- Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022502643
作品紹介・あらすじ
昭和20〜40年代の朝日新聞から、忘れられたニュースの数々を発掘。
感想・レビュー・書評
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この本は、もともと朝日新聞東京版(日曜日)「泉麻人の東京版博物館」(2005年4月3日〜2006年12月24日)で連載されていたものだ。
昭和も遠くなったが、昭和の時代に取り上げられた記事を見ると興味深い。
対象は、昭和27年から昭和47年だ。昭和30年代の記事が多いのは、著者が昭和31年生まれで、ぼんやりした記憶の残るその時代にとりわけ興味があるのと、今では考えられない生活風景が記録されているからだ。
ウクライナ情勢や円安で、物価の値上げが話題になっているが、昔はどうだったのか。昭和29年2月1日には「コーヒー党に危機せまる 痛い外貨の制限」という喫茶店に関する記事が載っている。
この時代は、喫茶店が人気で、音楽型、コーヒー理論探求型、ふんいき型と、コーヒー店にこだわりが見える。
そんな中で、ブラジル・コーヒーの大不作、外貨の制限などで輸入見込みは不透明で、店によっては値上げを考え買い占めに動くといったことも見られた。
当時の有楽町に関する情報が載っている。
「ちっぽけな店が三、四十軒も密集しているが、コーヒー味をたのしませる点ではここが一番との定評がある。女の子や音楽などそえ物は不要で、中年の常連が多い」
今では、喫茶店を取り巻く状況は店主の高齢化、建物の老朽化、後継者不足、さらにコロナ禍で打撃を受けて閉店など違う意味で厳しい。
それでも「昭和レトロ」がブームとなり、純喫茶に対する関心が高まり、人気となっている店もある。
昭和34年12月2日には「東京タワーは曲がっている?」という記事が載っていた。週刊誌や「ムー」で取り上げそうなことを記事にしていた。
東京タワーは昭和33(1958)年12月23日に開業した。それから約1年を迎えた頃の社会面の記事では次のようなうわさを取り上げていた。
午後の日ざしで見るとタワーの左側に太陽が当り右側に影ができるので左右対称がくずれて、右側に傾いて見える
こんなに錯覚説を紹介していた。
東京版に限らず、朝日新聞に限らず、全国の新聞を調べると面白い記事が発掘できそうだ。どこかの出版社が昭和のおもしろ記事、三面記事特集で本を発行してくれるといいなあ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
そこそこ面白かった。しかしもっと大昔を題材にした、星新一「夜明けあと」には遠く及ばぬ。
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自分が体験した時代を「歴史」として突き放して見る視点。難しいことではなく、日常生活で体験したことを綴りつつ昭和の頃を思い出すよすがに。筆者の軽い文体も好きだ。