ひとがた流し

  • 朝日新聞社 (2006年7月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784022501998

みんなの感想まとめ

人生の様々な局面における女性たちの友情と成長を描いた物語は、日常の淡々とした美しさが感じられます。中心となるのは、アナウンサーの千波と彼女の親友である牧子、美々の三人。彼女たちは、仕事や恋愛、育児など...

感想・レビュー・書評

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  • いいお話だと思いました。

    序盤の描写は淡々と綴られていて、特に事件性やワクワク感等は感じられませんが、主人公が病気を患ったあたりから、ぐいぐい引き込まれます。
    かといって、具体的な病名もあえて書かれておらず、安易な「闘病もの」ではないところに好感。

    重い病を抱えて生きる様、周りでそれを見守り支える様…悲壮感があまりなく淡々と進んでいくが、それがリアルなのかも。

    いつか、もし自分が命に関わる重い病を患った時…または、周りの友達がそうなってしまったら…どうふるまっていくのだろう。
    色々感じるものがありました。

    今、自分に出来ること。
    「家族や友人を大切にする」
    単純だけれど、それに尽きるなぁ。

  • 先日の十五夜読書で『月の砂漠を~』を読んだのでこちらも再読。
    さきちゃんとお母さんの牧子が、時を経ても懐かしく温かな記憶を共有していることがなんだか嬉しい。
    この作品は淡々としているようで、心を揺さぶられる言葉が溢れている。
    類が玲に優しく語りかけるくだりがとても好きです。
    幼い頃からのささやかな記憶を積み重ねてきた友人達。
    ああ、素敵だなと思う。
    「人が生きていく時、力になるのは《自分が生きてることを、切実に願う誰かが、いるかどうか》」
    この言葉が胸に沁み入ります。
    友人、家族。私も誰かの力になれていたら良いなと思う。

  • 北村薫さんは好きな作家さんのひとりです。
    他作品と同じで、わき上がる感動よりも、ひたひたと押し寄せる波のように心に流れ込む美しさを感じます。
    泣いてしまったというファンの方、申し訳ありません。
    そういう受け止め方もあるとご理解ください。
    もちろん、良い作品であることに変わりはありません。
    ただ、たぶんこういう流れだろうという予想どおりだったのです。
    こういうことを言うだろう。
    このひとは死ぬだろう、このひとは生き残るだろう。
    その枠からはみ出ることはありませんでした。
    ああ、小説を読むのもこれで最後かなぁとちょっぴり寂しく感じたのです。
    それとも、私の期待が大きかったのかもしれませんね。

    ドラマ化されていたらしいけれど、そちらは全然知りません。
    心を許しあえる友だちというのは、良いものだなぁとしみじみ思いました。
    友だちは何よりも良いひとであって欲しいけど、出来れば、互いに尊敬と憧れと、人生への同じまなざしも欲しいもの。
    この作品には随所でそれが語られます。
    お互いのために何をしてあげられるか、それを真剣に考えることの素晴らしさ。
    でも一番素晴らしいのは、ヒロインが「人生はやり直せないから良い」と知っていることです。
    北村さんは、女性を描くのが上手な方です。
    「こうしたい」よりも「こうあらねば」と生きる凛々しい女性。
    現代は感情を野放しにして生きることが自然で良いことのように思われている節があるけれど、理性で乗り越えねばならないのがこの世の生き方であり、それはまた習慣でそうなり得るものでもあるのです。
    それを、教わらなかったひとこそ不幸です。

    宝物のような友との出会いがあったら、生涯大事に大事にしましょうね。
    感動というよりもしみじみとした佳作。

  • 少しずつ読もうと思ってましたが、引き込まれるようにイッキに読んでしまいました(^^;
    それぞれの登場人物の背景や性格、互いの関わりがとても丁寧に描かれていて、「人と人とが共に生きていく」ことが染み入りました。

  • 子どものころからの、学生のころからの友人たち
    40代の女性3人のお話。

    3人の大人の女性の
    それぞれの立ち方と生き方と終わり方。

    厚い友情といろんな形の愛に溢れたお話でした。

    素晴らしい、良作です。

    北村さんの上品な文章が
    時にリアルに心に迫る、そして優しい。

    夫婦の繋がりって決して歳月だけではないのだな。

    「月の砂漠をさばさばと」のさきちゃんも登場。
    読了してるのに記録してないなぁ。。なんでだろ。

    さきちゃんの成長が偶然娘の年齢と重なったのも
    なんとも言えず感慨深かった。

    私の大切な大切な何十年来の友に
    愛していると伝えたい。

  • 多感な十代の頃から友情を培って来た女三人、人生の折り返し地点に差し掛かろうという彼女らの関係、日々の思い、家族の姿を描いた静かな物語です。落ち着いて安心感のある文章や、登場人物それぞれの物事の捉え方は、段々彼女らの年齢に近づいて来ている者として、良く理解出来、しっとりと心に染み入る感じがしました。身近な者の死に際して、どの様に向き合い、受け入れれば良いのか、いつか自分自身が戸惑ってしまった時に、この物語のことを思い出せれば良いなと思います。

