です。

    そして、読みながら気づいたのですが、北村薫さんで私が好きな『月の砂漠をさばさばと』の母娘が登場していたんですね。
    サバの味噌煮のエピソードで気づきました。
    『月の砂漠をさばさばと』も読み直さねば。。。

  • 再々読かな。何度読んでも、無垢の信頼を・・・のくだりにジーンとする。
    玲ちゃんと類さんの親子関係っていいよね。
    親子ってなんだろうなあ。

    さきちゃん親子も、月の砂漠をさばさばと、よりずっと大人びた関係になってて。親離れ(これはあっさりできてる感じ)子離れの時期で。

    トムさんの人生もね。人生の最後に、トムさんが巡り合った幸せは、哀しいようなホッとするような。
    でも、そんなタイミングでの事になったのは、やっぱりお母さんがトムさんの人生に落とした影は濃いと思うし。

    それぞれの親子関係をしみじみ考える。

  • 女同士の友情について、しみじみと考えさせられる話でした。

    「オンナの世界はドロドロしたものだ」とは、一般的によく言われることであり、
    実際そういった一面が存在することは、経験上否定は出来ないと思います。
    だけど、もちろんすべてがそうじゃない。
    逸れてしまった牽制球や、ホームランになりそうな大きい当たりを、
    機敏な動きとなりふり構わぬ大きなアクションで、必死に取ろうとしてくれるような友情もあるはずで、それには素直に憧れます。

    わが身を振り返ると、たとえば日の当たらぬ二軍の練習場で、
    下手くそな投球練習に延々と付き合ってくれるのではないか、と思えるような人もいます。
    きっと彼女は「どんまいどんまーい♪」と笑顔を絶やさないでしょう。
    また、負け続きでガラガラの観客席に、いかにも気のなさそうに
    横向きに脚を崩して座り、メールなど絶えず何か別のことをしながら、
    それでも毎試合、欠かさずいてくれるのではないかと思える人もいます。
    肩でも故障したら、「抜群の効き目」だとネットで評判の湿布を調べて
    即座に差し入れてくれそうな人もいます。
    その場限りの賑やかしだって歓迎ですし、ただ生きていてくれるだけで、
    独りきりのピッチャーマウンドが心強くなる人だっているのです。

    大人になると、友達づきあいは自然と淡白になり、深入りを避けがちになります。
    それは経験から来る、ある種の知恵であり、思いやりでもあるはずです。

    ですから、さっき述べた希望はすべて自分勝手な憶測に過ぎませんが、
    それでも、そんな風に感じることができるのは幸せなことだと思いました。

    では逆に、自分なら相手に対して何ができるのか。
    いきなり飛んできた球をしっかり掴んで、相手のグローブに
    ぱしっと収まるよう、確実に投げ返すことができるでしょうか。
    なかなか会えない友人を、せめてテレビ越しに応援して、
    勝ったら喜び、負けたら膝を打って悔しがることができるでしょうか。
    チームメイトの上達や抜擢を喜び、不遇を悲しみ、
    自分の境遇によらず純粋に相手だけを思いやることができるでしょうか。
    下手な喩えではありますが、もっともっと自分に出来ることを考えたいと思いました。

    一番印象的だったシーンは、骨折した牧子を見舞った千波がエレベーターで去っていくところです。
    忘れられない場面となりました。

    親子についても考えさせられる場面が多々ありました。
    親と子を結ぶのはなんなのか、何を以って2人の人間は親子となるのか。
    それについては明確に書かずにおきたいと思います。



    最後に、身にしみて頷いた、ある台詞を紹介します。
    「千波はね、よく言ってました。《やり直せないことが好きだ》って」

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