  • 主人公千波とそれを取り巻く友人牧子、美々。 友人っていいものだと思った。

    そして千波に乳がんが発見される・・・。夫と過ごしたわずかな日々も美しく表現されている。

    「涙」という言葉を使わずに表現したのがグッときたし、言葉では表せない心のスカスカ感がよく感じられた。
    悲しい話だけど心に透き通った風のように吹き抜けた。

  • 学生時代からの繋がりを持つ40代の女性三人の友情の物語。
    長い付き合いだからこその軽口や、言葉なしに伝わる言葉や、間合いや、優しさ。
    途切れずにずっとべたべたしてきたわけではないけど、長い時間を共に越えてきた彼女たちの、それぞれの相手への視線がなんとも鋭くて暖かい。
    お互いを大事に思っているからこそ、本人よりもその人をよく見ている。わかっている。
    何かを話しかけたり、手渡したりする場面で各章が終わり、次の章は毎回受け手の視点から、という構成もまた良かった。
    小さな思い出がたくさん出てくる。そのひとつひとつのエピソードが、ラストでまたさらに輝いてくる。
    北村薫さんならではの、人間だけではなく猫や物、果ては天気にすら可愛らしい人格で描くタッチがじんわり暖かい。
    これを読んだら、誰しも孤独ではないと思える。
    自分が思っている以上に、自分の傍にいる人は大事に思ってくれているし、たとえ傍にいなくても気にかけてくれている。
    悲しいラストだけど、でも素敵なお話。

  • 女性同士の友情、母娘そして父娘の愛情、男女の愛が丁寧に描かれています。
    どの登場人物も、相手を思いやれる素敵な人たち。
    私には、こんな風につながっている友達はいないかもしれないと
    この物語の3人の女性達が羨ましくなりました。

    そして後半は、涙なしでは読めません。
    悲しいけれど、でも、なんだか清々しい 心があったかくなる そんな涙です。

    そして、読みながら気づいたのですが、北村薫さんで私が好きな『月の砂漠をさばさばと』の母娘が登場していたんですね。
    サバの味噌煮のエピソードで気づきました。
    『月の砂漠をさばさばと』も読み直さねば。。。

  • 再々読かな。何度読んでも、無垢の信頼を・・・のくだりにジーンとする。
    玲ちゃんと類さんの親子関係っていいよね。
    親子ってなんだろうなあ。

    さきちゃん親子も、月の砂漠をさばさばと、よりずっと大人びた関係になってて。親離れ(これはあっさりできてる感じ)子離れの時期で。

    トムさんの人生もね。人生の最後に、トムさんが巡り合った幸せは、哀しいようなホッとするような。
    でも、そんなタイミングでの事になったのは、やっぱりお母さんがトムさんの人生に落とした影は濃いと思うし。

    それぞれの親子関係をしみじみ考える。

    • まろんさん
      この作品、新聞連載のときから、宝物のように毎日切り抜いて大事に保管してました!

      私も、さきちゃんが、びっくりするほど成長してて、うれしいよ...
      この作品、新聞連載のときから、宝物のように毎日切り抜いて大事に保管してました!

      私も、さきちゃんが、びっくりするほど成長してて、うれしいような、ちょっとさみしいような、親戚のおばさんのような変な感傷に浸ったりしてました。

      親子関係も、トムさんと彼の関係も、女同士の友情も、ぜんぶせつなく温かく、胸に響く本でした。
      2012/05/18
  • 幼馴染の三人は40代を迎え、女子アナ・作家・主婦(旦那のカメラマンのマネージャー)というそれぞれの仕事・生活での悩みや体調での変化、過ごしてきた時間で築いてきたきたものに助けられたり救われたり、穏やかな時間を描きながらどうしても変わっていくものを精一杯見送る誠実さ、切なさが終盤に胸に押し寄せる。
    北村さんの作品は三冊目。作家の牧子が『月の砂漠をさばさばと』のお母さんだったとは…!!大好きな作品だから、あの小さかった“さきちゃん”が健やかに成長していて親戚の目線で見るように嬉しかった。北村さんの文章は、本当に彼の誠実さが滲み出ていて読んでいてとても安らぐ。概念としての“大人”に抱きしめられているみたいな。玲と類の父娘の会話や、さきと牧子、女三人の関係、それを書く上で重要な二人にした時の会話や役割が細やかに表現されていて読みやすいのに読み応えがあった。

  • 女同士の友情について、しみじみと考えさせられる話でした。

    「オンナの世界はドロドロしたものだ」とは、一般的によく言われることであり、
    実際そういった一面が存在することは、経験上否定は出来ないと思います。
    だけど、もちろんすべてがそうじゃない。
    逸れてしまった牽制球や、ホームランになりそうな大きい当たりを、
    機敏な動きとなりふり構わぬ大きなアクションで、必死に取ろうとしてくれるような友情もあるはずで、それには素直に憧れます。

    わが身を振り返ると、たとえば日の当たらぬ二軍の練習場で、
    下手くそな投球練習に延々と付き合ってくれるのではないか、と思えるような人もいます。
    きっと彼女は「どんまいどんまーい♪」と笑顔を絶やさないでしょう。
    また、負け続きでガラガラの観客席に、いかにも気のなさそうに
    横向きに脚を崩して座り、メールなど絶えず何か別のことをしながら、
    それでも毎試合、欠かさずいてくれるのではないかと思える人もいます。
    肩でも故障したら、「抜群の効き目」だとネットで評判の湿布を調べて
    即座に差し入れてくれそうな人もいます。
    その場限りの賑やかしだって歓迎ですし、ただ生きていてくれるだけで、
    独りきりのピッチャーマウンドが心強くなる人だっているのです。

    大人になると、友達づきあいは自然と淡白になり、深入りを避けがちになります。
    それは経験から来る、ある種の知恵であり、思いやりでもあるはずです。

    ですから、さっき述べた希望はすべて自分勝手な憶測に過ぎませんが、
    それでも、そんな風に感じることができるのは幸せなことだと思いました。

    では逆に、自分なら相手に対して何ができるのか。
    いきなり飛んできた球をしっかり掴んで、相手のグローブに
    ぱしっと収まるよう、確実に投げ返すことができるでしょうか。
    なかなか会えない友人を、せめてテレビ越しに応援して、
    勝ったら喜び、負けたら膝を打って悔しがることができるでしょうか。
    チームメイトの上達や抜擢を喜び、不遇を悲しみ、
    自分の境遇によらず純粋に相手だけを思いやることができるでしょうか。
    下手な喩えではありますが、もっともっと自分に出来ることを考えたいと思いました。

    一番印象的だったシーンは、骨折した牧子を見舞った千波がエレベーターで去っていくところです。
    忘れられない場面となりました。

    親子についても考えさせられる場面が多々ありました。
    親と子を結ぶのはなんなのか、何を以って2人の人間は親子となるのか。
    それについては明確に書かずにおきたいと思います。



    最後に、身にしみて頷いた、ある台詞を紹介します。
    「千波はね、よく言ってました。《やり直せないことが好きだ》って」

  • しみじみ思いました。
    こんな優しさを持って生きることが出来たら…
    ドラマ化されたそうですが、目に見えない心(優しさ)をだれがどのようにして表現したのでしょうか。

  • 文庫版を再読。やはり、良い。

    ちょっと、出来過ぎの展開だけど、それはまあ小説だし。
    内容自体は、小説の設定としてよくある話のように感じるけど、どこか惹き付けられるところがある。
    何よりも良いのは、女友達の距離感、仕事への意識。
    男性の作家が書いたとは思えない程、リアルで、共感できる。

  • 人を描いた物語です。ミステリ要素はないです。
    何ヶ所か読み進めるのが辛い所がありましたが、確かな重さを感じる物語でした。

  • 最後は涙無くしては読めなかった。
    途中で出てくる男言葉はよくわからなかった。

  • 「月の砂漠をさばさばと」がとても良くてSNSで続編だと知り読みました。
    が、多分続編ではなく「大きくなったさきちゃんも出てくる別物」スピンオフ的なものなのでしょうね。

    想像した世界と違ったからなのかわかりませんが、スズキさんを追跡するあたりまでは退屈で全然頭に入ってこなくて数日かかりました・・・
    その後気になってスイスイ読めたけど、数日前同じ病気で有名な方が若くして亡くなったばかりなので辛くて・・・

    私の中では正直なところ「月の砂漠」だけで良かったかな・・・

  • 千波や牧子と同年代の女性として、分かる分かると頷きながら読んだ。
    自分は独身でも、相手は結婚していても、あるいは子どもがいてもいなくても、つかず離れずの距離を保ちながら続いていく女の友情。
    病気のこともケガのことも、他人事ではない思いで読み進めた。最後は良き伴侶に看取られ、友人にも恵まれ・・・千波は幸せ者だ。
    2016/10

  • #讃岐うどん、クッキー、ビデオテープ、手紙。手渡されるのはいつもありふれたもの。けれど、バトンを手渡すように次の語り手に「語り」が託されていく、この章の転換部こそが、本作のテーマがもっとも顕わになっている箇所。

    #一人称的三人称の駅伝方式という、新聞連載ではかなり冒険と思われる語りが、あえて採用されていることの意味。「伝える」ことを職業とする大人たちに挟まれ、(もう一人の友人・美々ではなく)さき、玲という子供たちが語り手になっていることの意味。バトンは六章のあとも途切れることなく、読者に手渡されている。

    (2009/04/03)

  • はじめての作家
    読みやすくてすいすい
    高校からの友人の女性三人
    それぞれを尊重しながらそれぞれを生きる
    いいなあ
    切なかったけれど後味はよかった
    《 ひながたが 記憶の外から にじみ出て 》

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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